宮城県図書館だより「ことばのうみ」第10号 2002年3月発行 テキスト版

おもな記事

  1. 表紙の写真
  2. 表紙エッセイ 「[ぶなもり]日記」 日本画家 能島和明さん
  3. 特集 ひろがる! ひろがれ! 「図書館ネットワーク」
  4. 図書館 around the みやぎ 登米町立図書館
  5. 貴重書の世界 明治初期のジュール・ヴェルヌ
  6. わたしのこの一冊 盛田昭夫著「学歴無用論」
  7. 図書館からのお知らせ

表紙の写真。

今回の表紙の写真は、特集記事で取り上げる図書館ネットワークの話題に関連して、県内の図書館の様子です。角田市、矢本町、迫町、本吉町、石巻市の図書館のカウンターの様子や、絵本を広げる子どもたちの様子を写真でご紹介しています。

図書館アートシリーズ その6。

今回は、図書館のいろいろな場所に設置されている案内用サインをご紹介しています。子ども図書室の入り口のサイン、電話コーナーやトイレの案内板など、館内・館外のいろいろな案内サインには、ポルトガルの芸術家・ジュセ・ドォ・ギマラインシュのアートが一緒に飾られています。

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表紙エッセイ 「[ぶなもり]日記」 日本画家 能島和明さん。

 六年前、栗駒山中に夏過ごす小屋を建てた。住いは横浜だったが、耕英分校に入学したいという娘に引きずられ山暮しが始まった。まず、水が出ない。雪を溶かしたり、1km先の湧水を掬みに行く生活だ。家人は喜々としておいしい水を飲み、うっとりと山草を愛でる。絵筆一本持っていれば良かったはずの僕は俄かに「当然、男」にされてしまった。
 紺青の空から雪が降ってくる。きれいだ不思議だ等と言っていられない。美しき白い魔物は、狂気の果てにこの世のすべてを抱きに来る。あれよあれよと雪に埋もれてゆく四駆。僕も春まで埋まっていなければいけないのだろうか。横殴りの雪飛礫によろけながら助け人はやって来る。鼻の下には、つららを下げ、額には雪庇。その奥に暖かい瞳を光らせてなまはげのように笑う山の人々に何度助けられた事だろう。
 山は神だけの住処と痛感しながら、僕はこの神秘の竜宮城に居候してもう長いこと帰れないでいる。晴れた日には山姥もどき乙姫と子亀を連れて里に降りる。山里にはもう一つの竜宮城—図書館がある。まさに、森羅万象ことばの海である。ここも縄文からの長い風が吹いている大事な場所だ。充実した山暮しを尚一層楽しくしてくれた図書館に本当に感謝している。
 さて、いよいよ僕は山の竜宮を降りて、玉手箱の煙が消えて無くなる前に全霊をこめて、絵を描き上げねばならない。その時がやって来た、と思っている。

著者のご紹介。

のうじま・かずあきさん。日本画家。1944年東京に生まれるが、疎開のため宮城県築館町へ。以後同地に育つ。多摩美術大学日本画科卒業。在学中に児玉希望の門下生となり、奥田元宋に師事する。1963年に日展初入選、その後も日展に入選をし続ける。1972年には日展特選を受賞。現在、日展評議員、河北美術展顧問、日春展委員。人物画や黒川能などを題材とした作品のほか、平成8年には栗駒山を製作活動の拠点とし、風景画にも取り組んでいる。

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特集 ひろがる! ひろがれ! 「図書館ネットワーク」。

皆さん、普段利用している図書館に自分の求めている資料がなかったときや調べていることがその図書館で解決できなかったとき、どうしていましたか。そのままあきらめていましたか。でもちょっと待って。図書館は他の図書館と協力することにより、自館で足りない部分を補い合っています。
今回の特集は、図書館相互のつながり、「図書館ネットワーク」について取り上げます。

図書館ネットワークって。

 県内の公立図書館には、赤ちゃんからお年寄りまで幅広い層の利用にお応えするために、様々な資料があります。しかし、それぞれの図書館の所蔵資料だけでは利用者の皆様の多様な情報要求に応えきれなくなってきています。そこで、『普段ご利用の図書館と、その周辺にある図書館が相互に協力し合う。』ということが求められるようになってきました。県内の公立図書館では、リクエストされた資料を所蔵していない場合、購入や他の図書館からの借り受けなど、その時のもっとも良い方法で資料をご用意するよう努力しています。そのために宮城県図書館は図書館と図書館を結ぶネットワークの整備を進めています。

図書館ネットワークを利用してみましょう。

 県内の各図書館に資料を届けるために、県図書館の運行する「協力車」が月2回巡回しています。巡回時には、県図書館の資料はもちろん、市町村図書館からの資料や広報誌なども協力車によって運ばれます。ここでは、ある町の図書館に他の図書館から資料が届くまでをチョットだけ見てみましょう。

ある日、M町に住む小学生のA君は、学校から帰るとお母さんに言いました。
A君「来月の21日から学校の体験学習でキャンプに行くことになったんだ。みんなでテントを張ったり、カレーライスを作ったりするんだけど…。テントを張るのって初めてだからどんなふうにしたらいいか分かんないや。」
お母さん「…じゃあ、明日図書館で調べてみたら。」
ということで、A君は翌日さっそくM町の図書館へ行って調べてみました。でも、大人向けのキャンプの本は難しい字が多くてよく分かりません。そこで、図書館の人に色々と聞いてみることにしました。
A君「あのね、今度学校でキャンプに行くことになったんだけど、何かいい本ないかな。」
図書館の人「キャンプではどんなことをするのかな。」
A君「テントを張ったり、カレーライスを作ったりするんだけど…。テントの張り方が分かる本ってないのかな。」
図書館の人「…うーん、今ここにはいい本がないみたいだね。でも少し待ってもらえるんだったら、他の図書館から借りてくることもできるよ。どうする。」
A君「えっ?そんなことできるの。」
図書館の人「そうだよ。えーと、ちょうどいい本が県立とF市立とS市立の図書館にあるようだから…。一番早く借りられるF市立の図書館から借りることにしようね。」
A君「じゃあ、明日借りに来ればいいのかな。」
図書館の人「うーん、それはちょっと無理なんだけど…。F市立から本が届いたらおうちに電話するからね。」
A君「わーい、やったー。」
…数日後、A君はM町の図書館でF市立の図書館の本を借りることができました。

住んでいる町に図書館がない場合は。

 県図書館は宮城県のすべての方々に図書館サービスを提供する機関です。図書館がない町村にお住まいの方については、公民館図書室がご希望の資料を県図書館から借り受け、貸し出しをする窓口になってくれる場合もあります。詳しくはお近くの公民館図書室へお問い合わせ下さい。

インターネットを活用すると。

 「この資料は地元の図書館にはないなあ…。どこか他の図書館にあるかな。」
 県内には、蔵書データをインターネットに公開している図書館が7つあります。事前にご自宅でお調べいただいて地元の図書館にリクエストしていただくと、より早くお手元に資料が届きます。
 蔵書データをインターネットに公開している図書館は以下の通りです。

  • 宮城県図書館 
  • 仙台市民図書館 
  • 塩竈市民図書館 
  • 白石市図書館 
  • 名取市図書館 
  • 角田市図書館 
  • 小牛田町近代文学館 

こんなときは…。

 「この本はもう絶版なので、図書館で探すしかないんだけど…。インターネットで国立国会図書館にあるって分かった場合はどうしたらいいんだろう。」
 宮城県内の各図書館では、所蔵されていない資料を他の県立図書館や国立国会図書館からも取り寄せることができます。ただし、資料を所蔵している図書館からの指定により館外への貸し出しができない場合もあります。その場合は、資料の複写依頼をすることもできます。詳しくはお近くの図書館までお問い合わせ下さい。

図書館ネットワークの広がり。

 このように、図書館は利用者が必要とする資料をできる限り提供するために、自館に資料がない場合でも他の図書館とのネットワークを有効に活用し、より充実したサービスに努めています。
 今までは、「ここには資料がないなあ…」とあきらめていたことが、今後は図書館ネットワークの広がりにより新たな展開が期待できます。
 お探しの資料が見つからない場合、まずは図書館の職員にお尋ねください。

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図書館 around the みやぎ シリーズ第5回 登米町立図書館。

 登米町の歴史は古く、明治維新までは伊達一門、登米伊達二万一千石の城下町として栄えました。蔵や武家屋敷が今なお残っており、国指定の建造物「旧登米高等尋常小学校校舎」は広く知られています。
 登米町立図書館は昭和22年7月、公民館に図書部が設けられ、昭和29年4月、町立図書館としてスタート、その後、昭和48年9月、新築された公民館の一部に図書館を併設しました。
 平成7年9月、コンピュータ導入により、本の入力、貸し出し、返却はもとより、蔵書の管理や本の検索がスピーディに行えるようになりました。
 特色ある図書館づくりを目指し、蔵書数約3万冊の一般図書の他、郷土資料や俳句などに関するものも所蔵しています。
 平成14年度から学校週5日制に向けた休日の利用方法を考慮し、毎週土曜日開館を計画するなど、町の生涯学習の拠点づくりを進めています。
 読書水準の向上と資料の活用を目的とした「古典文学教室」と「古文書解読教室」を開催しています。また、38回を数える読書感想文コンクールを実施し、小学・中学・高校・一般の優秀作品を表彰し、『入選作品集』を発行しています。
 たくさんの人たちが読書の喜びを知り、図書館を「知浴の場」として知識を広め、ゆったりとした楽しい時間を過ごせる図書館にしたいです。

登米町立図書館のご紹介。

  • 開館時間。
    月曜日から土曜日まで 午前8時30分から午後5時まで。
  • 休館日。
    日曜日、毎月末日、祝日・休日、年末年始(12月29日〜1月3日)。
  • 交通案内。
    宮城交通バス・登米案内所から徒歩3分。
  • 図書館のデータ。
    蔵書冊数 3万543冊。
    貸し出し冊数 6596冊(平成12年度実績)。
  • 住所 〒987−0702 宮城県登米郡登米町寺池目子待井391
  • 電話 0220−52−2316 FAX 0220−52−3657

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時空をこえて 貴重書の世界 明治初期のジュール・ヴェルヌ。

 フランスの文化的財産といわれるジュール・ヴェルヌの直感。これが、1991年に発見された幻の草稿「二十世紀のパリ」の刊行により再評価されている。
 日本に初めて紹介された明治の文明開化時には競って翻訳され、講談話に仕立てられたほど。今から百年前の仙台に「仙台文庫書籍閲覧所」という私立図書館があった。仙台藩の旧藩士達が金と書籍を持ち寄り開設したもので、主家伊達家からも品川江戸屋敷蔵書が5トン貨車1台分貸与されたといわれる。明治37年閉館されるにあたって仙台文庫蔵書が伊達家蔵書と併せて伊達家に収められ、戦後宮城県図書館の所蔵するところとなった。疎開古書を除き全てを戦災で失った本館が明治初期の稀少な小説や雑誌新聞を蔵するのはこの為である。ヴェルヌの初訳初版本を川島忠之助、井上勤、森田思軒など蒼々たる士の名文で読める図書館はそうない。彼らが愛読したという英訳叢書Seaside Library の1冊も見ることができる。

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わたしのこの一冊 「学歴無用論」 盛田昭夫著 文芸春秋 1965年。

時代の流れを読む。

 「学歴無用論」は大学に在学していた頃に読んだ本である。今、改めて読み返してみると、35年前の著者の指摘や警鐘が現実のものになっていることに驚く。本書は学問否定や学力無用を唱えるのではなく、学歴がその人の看板として何十年にわたって通用することを憂い、実力のある人ならば、学歴のいかんにかかわらず尊重されなければならないと説く。
 著者の意図は「私の願いは、なんとかして日本の土壌にも、人を正しく評価する習慣を植えつけたい」ことであり、人の評価については「一人でも多くの経営者が、つまらぬ学歴偏重主義の廃止を宣言して、人間は看板でなく、内容の方がより大切なのだという風潮を、日本中にまき起こすよう祈ってやまない」と述べている。
 多くの人が経験しているように、普段の生活において人を学歴で評価することはほとんどない。しかし、終身雇用・年功序列の人事制度を基本にする企業においては、著者の警鐘があったにもかかわらず学歴を人事評価の大きな要素とする時代が長く続けられた。
 今や国際競争が激化する中で、終身雇用や年功序列は機能しなくなり、努力が正当に評価され、実力が試される時代への転換が求められている。
 この本は、今も多くの示唆に富み、時代の流れを読み解くヒントを与えてくれる一冊である。

今回のこのコラムは富谷町在住の若生英俊さんにご寄稿いただきました。

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図書館からのお知らせ。

第33回子どもの本展示会。

 2001年に出版された児童図書を展示。ワールドカップサッカーに関連した本などを含め、1500点を紹介します。どなたでもご自由にご覧いただけます。
 期間:4月24日(水曜日)から29日(月曜日) 午前9時30分から午後5時まで。
 場所:ホール養賢堂。
 問い合わせ:児童資料担当(電話022−377−8447。FAX022−377−8493。)

郷土関係資料をご寄贈ください。

 宮城県図書館では、県内で刊行された図書や雑誌または郷土や郷土人に関する資料を広く集めています。それを誰もが利用できるようにし、次の時代への文化遺産として保存していくことは図書館の最も重要な使命の一つです。個人の方あるいは団体で新たに出版されました時には、是非ご寄贈くださいますようお願いします。詳しくは次の担当までお問い合わせください。
 郷土資料担当 電話022−377−8482。FAX022−377−8494

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この「ことばのうみ」テキスト版は、音声読み上げに配慮して、内容の一部を修正しています。
特に、句読点は音声読み上げのときの区切りになるため、通常は不要な文末等にも付与しています。

「ことばのうみ」は、宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第10号 2002年3月発行

宮城県図書館

〒981-3205

宮城県仙台市泉区紫山1-1-1

TEL:022-377-8441(代表) 

FAX:022-377-8484

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