宮城県図書館だより「ことばのうみ」第77号 2024年1月発行 テキスト版

おもな記事

  1. 巻頭エッセイ
  2. 〈特集〉震災の記録を未来へつなぐために
  3. 図書館 around the みやぎ
  4. 図書館員から読書のすすめ
  5. 図書館からのお知らせ

 

巻頭エッセイ『図書館は宝の山!』 奥州・仙台おもてなし集団  伊達武将隊 支倉常長

 図書館には人びとが築き上げてきた物語や科学や歴史が、たくさんの書物となって積み上げられています。自分の探していた本を見つけることは、あたかも宝探しのよう! 本を手に取れば、誰でもその世界へと飛び込むことができるのです。

 拙者、伊達武将隊・支倉常長は、自身の名を冠した歴史講座「支倉ないと」を7年ほど主催しております。仙台の歴史や伊達政宗公の秘話などを数多く紹介して参りました。大切にしているのは、巷にあふれているエピソードがどの書物にかかれているのかをきちんと自分自身で調べ上げることです。インターネット上には歴史上の人物のエピソードが数多く紹介されています。が、それが創作なのか、当時の史料に登場する話なのか、ネット上ではわからない事も多いのです。そんな時、図書館に足を運び、郷土資料を読み漁っています。

 さて、拙者の大切にしている本を一冊ご紹介しましょう。『伊達政宗言行録 木村宇右衛門覚書』(小井川百合子編、新人物往来社)です。政宗公に仕えた小姓・木村宇右衛門によって記されたこの覚書を読んでいると、政宗公の肉声が聞こえてくるように感じられます。本書にはこんな一節があります。「人を馳走するには何にても一種あればよし、なくとも真実の心を馳走する。」おもてなしを第一と考えていらした政宗公のお心が伝わってくる気がいたしませぬか? 皆さんもぜひ、図書館で宝を、すなわち心に残る本を探してみてください!

著者紹介

 支倉常長(はせくら・つねなが)

 2010年8月に結成された仙台市の観光PR集団「奥州・仙台おもてなし集団 伊達武将隊」の一員として仙台城跡やイベントへ出陣し、仙台・宮城の観光の魅力や伊達の文化・歴史の発信を行っている他、歴史講座「支倉ないと」を主催し、伊達政宗公や仙台の歴史を楽しく親しみやすく伝えている。通称・六右衛門。

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〈特集〉震災の記録を未来へつなぐために

 東日本大震災から12年が経過しました。宮城県図書館では「東日本大震災文庫」を設置し、東日本大震災関連の資料を収集・整理・保存し、利用者の皆様にご利用いただいています。また、県と県内市町村が連携・協力して構築した「東日本大震災アーカイブ宮城」では、デジタル資料を公開しています。

 今回は、この「東日本大震災文庫」と「東日本大震災アーカイブ宮城」をより充実させ、便利にご利用いただくための取り組みについてご紹介します。

 

◆東日本大震災文庫

 宮城県図書館では、東日本大震災の記憶を風化させることなく後世に永く引き継ぐために、「東日本大震災文庫」を2012(平成24)年7月に設置し、被害状況・救援活動・被災者支援・復旧復興状況に関する資料を広く収集し、公開しています。地域を支える情報拠点として、災害復興をはじめ防災・減災対策などにもご利用いただけるよう、震災に関するさまざまな資料の収集および公開に取り組んでいます。

 

◆目次情報の入力

 東日本大震災に関する資料については、書誌データを作成する際に原則として目次情報も登録することにしています。

 例えば、「女川」のことが載っている本を探しているときに、タイトルに「女川」という言葉が含まれていないと、見つけることができない可能性があります。そこで、資料の目次を丁寧に確認し、データを登録しておくことで、タイトルだけでは見つけられない目的の資料にたどりつく可能性が高くなるのです。

 蔵書検索画面のタイトル欄に、「女川」と入力して検索すると、タイトルに「女川」が含まれていない資料もヒットします。これは、目次に「女川」が含まれている資料も一緒に検索しているからなのです。

 

◆チラシ資料の整理

 収集したチラシ等の資料について、「東日本大震災アーカイブ宮城」(以下「アーカイブ宮城」)に対応した形式でのメタデータの登録・公開を進めています。そうすることで、インターネットに接続できるパソコン等の機器から検索できるようしています。資料の分類には、当館独自の「東日本大震災文庫主題分類」(震災関連チラシ・ポスター等を整理するための18の主題からなる分類)を使用しています。

 データ登録が済んだら、蔵書印の押印や請求記号の記入等の装備をし、資料の劣化を防ぐために中性紙封筒に入れて書庫内で保存しています。

 資料そのものの画像が公開できない場合でも、メタデータを検索できるようになれば、ご来館の際に目的の資料をご覧いただく手助けとなります。「所蔵機関」欄に「宮城県図書館」とあり、「請求記号」欄に請求記号がある場合は、資料名と請求記号を基に書庫内から資料をお出しして、館内でご覧いただくことができます。

 

◆東日本大震災アーカイブ宮城

 東日本大震災の関連資料を収集し、インターネット上で公開することにより、震災の記憶の風化を防ぎ、防災・減災対策や防災教育などに活用するために、宮城県と県内の全自治体が連携・協力して構築したアーカイブです。写真・動画のほか、行政資料、チラシ・ポスター、震災当時の各自治体のHP、応援メッセージなど、約22万件(2023731日現在)のコンテンツを公開しています。

 利用規約の範囲内であれば、コンテンツのダウンロードやパワーポイントへの生成が可能ですので、防災教育の資料作りや各種記録集の作成などにもご利用いただけます。また、震災の記録等のポータルサイトである「国立国会図書館東日本大震災アーカイブ(愛称:ひなぎく)」(https://kn.ndl.go.jp/ )とも連携しているので、「ひなぎく」からのコンテンツ検索も可能です。

 

◆コンテンツの充実

 「アーカイブ宮城」に掲載されているコンテンツの多くは、発災直後から3年ほどの間に撮影・刊行されたものです。それ以降の、復旧・復興の途上を捉えたコンテンツは、あまり掲載されていませんでした。

 そこで、震災直後等のすでに公開済みの写真をもとに、担当者が県内、特に沿岸部を巡回して復興後の現在の写真を撮影し、そのデータをコンテンツとして掲載する取り組みを行っています。

 

◆メタデータの精査

 「アーカイブ宮城」に掲載しているコンテンツの一つ一つには、提供されたところからもたらされた情報をもとに、メタデータ(コンテンツに表示されているものの名称・状態・形状などを表した言語もしくは数値)を作成・付与して、検索などに役立てています。

 しかし、アーカイブ公開後にコンテンツに示された場所の位置情報の誤りや適切とはいえないタイトル、メタデータの不統制といった問題があることがわかってきました。

 そこで、コンテンツをすべて見直し、表示されているタイトル、場所、位置、付与されたメタデータの再確認や修正などの作業を行っています。このことにより、検索をした際のヒット件数の増加、検索結果の確実性につながり、コンテンツの価値を高めることができます。

 

◆震災関連新聞記事索引の作成

 宮城県内で発行されている新聞について、「東日本大震災」に特化した新聞記事タイトルを検索できるように、記事索引の入力を進めています。

 作業は、記事を探し出し、本当に震災関連の記事かを確認し、切り抜いていくという作業から始まります。徐々にではありますが、入力・登録した記事タイトルが増えています。これまで検索ツールのない県内のエリア紙も対象としています。

 

◆利活用事例の公開

 「アーカイブ宮城」には「利活用事例集」というページがあります。「アーカイブ宮城」のコンテンツを活用し、広報資料などへの掲載、展示会・イベントなどへの利用、SNS投稿などを行った事例を掲載しています。

 広く「アーカイブ宮城」のコンテンツを活用していただくヒントとなれば幸いです。また、「利活用事例集」で紹介することができる事例を随時募集しています。

 

◆資料の収集について

 宮城県図書館及び連携市町村では、引き続き東日本大震災に関連する記録を収集しています。自治体や報道機関・研究機関等が所有する記録だけではなく、被災した方々や被災地の支援に携わった方々が個人的に保有している写真や動画、文集なども保存すべき大切な記録です。

 東日本大震災の記憶を風化させないために、記録に残し未来へつなぐ活動にご協力をお願いいたします。 

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図書館 around the みやぎ

シリーズ第69回 七ヶ浜町中央公民館長 遠藤 裕一(えんどう ゆういち)

 七ヶ浜町図書センターは、七ヶ浜町中央公民館の生涯学習センターの中にあります。生涯学習センターの中に図書センターがあるというイメージがない方もいるかと思います。

 震災前は単独の施設として別の場所に設置されていましたが、震災の影響で建物が解体されました。生涯学習センターに資料等が移され、ロビーで平成239月に臨時の貸出し業務を再開し、4年あまりの歳月を経て平成2712月に現在の図書センターとしてリニューアルオープンしました。

 さらに、平成29年には、新しい本棚、児童書、英語の図書などを企業の方から寄付していただき、児童書コーナーを「きずな図書室」としました。

 紙芝居や大型絵本などは親子連れや子どもたちに大人気で、その中でも英語の絵本は、海外ならではの色使いが目を引き、皆さんに楽しんでいただいており、連日にぎわいを見せています。

 図書センターでは読みきかせボランティアの方々の協力のもと、各種イベントも開催しております。乳児と保護者へ絵本と絵本の読み聞かせの時間をセットでプレゼントする「ブックスタート」事業は、町の乳児健診の待ち時間を活用して行われ、親子へ絵本とのふれあいの時間を提供し、好評を博しております。

 また、毎月行われている「おはなし会」では、小さなお子さんがお話に夢中になっている姿が微笑ましく、担当職員も毎月楽しみにしています。

 今後も、子どもたちはもちろん、幅広い年代の方々が楽しく過ごせる図書センターづくりを目指していきたいと思います。

 

七ヶ浜町図書センター

    数/38,917

(令和4331日時点)

開館時間/午前9時~午後5

休館日/毎週月曜日(月曜日が祝日の場合はその翌日)、館内整理日(毎月最終金曜日)、年末年始、蔵書点検日

住所/〒985-0802  宮城県宮城郡七ヶ浜町吉田浜字野山5-9

TEL:022-357-3302/FAX022-357-2615 

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 図書館員から読書のすすめ

『世界一ときめく質問、宇宙一やさしい答え 世界の第一人者は子どもの質問にこう答える』 ジェンマ・エルウィン・ハリス【編】 河出書房新社【発行】

 皆さん、小さい頃に答えがあるようなないようなふわふわした質問を周りの大人にしたことはありませんか? 例えば「お風呂に入るとどうして指がしわしわになるの?」のような質問です。こんな質問をすると、曖昧な答えやあり得ない答えが返ってくることが多く、私も小さい子にこんな質問をされると「手だけおばあちゃんになっちゃうからだよ」なんて答えを返したこともあります。

 この本はそんな質問に各分野の第一人者が、やさしく丁寧に答えてくれる本です。子どもたちのちょっとした、でも鋭い質問にユーモアを交えながら本気で答えています。初めは子ども向けの本なのかな、と思いましたが、実際に手に取ると意外と分厚く、むしろ大人の方が楽しめる内容になっています。

 小さい頃はあまり深く考えずに思ったことをそのまま聞いていましたが、あまりまともな返事はなかったように思います。私自身もそこまでちゃんとした答えを求めてはいなくて、なんとなく答えてくれれば満足でした。でも、その時にこの本のように答えてくれる人がいたらどんなふうに成長していたのか少し気になります。

 巻末には「そばかすってなに?」や「彗星はなにでできている?」のような改めて考えるとちょっと答えに詰まる質問がクイズ形式で載っています。みんなで楽しく読める本なので家族団らんの時間に手に取ってみてはいかがですか?

企画管理部 企画協力班 長谷美穂

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図書館からのお知らせ INFORMATION 

■企画展 「追憶のみやぎ 昭和の県庁を訪ねて」

 「昭和の県庁」と呼ばれ親しまれた旧宮城県庁舎は、昭和6年(1931年)に竣工して以来、約半世紀の長きにわたって宮城県の発展を見守り、昭和61年(1986年)、県民に惜しまれつつも解体されました。

 今回の展示では、昭和20年代から30年代にかけて撮影された宮城県公文書館所蔵の県庁舎の写真の中から、厳選した二十数点の写真を中心に、県庁舎と宮城の歩みを振り返ります。入場は無料です。皆様のご来場を心よりお待ちしております。

・期間 令和5年122日(土)~令和6225日(金)

・時間 宮城県図書館2階 展示室(泉区紫山111

・お問合せ 企画協力班(0223778445

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この「ことばのうみ」テキスト版は,音声読み上げに配慮して,内容の一部を修正しています。
「ことばのうみ」は,宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第77号 2024年1月発行。

宮城県図書館

〒981-3205 宮城県仙台市泉区紫山1-1-1 TEL:022-377-8441(代表) FAX:022-377-8484 kikaku@library.pref.miyagi.jp