平成17年度 第2回宮城県図書館協議会 会議録

 

1 日時及び場所

平成17年9月1日(木曜日)午後1時30分から午後3時40分まで
宮城県図書館 2階研修室

2 出席者

出席者 秋月 治 委員,石田 義光 委員,小田 忠雄 委員,塩野 雅代 委員,
関口 怜子 委員,埣浦 功夫 委員,永野 為和 委員,二瓶 瑠璃子 委員
欠席者 遠藤 幸生 委員、紅邑 晶子委員

3 事務局出席者の職氏名

館長 伊達 宗弘、副館長 堀村 廣雄、企画管理部長 飯川 皓
資料奉仕部長 早坂 信子、企画管理部次長 長尾 徳治,資料奉仕部次長 菅原 泰博
主幹 安川 潔,主任主査 内馬場 みち子,主事 志賀 秀明

4 開会

 司会者長尾次長が本日の協議会は定数を満たしたので,有効に成立した旨を告げ開会を宣言した。

5 挨拶

○石田会長
 例年にない厳しい残暑に加えて,熱い選挙戦が始まりましたので,何となく熱っぽい今日この頃のようです。
 解散国会の中で成立した文字・活字文化振興法は,子どもの読書活動を推進する法律に続く第2弾のようなもので,今回は大人も含め,大学図書館などの一般開放みたいな部分を含めた,かなり内容的には盛りだくさんの法律のようです。ねらいとしては,学校図書館や大学図書館,公共図書館のてこ入れみたいなことが紹介されていますが,内容的には,蔵書の充実,司書体制の確立,情報化の推進が柱となっています。新聞では,「かけ声だけに終わらぬように」あるいは「理念実現に知恵を試される行政」などと紹介されていますが,要するに,図書館に対する期待が大きいということだろうと思います。今回は第2回目の協議会ですが,そのような背景なども踏まえ,活発なご意見をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○伊達館長
 お忙しいところ,お暑いところご苦労様です。過日地震がありました。県図書館では,入り口のガラスの割れ,排気口の鉄枠の歪み,閉架書庫のマイクロフィルムのキャビネットの転倒,壁の亀裂,本の散乱などの被害がありました。また,県内の29館の市町村図書館のうち,名取市図書館ではガラスが割れたりし,当日から翌日にかけて休館にしたり,気仙沼図書館,泉図書館,太白図書館,宮城野図書館,多賀城市図書館などでは柱や壁などに亀裂が入るなどの被害を受けたようです。予想される大きい宮城県沖地震を控えて,予行演習になったのではないかと思います。職員も自主的に何かあった場合どのように対応するか話し合いを行っているようです。一番の課題は,避難誘導をどのようにするかということで,今回の地震では東側の出入口は閉鎖し,西側の出入口から出入りしていただきました。危険な箇所には立ち入れないようにし,本の整理をした後,貸し出しを再開しました。
 県の文化財の指定も順調に進んでまして,6月にも新たな文化財の指定を受けました。また,2週間位前に文化庁の職員が来館し,地図と紙芝居を見ていきました。紙芝居については,文化財保護法が改正されまして,紙芝居も登録文化財の対象となってます。10月か11月に諮問を受け,来年1月頃には登録文化財第1号になると思いますが,それをうけて来年6月頃には宮城県の文化財にも指定される思います。そうすると,5万7千点の文化財となり,博物館や美術館を含め,おそらく全国一の所蔵点数となると思います。今日は21世紀を牽引する叡智の杜づくり事業について,ご意見をいただきたいと思ってます。よろしくお願いします。

6 議長選出

 石田会長を選出

7 傍聴について

 傍聴希望者なし

8 会議録署名委員の選出

○議長
 塩野委員を指名します。

9 議題

(1)協議事項

○議長
 叡智の杜事業について事務局から説明願います。
○事務局(飯川企画管理部長)
 資料により説明。
○議長
 只今の説明について,ご意見,質疑をいただきたいと思います。
○小田委員
 県の図書館レベルで,これだけの文化財を持っている図書館は他にありますか。
○伊達館長
 東京中央図書館や大阪中之島図書館などにもありますが,それは買ったものです。実質的に郷土に根ざしたものであれば,おそらく1番だと思います。
○小田委員
 レプリカを見せたり,このような活動している図書館は他にありますか。
○伊達館長
 彦根市で短期間の事業がありましたが,継続して修復事業をしているのは他にはないと思います。
○小田委員
 今度,紙芝居も加わるのですね。
○伊達館長
 そうですね,先日,上先生という専門の先生に見ていただきましたが,保存状況などはとてもよいとのことでした。
○議長
 公共図書館ですと,かなり旧藩のものを所蔵してますが,加賀の尊経閣文庫などはご存知の通り東京です。伊達文庫なども流失した部分もあり,蔵書の数としては多いと思います。
○伊達館長
 蘭書,和算書,朝鮮本など,他にはないものがあります。
○塩野委員
 貴重資料の展示会を見た人はすごいなあと思うでしょうが,学校での展示と一般への展示を別に考えたほうがよいではないかと思います。学校の場合,展示したものが教育に役立っているかどうかということを考えないとまずいと思います。一般への展示はそれでもよいと思いますが,例えば,歴史とか本の興味へと繋がるとか,あるいは,図書館に行って,もう少し見ようとかになればよいが,役立たせることを目的として展示しないともったいない気がします。
○伊達館長
 学校の場合,授業で,じかに生徒に触らせたりしています。壊れた場合は,ボンドなどで直さないで,壊れた箇所を教えて,返してほしいと言っています。それで興味を持ってきたという話もあり,新聞でも取り上げられましたが,効果はあると思います。一般を対象にした場合,展示が中心になると思います。
○事務局(内馬場企画協力班長)
 国の重要文化財に指定されている坤輿万國全図は,叡智の杜事業で屏風形式でレプリカを作成し,ホームページでもデジタル化した画像を公開してます。先日,登米高校にレプリカを貸し出した時は,世界史の授業で使用し,図書室に坤輿万國全図を飾り,グループ形式で授業をしたようです。アンケートも書いてもらいました。教科書の小さな写真では分からない現物の文字まで読め,子どもたちにとっては新鮮だったと思います。子どもたちのしなやかな心に小さな種がまかれたと感じてます。参加された方のご意見を参考にし,次につなげていきたいと思います。
○議長
 何となく理解出来ますが,「しなやかな」という言葉はどのような意味でしょうか。
○事務局(内馬場企画協力班長)
 思春期の子どもたちは,様々な葛藤があったり,自分の夢を描いたり,可能性というものを追求していく,若い世代という意味で申し上げました。
○秋月委員
 この図書館の屋外で紙芝居をやってましたよね。紙芝居が文化財の指定対象となっているということですが,紙芝居という資料の価値はさることながら,紙芝居をやってくれる人の価値もありますよね。イベントで紙芝居をやることはあっても,街頭紙芝居は実際にないですよね。これからは資料としての紙芝居は残っても,しゃべってくれる人の紙芝居はどうなるのか,図書館で何回かやっているのをなつかしく思いましたが,そういうのはどうなってますか。
○事務局(早坂資料奉仕部長)
 宮城県図書館で紙芝居を演じてくださった方は,お芝居の演劇者で,紙芝居を演じた経験はない方でした。紙芝居という素材を活かした一人芝居というかたちで演じてまして,演じ方は,私たちが子供の時に見た紙芝居屋さんとは違うものです。紙芝居の裏を見ますと,台詞はほとんど書いてなく,紙芝居をなさる方は,それを読むのではなく,頭の中にストーリーが入っていて,即興で子どもたちの顔を見ながら演じてました。それを見ていて,紙芝居というのは演劇なんだなあと思いました。紙芝居の絵描きさんは著作権者ですが,紙芝居は絵描きのものであり,演じ手のものでもあると思います。大阪では,今でも現役で街頭紙芝居をなさっている方がいるそうです。もう一つの紙芝居に印刷紙芝居がありますが,図書館にもたくさん置いてあり,お父さんたちが借り,子供に読んであげたり,図書館でも読み聞かせをしています。そういう最近の優れた現代紙芝居の方が今の子供たちにふさわしい内容が多いと思います。街頭紙芝居は偏見の跡が少なくなく,そのまま子供たち与えられるものは少ないです。そういうこともあり,これからは,大人の深層心理とか昭和史などとして研究の対象とする方が意味があると思います。
○秋月委員
 能楽であったら,能面などは有形文化財で,能を演じる方は無形文化財ですが,紙芝居はどうですかね。無形文化財にはならないですかね。
○議長
 語り手の録音テープ付きの紙芝居はこちらにはないでしょうが,無形文化財として,録音テープを作っておいた方がよいのか,街頭紙芝居を実際に見て,その雰囲気から文化財だろうなあという意識もありますが,早坂さんの話を聞くと,アドリブでやっていたという話もありました。
○小田委員
 最後におっしゃった紙芝居は,何とおっしゃいましたか。
○事務局(早坂資料奉仕部長)
 印刷紙芝居です。たくさん売っています。
 今,新しい紙芝居のメディアとしての役割は,アジアの方にも移ってまして,ベトナムとかインドネシアとか,印刷技術,特にカラー絵本の印刷技術がまだ未発達のところでは非常に紙芝居は受け入れられているそうです。
○議長
 紙芝居は,大阪の10万枚につぐ,宮城県は2番目でよいですね。
○事務局(早坂資料奉仕部長)
 そうです。
○二瓶委員
 Web上でも貴重な文化財を見られるようにしたとのことですが,前の協議会では,こんなにも貴重なものを子供にもっと親しませたいということで,副読本の作成の話もでたような気がしますが,今ですとパソコンで自由に見られる。県図書館のホームページで見られるということを学校に対してPRしているのでしょうか。
○事務局(内馬場企画協力班長)
 お知らせの仕方については,様々な方法で努力していますが,一つは,図書館だより「ことばのうみ」19号で叡智の杜Webをホームページに開きましたということを掲載し,県立学校,市町村小中学校にも配布するということをしましたが,今後も様々な機会に努力していきたいと思います。
○関口委員
 ここ3年で充実してきたという感じがしますが,作った限りはそれは活かさないともったいないと思います。活用の方法とて,インタープリターを育てるというのはどうでしょうか。例えば,資料の歴史的な社会的な背景とか,今はどのようになっているのかなど,育成プロジェクトで子供に伝え,子供の時から興味を持って育つと大人になるともっと違うものになると思います。学校に回す時にボランティアさんになるか分かりませんが,人もついて行き,しゃべれる人がいた方がよいと思います。ぜひ,そういう講座をしてほしいです。
 それから,メディアテークと連携して,メディアテークでレプリカを展示するなどした方が多くの人が見られ,効果があると思います。
○事務局(早坂資料奉仕部長)
 実は来年度,東北大学と共催でメディアテークでの展示会を計画してます。先日,第1回目の打ち合わせをしてきました。
○埣浦委員
 私も館長をしておりまして,メディアテークの方にも学芸員を配置しておりますので,仙台城あるいは仙台に関するようなものの保存について,メディアテークでも協力できることがあれば,ぜひ秋口の予算要求の時期までに,ご提案いだだければと思います。
 今日は,図書館のこれからの役割,使命ということで,子ども読書推進法とか超党派の文字・活字文化振興法とかの話がありましたが,子ども読書推進計画を市では昨年12月に策定しまして,子どもたちに要求する読書冊数とかの目標を定めました。今は,小学校・中学校の生徒に対しても図書館の利用なり連携ということが言われます。実は仙台市図書館では,中学生の登録者が減ってまして,1年間で10%減ってます。市の中学生の数は4年間で11%位しか減ってませんが,中学生はどんどん減ってまして,小学生の場合にも5%の減りです。インターネットなど多様化した選択をできる時に図書館に過大な期待をされるのはいかがなものかと思います。弾力的な発想で,文字・活字文化振興法による各自治体の取り組みが期待されるといっても,財源措置などがない現状で踏み込むというのはいかがなものかと思います。本来やるべきものやパワーも失って,学校連携ということで学校に何度も打合せに行って,日常的な館事業がおろそかになる,経費削減や人員削減がされ,図書館の日常的な運営がカスカスになっているという状況で,国からの法律で図書館の役割がどうのこうのという状況ではないと思います。
○議長
 私もメディアテークの委員をしてたことがありまして,仙台市の財政,宮城県の財政など,全てからみますが,文字・活字文化振興法は,現在の子どもの読書活動を推進する法律での学校図書館の取り組みなどの成功からきているものと思いますが,公共図書館はそれを更にバックアップすることを期待されてます。決して,おしきせではなく,私も子どもの頃家で日本外史などを見てましたが,家にそういう資料がなければ,文字・活字に親しむ機会がないわけで,文字・活字を誰にでも親しむ機会があるのはやはり図書館が1番であると思います。文字・活字から離れるよりは親しんだ方がよいという意味で図書館に期待される部分があると思います。具体的な法律の中身はまだほとんど分かってませんが,次回,またご意見をいただければと思います。
○永野委員
 叡智の杜事業の一番のポイントは,いかに継続していくかということだと思います。さきほどの説明でも県の財政を考えると予算が厳しいとのことですが,サントリーの文化事業助成に代表される民間の文化事業助成制度の導入など,考えられることはないでしょうか。
○伊達館長
 三井住友財団などにお願いしたり,文化庁の補助制度もあるとの話もありますので,工夫して利用できないか考えてます。予算要求での訴え方も工夫していきたいと思ってます。
○秋月委員
 県図書館のWebで貴重資料を公開してますが,それを学校で使う時にどこまで許されるのでしょうか。例えば,学校でそれをプロジェクターで写して,授業で使うのはOKですか。
○伊達館長
 それはOKです。
○秋月委員
 先ほどレプリカを授業で使ったという話がありましたが,レプリカを貸し出すだけでなく,Webページを活用して授業をしてもらった方が各高校で同時に活用できると思いますが。
○事務局(早坂資料奉仕部長)
 私たちも思いつかなかったことで,そういう事も可能だと思いました。ぜひPRしたいと思います。今の県図書館のホームページでは気づきにくいかも知れませんので,気づくようなホームページを作らないといけないと思いました。
○小田委員
 企画展の展示内容なども企画展に来なくても見られるように,Webページで見られるようにした方が情報の蓄積になると思います。
○議長
 今日は色々とご意見がでましたので,その内容を踏まえて,今後の事業内容をお考えいただきたいと思います。この後,修復の状況と展示会を見ていただきたいとのことです。協議の方はこれで終了します。

10 その他

次回の協議会の日程については,平成17年12月に開催することとしたが,詳細な日程については事務局の方で後日調整することとした。

11 閉会

司会者長尾次長が閉会を宣言した。その後,貴重資料の修復状況と展示室の企画展を見ていただき解散した。

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