平成16年度 第3回宮城県図書館協議会 会議録

 

1 日時及び場所

平成16年12月2日(木)午後1時30分から午後3時30分まで
宮城県図書館 2階研修室

2 出席者

出席者 秋月治委員、池田規子委員、石田義光委員、太田四郎委員、小田忠雄委員、塩野雅代委員、関口怜子委員、二瓶瑠璃子委員
欠席者 永野為和委員、紅邑晶子委員

3 事務局出席者の職氏名

館長 伊達 宗弘、副館長 三浦 修三、企画管理部長 濱田 一枝、資料奉仕部長 早坂 信子、
企画管理部次長兼総務班長 菊地 正博、副参事兼次長兼企画協力班長 高木治夫、
資料奉仕部次長兼調査班長 菅原 泰博、主幹兼利用サービス班長 佐々木 元廣、
企画協力班主事 佐尾博基

4 開会

 司会者、菊地次長が本日の協議会は定数を満たしたので、有効に成立した旨を告げ、開会を宣言した。

5 挨拶

○石田会長
  2週間ほど前に所用で山形に出かけた際に、『ことばのうみ』最新号にも掲載されている新しく開館した蔵王町立図書館を見学してまいりました。待望の図書館ということで地域の住民に喜ばれているだろうと思われる個所がいたるところにありました。児童書のコーナーなどは、まだ開館したばかりでどのように運営していったらいいのか楽しみながらがんばりたいという話をお聞きしました。公共図書館のサービスの中で一番わかりやすく、喜ばれている部分が対児童のサービスです。地域の図書館関係者の方がそうしたサービスに努力されていることを実感してまいりました。今日は継続の審議ですが、子ども読書活動推進計画に関する報告あるいは提案がなされると思います。われわれとしましても、充分に議論を尽くしていきたいと思います。
○伊達館長
  本日はお忙しいところご出席いただきありがとうございます。県図書館で進めている「22世紀を牽引する叡智の杜づくり」事業について、具体的にお話しできる状況になってまいりましたので、後ほど詳しくご説明したいと思います。本日もよろしくご審議賜りますようお願いいたします。

6 議長選出

 石田会長を選出。

7 傍聴について

 傍聴希望者なし

8 会議録署名委員の氏名

○議長
 太田委員を指名します。

9 議題

(1)報告事項
○議長
みやぎ子ども読書活動推進研修大会について事務局から報告をお願いする。
○事務局(高木副参事兼次長)
別紙資料により報告。
○議長
この件は後の議題にも関係するので後ほど質問いただくこととして、報告を進めていただきたい。「22世紀を牽引する叡智の杜づくり」事業の現状について、事務局から報告をお願いする。
○事務局(濱田企画管理部長)
別紙資料により報告。
また、伊達館長から貴重書修復の状況について報告がある。
○伊達館長
今年度から15か年計画として、毎年度5000万円の予算で貴重書の修復事業を始めている。現在までに県の文化財指定を受けたものが2040点あるが、いずれ国の文化財となるものなので修復には万全を期してもらいたいと文化庁の美術工芸課から話があったので、国宝修復装こう師連盟に修復を依頼している。現在京都国立博物館の収蔵施設で修復している。また修復とともに、必要なものについてはレプリカを作成している。今回は坤輿万国全図と禽譜92点のレプリカができて、2月末には仙台城下絵図や仙台国絵図の修復が完了する予定である。そしてレプリカについては世界を市場として1月から販売することになっていて現在その準備中である。いまご覧いただいているのは坤輿万国全図である。(パソコンを使ってプロジェクターで映写しながら説明)マテオ・リッチによって1602年に北京で刊行されたもので、日本海と記入されている最古の世界地図である。また彩色されたものは、刊本をもとに40年ほど後に日本で作られたものである。この宮城県図書館所蔵のものは国の重要文化財に指定されている。これらの地図は世界的に研究されており、世界の美術館・博物館や研究者からのニーズがあるということで、屏風の形のレプリカを販売することとした。またこの画像は、デジタル化を依頼した会社の技術を利用したもので、原本と彩色したものを対比して見ることができるものである。次に禽譜について説明する。禽譜は江戸時代最大の鳥類図鑑といわれているが、これについてもレプリカを作成し、またデジタル画像も作成したので、研究者にも役立つものではないかと思う。2月には国絵図・仙台城下絵図もこのような形でご覧いただけるようになる。画像は県のホームページで4月以降公開し、研究に供することができるようにする。学術調査については、多くの先生方においでいただき、6万点の貴重書の概要について精査していただいているので、数年の間には貴重書の相対評価がなされるだろうと思う。またさまざまな方にボランティアでおいでいただき、他施設との比較で宮城県図書館の位置づけをしていただいている。以上修復の現状についてお話しした。
○議長
この報告事項について、聞きたいことや発言等ありましたらどうぞ。
○小田委員
伊達館長のリーダシップによって今まで埋もれていた宝をここまでにしたことは非常に素晴らしいことだと思う。坤輿万国全図のレプリカを販売するということだが、どれくらいの価格になるか。
○伊達館長
現在調整中だが、たとえば現物の95パーセントくらいの大きさとすると、120万円くらいの価格となる。
○議長
以前東北大学で貴重書、古地図をフォトCDの形にしたが、今回のデジタル化も研究者に資するものだと思う。古地図については、広げて見る場所の確保や判読の難しさなどもあり、なかなか研究が進まない部分があった。現在では画像を拡大したり比較したりすることができるので、これから地図の研究は進んでいくのではないかと思う。東北大学所蔵の写本、宮城県図書館所蔵の原本と写本が展示室で並べられているのを見て、やはり比較・対照ということが一番わかりやすく問題点の発見につながりやすいと感じた。このたびのデジタル化は本当に有意義であると思う。
○秋月委員
資料に複製資料の巡回貸出とあるが、直接の来館者が見たい場合も見ることが可能か。
○事務局(濱田企画管理部長)
図書館に戻っている期間であれば見ていただくことは可能である。
○議長
県図書館でできる貴重書の修復などについて、文化庁の指導はあるか。
○伊達館長
指導はあるが、古い年代の地図の修復なので、裏打ちしている紙にもっとも近い紙を調査して新たに作成したりするとなるとそこまでは難しく、お任せしたほうがよいと思う。
○議長
来月開催される県民参加ゼミナール「本と書評の考現学」には、どなたを講師に予定されているのか。
○事務局(濱田企画管理部長)
当館の職員が中心となって行う。
○伊達館長
「本と書評の考現学」は昨日のNHKの番組の中で紹介された。この「プロジェクト22」については、回を重ねてよりよいものにしていき、県図書館の目玉事業の一つとしていきたいと考えている。また、先ほど濱田部長が説明した冊子「叡智の杜」についてだが、できたら協議会の委員も県図書館への提言などをお書きいただけたらと思うが、いかがか。
○池田委員
『叡智の杜』への学校司書の参加というお話があったが、市町村図書館の司書の方たちが専門職としてスキルアップする上で、一つの図書館でこのような事業を行うことは難しいと思う。図書館の現場では利用者サービスに追われてスキルアップが難しいので、発表の機会があればまた違ってくると思うので、市町村図書館の司書の参加も検討してほしい。
○伊達館長
さしあたり学校司書ということで声がけしたが、順次話していく予定なので市町村図書館の方からも寄稿をお願いしたいと思う。
○事務局(早坂資料奉仕部長)
今までにも『協力だより』という年1回発行の通信誌には市町村図書館の方からたくさん寄稿いただいていて、研修の成果などを発表していただいていたが、この『叡智の杜』にも寄稿いただけるようにしたいと思う。
○池田委員
特に研究や仕事上の工夫などを発表する場があると図書館職員にとって励みになると思うので、ぜひ検討いただいて、市町村図書館が集まる研修などの場で積極的にPRしていただきたいと思う。
○伊達館長
もう一つ紹介すると、以前神奈川大学の出来成訓教授から斎藤秀三郎関係の資料を寄贈いただいたが、8月には自筆の未刊稿本も寄贈された。これによって大槻文彦と斎藤秀三郎の関係資料がかなり集積されたので、研究にも役立つことかと思う。さらに出来先生からは資料を自費でご購入いただいて寄贈していただいている状況である。
○事務局(早坂資料奉仕部長)
斎藤先生は5000ページ近い大著『和英大辞典』を執筆された後に英和辞典を刊行される予定でAからFの項まで執筆されたところで亡くなられた。その生原稿は今まで所在が不明だったのだが、これをきっかけにあるところから寄贈された。その後出来先生が英語学界に呼びかけられ、その成果で斎藤先生の学校のテキストなどが他の先生からもすこしずつ寄贈されるようになった。だから出来文庫が県図書館に入ったことによっていろいろな資料が波及的に集まってくるようになったということである。
(2)協議事項
○議長
次に協議題に移りたいと思う。では「宮城県図書館・子ども読書活動推進計画」について事務局から説明をお願いする。
○事務局(早坂資料奉仕部長)
別紙資料により説明。
○議長
それではただいまの報告についてご意見・ご発言をいただく。
○太田委員
説明いただいた資料を見ると、県内公共図書館の個人貸出冊数の数値が市立図書館においてかなり伸びているが、これは市立図書館が新しく開館したということではないだろう。そうすると現有の図書館数でこれだけ貸出冊数が増加しているわけだが、その原因を教えてほしい。
○事務局(早坂資料奉仕部長)
いくつか原因が考えられる。仙台市などでは学校とのネットワークが作られているが、仙台市だけではなく県内各地の図書館で行われているという報告を受けているので、こういった試みの成果が大きいかと思う。それから朝読書などが学校で盛んに行われており、その中で読書の楽しみを覚えた子どもたちが母親と一緒に市立図書館に行くとか友達同士で行ってみるといったことが市立図書館の利用に結びついているのではないかと思う。宮城県図書館には協力貸出という制度があって、これは図書館に対する貸出だが、順調に増えている。また今年度加美町小野田図書館と蔵王町立図書館が開館したので、16年度の集計も楽しみなところである。
○太田委員
先ほど、みやぎ子ども読書活動推進研修大会の報告にあったが、小牛田町図書館で移動図書館が廃止された後に行っている学校へのサービスの内容はどのようなものか。また、女川高校の方の発言のなかで管内の読書活動のネットワーク化が図られているということだが、この中で高校はどのような役割を果たしているのか、教えていただければと思う。
○事務局(高木副参事兼次長)
小牛田町図書館に限らず、予算との関係で移動図書館が廃止されており、それに代わって学校に対するサービスを行っている状況である。また、市立だけでなく町立図書館に対する児童資料の協力貸出も増えており、調べ学習などに利用されている。女川高校に関しては、現在は女川町内のみのネットワークが出来ているということである。市町村合併も控えているので来年度からは変化していくと思われる。学校とのネットワーク化は図書館における今後の課題であり、女川の場合は進行中の事例ということでの発表であった。
○議長
他の委員の方、何かありませんか。報告事項にさかのぼっての質問などでも結構です。
○二瓶委員
学校との連携ということで、加美町中新田図書館の例をお話しする。加美町の図書館でも、合併後巡回対象地区が拡大したので現在移動図書館車の運行を休止している。その代わりに、学級ごとに30冊貸出したり、先生方に来館して本を選んでいただき貸出したりするなどの方法をとっている。
かつて中新田小学校にいた先生が三本木町に移動したときに、三本木町に1000万の図書費が寄贈になったので、図書の選び方が非常に上手になって戻られたことがあった。その結果、町立図書館に対する要求がその先生を中心にどんどん出てきた。夏休みに図書館に来てもらおうということで、図書館の利用カードを持っていない子どもたち全員の名簿を事前にいただいて夏休み前にカードを作るなど、先生方の力もあって学校との連携がかなり進んでいる。また調べ学習などで一つの学校が資料を使っていると、同様のテーマの調べ学習に対応できないなど問題があるので、学校自体に図書費を配分する必要があると思う。いま市町村に地方交付税として学校にも図書費を配分するようにという配慮がなされている割には学校に回っていないようだ。先生方が勉強して学校図書館の選書をするようになればますます連携が深まり、利用が増えるのかなと思っている。そのあたりがなかなか思うようにいかないところではあるが、先生方が着実に理解されているのは心強いと思っている。
○議長
前回ちょっと話題にもなった部分で、図書館の管轄ではないのかもしれないが、5年計画で650億円という学校図書館図書整備費は宮城県の場合どうなっているのだろうか。二瓶委員も言われたとおりこれは地方交付税で措置されたものだが、宮城県での実施状況は思わしくないのだろうか。 
○二瓶委員
加美町の学校の先生方も教育長に要望は出したらしいのだが、現状では難しいので公立図書館を利用してくださいということで終わったようだ。
○小田委員
公立図書館と学校がタイアップしているということだが、貸出冊数は統計上どのように表れているのだろうか。例えば100冊を学校に貸出した場合それが数字になっているのか、それとも学校からそれを児童に貸出した場合、それも数字になっているのか。
○事務局(早坂資料奉仕部長)
この統計については市町村図書館における貸出なので、学校に貸出した冊数も含まれている。
○小田委員
学校に貸出したらそれを1回と数えるということだね。
○事務局(早坂資料奉仕部長)
そうである。
○小田委員
そうすると実際にはもっとたくさんの児童に普及しているということだね。
○事務局(早坂資料奉仕部長)
そうである。また、数値目標はあくまでも公立図書館における貸出冊数ということで、学校図書館や公民館図書室における貸出は統計に含まれていない。
○太田委員
議長がおっしゃった地方交付税措置だが、文部省から打ち出された学校図書館図書整備新5カ年計画の第1回は平成6年だったと思うが、そのとき私は県の方で担当していて、はじめて6月議会で図書館のことが取り上げられた。その際に、宮城県や県内市町村において地方交付税措置がなされることによって増えた1人あたりの図書費はかなり低いものだった。5年間で相当の予算が計上され  たが、それは橋や何かに化けてしまったわけである。現在は第2次の計画だが、市町村に対して学校図書館整備を各学校が自治体に強く訴えなければ実現しないと財政課から聞いた。そういう取り組み方を県図書館で指導していく予定はあるのか。
○議長
それはやはり教育委員会の所管であろうと思う。文部科学省から650億円の予算措置をすると決まって、直接には教育長に通知が来てそれが教育委員会に来るという流れだと思う。ただ地方交付税という形だから、緊急度の高いものが他にあればそちらに回っても仕方ないということであろう。
第1次は追加予算も含めて1000億円くらいは出されたようだが、実施率は30パーセントほどで学校図書館の図書の充実にはつながらなかったと言われている。その間に「子どもの読書活動の推進に関する法律」が制定され、今度は650億円で第2次の5ヵ年計画が始まって前回のようなことがないようにという異例の指導までついているようだが、当初は前回と同じように実施率が低調なために、学校図書館法の改正があって、地方交付税の枠をはずして必ず学校図書館の充実に結び付けなければならないという通知が各教育委員会に行っていると思うのだが。第1次のときには全国的に司書教諭がほとんど不在だったが、学校図書館法の改正で現在では少なくとも中規模以上の学校には司書教諭がおかれているので、現場からの声を上げやすくなっており、以前に比べて予算のかなりの部分が学校図書館の図書費に使われて行くだろうと理解している。
○秋月委員
調べ学習の実態についてよくわからないのだが、どの学校も同じ教科書を使っていて、一斉に同じようなことを調べるのだろうか。それとも先生方が自主的にさまざまなテーマを選んでなされるのだろうか。
○二瓶委員
教科書に出てくるテーマだとどの学校も同じということになるし、低学年だと身近な生き物について調べるなど、学年によっても違うが、どうしても同じになる場合が多いようである。テーマによっては公共図書館で所蔵している資料が少ないということもある。先生方には前もってテーマを教えてくれるようにお願いしているのだが、先生方も時間的余裕がないことが多く、同じような資料を使うことになることもある。
○小田委員
ベストセラーにリクエストが集中するのと同じような現象が起こっているわけだね。
○事務局(早坂資料奉仕部長)
調べ学習といっても、小学校・中学校・高校でさまざまだが、調べ学習で県図書館に来る場合にはホームページ上にある事前調査票をダウンロードして記入の上ファックスで送ってもらい、それを元に先生方と必ず打ち合わせをしている。先生方にお任せすると決まりきったテーマになってしまい、ひとつのテーマに何十人も集中して資料も足りなくなって、ぶらぶらしただけで帰ってしまうということになってしまうので、子どもが本当に興味を感じて調べたいと思うテーマについて自由に選んでもらうようにお願いしている。宮城県図書館に来たこともホームページを見たこともない状態で電話してくる先生方もいるし、たいていはバスなどをすでに手配した上で学年主任の先生が連絡してくることが多く、司書教諭の先生が関与していないことも気になる。中には直接自分の目で図書館資料を確認した上で、生徒を連れてくる先生もいるが、学校での取り組みはまだまだこれからなのかなという気がする。
○議長
学校図書館は遅れていた部分があったが、学校図書館法が改正されて司書教諭の方たちの活躍が 期待されている。
○関口委員
図書館そのものが、行くと楽しい発見がある空間になっていないのではないだろうか。本を読むだけではなく、本で遊ぶとか、本を演じるとか、自分で本を作ってみるという次の段階に図書館は目を向けているのだろうかと思う。たとえば塩竈の図書館や学校では、大人が本を使って生き方を楽しむというか、声を出して誰かに語りかけることが自分を生かすことだという視点で動いているようだ。県の図書館からまず大人にアプローチしていくことが必要なのかなと思う。本を増やしていくことはとても重要だが、あるものを使って生きていくことを深めるのも大切で、そのための手伝いが出来るといいなと思う。
○塩野委員
調べ学習の際に学校側の窓口となる学年主任の先生がホームページを見ていなかったりするというのは高校の調べ学習のことなのか。それと、バスで来館するというのは学校行事の一環としてということなのか。
○事務局(早坂資料奉仕部長)
高校生はさすがに公共の乗り物を使って来館するが、小中学生の場合は学校行事の一つとして、あらかじめ日時を設定してバスを借り切って来ることもある。まずは手始めにそのような形でやってみようということで、学年主任の先生が申し込まれるケースが多いようである。
○塩野委員
年にどのくらいの件数を受け入れているか。
○事務局(早坂資料奉仕部長)
別紙資料により説明。
○関口委員
子どもが4時間もテレビを見ているという現状で、深く思考することが身につかないまま大人になっていく人が増えている。本を読むこと、外で元気に遊ぶことがテレビに勝つ方法だと思うのだが、県図書館はそれを支援することを考えているか。
○事務局(早坂資料奉仕部長)
濱田部長が説明した資料「宮城県図書館活用推進事業」をご覧いただければと思うが、この事業は、図書館職員をいくつかのグループに分けて、 そのグループごとに楽しいイベントを企画するものである。その中で「読書が楽しくなる4つのゲームを通して」と題したアニマシオン活動を8月に実施している。アニマシオンという言葉は日本ではあまり普及していないかと思うが、本を読む、聞く、声を出すといったことを含んだゲームを通じて読書に親しんでもらうというものである。これは大変新鮮だったようで、出席者は少なかったのだが、はじめての体験でとても楽しかったという声をたくさんいただいた。アニマシオンについては学校司書の方などがすこしずつ勉強を始めているところで、宮城県図書館にも実践する職員もいる。県内の市町村図書館の方にもこうした活動を理解いただいて、実践活動を通して楽しめる企画を広げたいと考えている。そのほかの企画も幅広い年齢層を対象としており、来る12月11日に行われる「本と書評の考現学」も、白百合女子高の生徒が声を出して名作を読むというような新しい試みも取り入れている。まずは宮城県図書館がひとつの実践例としてさまざまな事業を展開して、県内の市町村図書館の方にも徐々に提供していければと思っている。
○関口委員
イベントではなく、日常的に県の図書館が行っていくようになればうれしいと思う。今度和歌山県立図書館に行くのだが、そのなかに文化情報センターという場所があって常時そのような活動を行っていると聞いている。宮城県図書館でもそのような活動をコーディネートしていただければありがたいと思う。
○伊達館長
県立図書館だから相応の責任を果たしていかなければならないと思うのだが、現状では毎日2000人以上の利用者に対するサービスに終始している状態だ。県の図書館としての役割を果たすという意味でこのような企画もみんなで検討しながら進めている。また、県の図書館として相応しい蔵書構成を考えていくなどしたうえで、直接サービスのみならず市町村図書館の支援などに力を注いでいきたいと考えている。また地域開放を行っている迫桜高校や気仙沼西高などにも協力貸出を実施するなど、県内全域に対して均一なサービスを行うよう努めている。
○事務局(濱田企画管理部長)
補足になるが、複合施設の中に県立図書館が入っているというような例も他県ではだんだん増えているので、関口委員が言ったような文化的な事業を常時行っているようなケースはそのような施設での場合ではないかと思う。
○関口委員
少子化の時代を迎えて、公共施設が親子を支援していく社会にならなければならないと思う。その中で県立図書館をどのように位置づけるのかということである。複合施設でなくても公共施設であれば子どもを支援していくべき空間ではないだろうか。
○事務局(高木副参事兼次長)
市町村図書館は、単に図書館としてではなく町の文化施設の中心として、大人も子どもも楽しめる行事を多く行っている。例として矢本町立図書館では科学あそびだとか、本吉町立図書館では小学生を対象とした「まんぼう塾」という体験学習会などが開催されている。
○秋月委員
私も隣の大学にいて、大学の図書館で本を購入しているが、半分以上は図書館で買う、その他は各教員から希望をとって買うというふうにしている。昨日大学の図書館での打ち合わせがあって、今年は教員から希望が出た本を購入すると次の日には借りられていくようになり、先生方の本の選び方が上手になったという話があった。いままでは県の図書館が市町村の図書館をどう支援するか、市町村図書館は学校図書館をどう支援するかという、トップダウン的な支援のしかただった。しかし、子どもに本を読ませるのは現場の先生なのだから、先生がいい本を持ってくれば読むだろうし、先生の選択が悪ければ読まないということになる。だから、学校図書館を充実させるということはトップダウンではなく、現場の先生がいかにいい本を選ぶか、つまり子どもではなく大人が子どもの読める本をいかに持ってくるかということだと思う。
○伊達館長
トップダウンではなく、県の図書館が市町村を支援する役割を担っているということである。
○秋月委員
役割はそうだろうけれども、協議題の究極の目的はいかに子どもに本を読ませるかということだね。その目的のために、みんながそれぞれの立場で役割を担っていくわけである。ところがどんなにいいサービスをしてもサービスされる側の質が悪ければそれが生きてこない。これは誰がやるのか分からないけれども、学校図書館を充実させようと思ったらサービスされる側の質を上げることがこれから重要になってくるのかなと思う。
○塩野委員
宮城県内の図書館に関することに県図書館1館で対応するのは困難だと思うので、分館を作ることも一つの方策だと思う。岩波新書の『未来をつくる図書館』の中で紹介されているニューヨーク公共図書館では、児童室に教員コーナーが設置され図書館で授業ができるようになっていたり、豊富な教材がおいてあったりするそうだ。私の経験からしても、先生が推薦したり授業で取り上げたりした本が多く読まれるので、先生方に働きかけることを考えてはいかがか。
○伊達館長
今年から、子どもの本の移動展示会を学校でも行っている。またこの図書館の特徴の一つとして児童書が豊富なことがあげられる。児童資料研究・相談室というコーナーもあり、先生方にそちらに来ていただければ実際に資料を確認したり、研究していただける。
○塩野委員
そこで教員自身が研修するということもできるか。
○伊達館長
そういうことも可能である。
○議長
まだまだいろいろな意見もあるかと思いますが、時間なのでこれで協議を終了します。本日の協議題であった子ども読書推進については全国的なキーワードであり、この分野における県図書館の取り組みが軌道に乗ればまた新たな課題が出てくるかもしれない。私も一委員として啓発されることも多く、また次回に向けて勉強していきたいと思います。

10 その他

事務局から平成17年度第1回協議会の日程について提案があり、平成17年6月2日(木)の午後1時30分から3時30分までとすることが了承された。

11 閉会

司会者、菊地次長兼班長は閉会を宣言した。その後、展示室に案内し、特別展の説明をし、解散した。

宮城県図書館

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