宮城県図書館だより「ことばのうみ」第53号 2016年2月発行 テキスト版

おもな記事。

  1. 〈特集〉絵本の魅力
  2. 図書館 around the みやぎ
  3. 図書館員から読書のすすめ
  4. 図書館からのお知らせ

〈特集〉絵本の魅力

 本の宇宙
 仙台市民図書館 専門員 小石川 正弘  
 41年の長きにわたる前職、星空の観測にのめりこんでしまったので、毎日数字や外国語との格闘でした。そして、昼夜を問わず寝不足と格闘しながら何万、何十万…数え切れないほどの星の中から新天体を発見し命名し、宇宙との対話を行ってきました。そんなことですっかり「本を読む」ことから離れていたのでした。
 2013年4月から「夜の生活から昼の生活へと…」仙台市民図書館専門員として勤務することになりました。今度は文字と格闘しながら数十万冊の本を相手に「本の宇宙」を楽しんでいます。最初に手に取った本の宇宙は、司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」でした。
 書架整理も楽しい仕事の一つで、いろいろな発見をしています。そして、本の中の歴史も楽しんでいます。宇宙の年齢からみると一瞬の出来事かもしれませんが、その一瞬が奥深く調べれば調べるほど多くの疑問がわいてきます。その疑問を解消するために書架を隈なく捜しまわるのです。必要となれば地下書庫にも出向いて新しい発見を求めていくと、机上には沢山の資料が積み重なっているのです。それらの資料と向かい合っているときに「新しい発見」が生まれてくるのです。
 今日も書架を巡りながら「本の宇宙」の新発見を夢見ています。

 

〈特集〉絵本の魅力
 「絵本は心の栄養」と言われるように、絵本はいつの時代も子どもの成長に欠かせない存在です。そこで、絵本にはどんな魅力があるのか、改めて問い直してみたいと思います。

 絵本はコミュニケーションツールとしての魅力があります。ひとりで読むことのできない幼い子どもは、読み手の声を通し、「絵本の世界」へと入ります。身近な人の声や息遣い、肌のぬくもりや匂いを感じながら耳から聞く物語は、子どもにとって大きな喜びとなるのではないでしょうか。そうして得た大きな感動と幸福な思い出は、大人になってもずっと残っていきます。
 次に、絵本を読むことで、豊かな感受性を身に付けることができます。絵本を通して、自分ではことばにできない感情に気付いたり、他人の気持ちを思いやる心を学んだりできます。絵本という素朴でシンプルな表現だからこそ、読む人にストレートに伝わり、心に訴えかけてきます。嬉しさや楽しさばかりでなく、悲しみや苦しみを間接経験することで人生の奥深さを知り、「生きる力」が身に付くのではないでしょうか。
 更に、絵本は自分の知らない様々な世界を見せてくれます。子どもは人生経験が少なく、自分の周りの狭い世界しか知りません。絵本を通して自分の知らない世界に触れることは、子どもにとって目が覚めるような体験です。絵本からたくさんの刺激を受け、想像力を高めることは、自分の可能性を広げることにつながるのではないでしょうか。
 絵本には人を優しい気持ちにしたり、心を癒したりする効果があるのでしょう。世代を問わず、心の奥底に深く訴えかける大切な「何か」に出会えます。子どもはもちろん、日々の忙しさに翻弄されがちな大人にとっても、絵本が与えてくれるものは大きいと思います。生きていくために必要な「心の栄養」がギュッと詰め込まれた絵本、ぜひ手にとって見てはいかがでしょうか。

 

・ 絵本と読み聞かせ
 絵本の読み聞かせが持つ「力」が見直され、最近社会全体に読み聞かせの「輪」が広がっています。ひとくちに「読み聞かせ」といっても、親が子に読み聞かせる身近なものから、図書館、保育所、幼稚園、小学校、老人ホームなどで実施しているものなど、その規模や内容、時間は様々です。
 絵本を一人で読むのと、読み聞かせでは大きな違いがあります。読み聞かせの場合は「耳」で物語を聞きながら絵を見るため、より絵に集中することができ、物語の世界に自然に入り込むことができます。また、読み手が一方的に読むだけでなく、時には聞き手とのやり取りを交えながら読むことによって、読み手と聞き手の間に一体感が生まれます。
 絵本が「心の架け橋」となって、大人と子どもが心を通い合わせることができる点が、読み聞かせの大きな魅力と言えるのではないでしょうか。

 

〜県図書館の取組み〜
♣おはなし会を開催 !
 現在子ども図書室では、第一から第四までの金曜日・土曜日、毎週日曜日、および第三水曜日に、おはなし会を開いています。場所は、子ども図書室の中にある黄色い「おはなしコーナー」です。時間は30分ほどで、小さなお子さんから小学生まで、幅広い年齢の方が参加しています。絵本を読んだり紙芝居を演じたり、手遊びをしたりします。事前の予約などは不要です。
♣公開講座を実施 !  
 今年度宮城県図書館では、どなたでも参加できる公開講座を開催し、ストーリーテリングやわらべうたについての講座に、多くの方のご参加をいただきました。
 次年度以降もこのような講座を実施する予定です。期日が近くなりましたら、宮城県図書館ホームページ等でお知らせをしますので、興味のある方はぜひご参加ください。


・イギリスの絵本作家 エミリー・グラヴェットさんが宮城にやってくる!
 イギリスで最も優れた絵本画家に贈られる、ケイト・グリーナウェイ賞を2度受賞したエミリー・グラヴェットさんを宮城にお招きし、講演会を開催します。
 意外な仕掛けが込められたエミリーさんの絵本は遊び心が満載です。美しい絵に加えて、お話の最後まで読む人を引きこむストーリー展開は、子どもだけでなく大人も楽しめます。このたび、エミリーさんをお招きし、絵本の魅力や創作活動について、被災地の子どもたちへの希望のメッセージを込めて、語っていただきます。
 もう一度、子どもの気持ちに戻って、絵本を楽しみませんか?
  小峰書店 『オオカミ』エミリー・グラヴェット作,ゆづきかやこ訳
 フレーベル館 『もっかい!』エミリー・グラヴェット作,福本友美子訳
 講師紹介
 エミリー・グラヴェット氏 (Ms. Emily Gravett)
 イギリス・ブライトン生まれ。はじめて出版した作品『オオカミ』で、イギリスで最も優れた絵本作家に贈られる、権威あるケイト・グリーナウェイ賞を受賞する。2008年にもLittle Mouse's Big Book of Fearsで、ふたたび同賞を受賞し、他の作品でも複数回、候補としてノミネートされた。他にも、ネスレ子どもの本賞銅賞など受賞実績は多数である。 卓抜した画力、意外性のあるストーリー展開、細部まで作りこまれたユニークな造本など、独自性あふれる彼女の作品は世界的に高く評価されている。

講演会
日 時 : 2016年2月24日(水) 14時〜17時(定員200名先着順)
●入場無料
場 所 : せんだいメディアテーク1階 オープンスクエア  
   (仙台市青葉区春日町 2-1)
聞き手 : 星乃ミミナ氏
通 訳 : リチャード・ハルバーシュタット氏
※事前申込みは、宮城県図書館ホームページの専用申込みフォーム
(下記URL又は右QRコード)  
https://www.library.pref.miyagi.jp/limesurvey/index.php?sid=93286&lang=ja  
FAXの場合は,022-377-8484へ、「エミリー・グラヴェット氏講演会参加申込み」と記載のうえ、氏名・ふりがな・連絡先をお知らせください。席に空きがあれば当日の参加も可能です。
※QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です
お問い合せ先
宮城県図書館企画協力班
022-377-8444

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図書館 around the みやぎ

シリーズ第46回 七ヶ浜町中央公民館七ヶ浜町中央公民館 館長 庄子 克也(しょうじかつや)

 七ヶ浜町中央公民館図書室(図書センター)は、震災で施設が使用できなくなり、中央公民館のロビー等を利用して図書の貸出しを行っていましたが、平成27年8月に、中央公民館内に「図書コーナー」としてリニューアルオープンしました。
 開架や接客カウンター、閉架書庫を含めた施設面積は178㎡と小さな図書室ではありますが、明るい雰囲気でお客様にも好評を得ております。また、今回のリニューアルに併せて、学習室(90㎡)が併設されました。これまでロビーでの貸出しの際は閲覧等ができる場所がなく、お客様にご不便をおかけしておりましたが、独立した学習室を併設したことにより、多くの方に利用していただけるようになりました。特に夕方からは、勉強の場として多くの学生さんに利用していただいております。また、当館の絵本を活用した、読み聞かせボランティアの活動も、年々多くの方に参加いただいており大変うれしく思っています。
 他市町の大きな図書館と比べますと、スペース的にも蔵書数などでも当然敵いませんが、小さな町の図書室らしく、これからも、訪れていただいたお客様に対し、身近な相談事にも対応できる、居心地の良い図書室でありたいと願い、司書だけではなく、公民館職員も日々対応していきたいと考えております。
 職員一同笑顔でお待ちしておりますので、ぜひ、七ヶ浜町図書センターへお越し下さい。

 七ヶ浜町中央公民館
 蔵書冊数/児童書 : 12,570冊      
      一般書 : 23,055冊
 開館時間/午前9時〜午後5時
 ●休館日/毎週月曜日、年末年始等
 住  所/〒985-0802      
 七ヶ浜町吉田浜字野山5-9電話/FAX/022-357-3302/357-2615

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図書館員から読書のすすめ

 『本屋図鑑』 (絵:得地直美/文:本屋図鑑編集部 夏葉社刊)
 私が子供の頃、近所には何軒かの「町の本屋さん」がありました。本好きの私にとって、とても落ち着ける大好きな場所でもありました。あれから、うん十年たち、仙台の街から地元の本屋さんは、その多くが姿を消してしまい、私としては一抹の寂しさがあります。出版不況といわれている現在において、本屋さんの経営は昔に比べて難しくなっています。インターネットの普及など時代の流れもあり、仕方のないことなのかもしれませんが、本好きの私としては「町の本屋さんも頑張れ!」と日々思っています。
 さて、そんな「本屋好き」の私がおすすめする本がこの「本屋図鑑」です。本書は1人で出版社を経営している夏葉社の島田潤一郎さんと、「空犬通信」というブログで情報発信している空犬太郎さんが全国の「町の本屋さん」を訪問して取材し、イラストレーターの得地直美さんが店内の様子を素敵なイラストで描いた「本屋さんを紹介した本」です。書店を紹介している本は今まで多数出版されていますが、本書は書名が「本屋図鑑」とあるように、図鑑のように楽しめるよう様々な工夫がされています。まず一つめは、47都道府県の全ての県の本屋さんを紹介していること。北は北海道から南は沖縄まで、最北端の書店もあれば、ここから先、南には本屋が無いので、漫画本1冊でも船で配達する島の本屋さんまで紹介されています。また、2つめは、せっかく図鑑と銘打っているのだからと、いろいろなタイプの本屋さんをテーマごとに紹介していること。お店の場所や本棚等、様々な視点から本屋さんの特徴に合わせて紹介しているので、読んでいて自分がその店舗に行っているような気持ちにさせられます。単なる書店紹介で終わるのではなく、地元で有名な老舗書店の歴史や著名な作家さんと本屋さんの交流のお話等、ひとつひとつの本屋さんが地元の人々にとってかけがえのないものになっていることをちょっとしたエピソードを通して紹介しています。
 本書のもう一つの特徴は、得地さんの描かれた各店舗のイラストです。鉛筆書きで詳細にそのお店の特徴を写し取っています。よくもここまで細やかに描けるなと感心してしまいます。このイラストだけでも一見の価値があります。そしてイラストを見ていると「あたりまえだけど同じ本屋さんは無いんだよね」と思ってしまいます。それぞれの本屋さんのお店への思い入れが読んでいる私達に伝わってくるイラストになっています。
 そして巻末には附録として、「本屋さんの1日」や「知っておきたい本屋さん用語集」等も収録されているので、読めばあなたも「本屋さん通」になれます。 最後に本書を読んで思うのは「本屋」さんって、本当におもしろいということ。みなさんも、本屋さんに行った時は、今までと違った視点で本屋さんを見てみてはいかがでしょうか。
(震災文庫整備チーム 安藤祐子)

 

図書館からのお知らせ INFORMATION

 第46回子どもの本展示会を開催します。
 宮城県図書館では、「こどもの読書週間」にあわせて、子どもの読書活動を推進するために「子どもの本展示会」を下記の日程で開催します。平成27年に出版された本の中から約1,700冊を選び、絵本や読み物、知識の本、児童書研究書などを展示します。新しい本との出会いの場としてご来場ください! なお、本展示会終了後は子どもの本展示会として、希望する各市町村図書館や公民館、小学校等を巡回する予定です。
●期 間 平成28年4月23日(土)から5月12日(木)
●場 所 図書館 1階エントランス
●時 間 開館日の午前9時から午後7時(日曜・祝日は午後5時まで)
●お問い合わせ 子ども図書室(2階)TEL 022-377-8447

 

 東日本大震災文庫展Ⅵ 「いつまでも忘れないために〜未来へ伝える記憶と記録〜」を開催します。
 東日本大震災から5年、これまで県図書館で収集・整理した震災や復興の記録を紹介します。県内の様々なところから集めた記録は、ふるさと宮城の貴重な歴史的資料であり、永く後世に伝え残していかなければいけない記録です。また、昨年6月に公開した震災デジタルアーカイブである「東日本大震災アーカイブ宮城」についても併せて紹介します。
●期 間 平成28年3月11日(金)〜平成28年6月24日(金)
●時 間 図書館開館日の午前9時から午後5時まで
●場 所 宮城県図書館 2階 展示室
●お問い合わせ 企画協力班 TEL022-377-8444

 

 《叡智の杜》レポート 『図書館戦争 THE LAST MISSION』ロケ地巡りツアーを開催しました。
 平成27年1月22日〜2月4日の蔵書点検期間に、宮城県図書館では映画『図書館戦争THE LAST MISSION』のロケ撮影が行われました。映画の公開を記念して、10月17日、24日、31日、11月21日に、館内外のロケ撮影場所を巡る見学ツアーを開催し、のべ4日間全8回のツアーで120名の参加者がありました。
 当初、全6回の予定でしたが、定員を大きく超えるご応募をいただき、追加開催のご要望が多数寄せられたため、2回のツアーを追加で開催しました。ツアーの参加者からは、「久しぶりに図書館に来て、又通いたいなと思いました。」「初めて来館しましたが、すてきなところで驚きました。」といった感想をいただきました。県外からは、東京都や埼玉県、大阪府と言った遠方からご来館された方もいらっしゃいました。
 同時期に開催していた特別展「図書館の自由に関する宣言」では、9月4日〜11月27日の期間で展示室に約3万2000名近くの入室者がありました。撮影で使われた小道具や衣装の展示だけでなく、原作のテーマでもある「図書館の自由に関する宣言」の説明もご覧いただき、「知る権利」を守る図書館の使命について理解を深めていただけたものと思います。
 ツアー以外でも映画公開期間中には、館内外で映画のファンと思われる方々が見学に訪れる様子が多く見られました。特に、監督と出演者に愛称を付けていただいた「カミツレ広場」では、多くの方が映画のシーンと同じ光景を楽しむ様子がうかがえました。
 宮城県図書館では、毎月第3土曜日に定期見学ツアーを開催しています。映画が撮影された書庫等、普段入ることができない場所をご覧いただけますので、ぜひご参加ください。

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この「ことばのうみ」テキスト版は,音声読み上げに配慮して,内容の一部を修正しています。
特に,句読点は音声読み上げのときの区切りになるため,通常は不要な文末等にも付与しています。
「ことばのうみ」は,宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第53号 2016年2月発行。

宮城県図書館

〒981-3205

宮城県仙台市泉区紫山1-1-1

TEL:022-377-8441(代表) 

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