平成14年度 第2回宮城県図書館協議会 会議録

 

  1. 日時及び場所
    平成14年9月5日(木)午後1時30分から午後3時30分まで
    宮城県図書館 2階研修室
  1. 出席者
    出席者 奥山恵美子委員、小野寺健委員、梶功夫委員、齋藤雅英委員、二瓶瑠璃子委員、太田四郎委員、関口玲子委員、永野為和委員
    欠席者 小田忠雄委員、紅邑晶子委員
  1. 事務局出席者の職氏名
    館長 伊達宗弘   副館長 浅野袖記   企画管理部長 板橋正春
    資料奉仕部長 遠藤幸生   庁副参事兼次長 櫻田重敏   次長兼班長 早坂信子
    次長兼班長 高木治夫   主幹兼班長 菅原泰博   主任主査 木村吉昭
  1. 開会
    司会者、櫻田重敏副参事が本日の協議会は定数を満たしたので、有効に成立した旨を告げ開会を宣言した。
  1. 挨拶
    ○齋藤会長
    前の会議で4月に就任した館長から顔の見える図書館にしたいという申し出があり、図書館の中も今までと異なった視点からの運営がなされている。今日もそういう視点からの館長の意向を受けた話での議論が行われることになると思うのでよろしくお願いします。

    ○伊達館長
    生涯学習社会といわれて久しい中で、公共図書館に対する期待はますます高まってきており、高度専門的かつ質の高い図書館の運営も求められています。
    本日は、「県民の共有資源としての蔵書の在り方 -宮城県図書館としての果たす役割-」について諮問させていただくことといたしております。図書館運営の中心となる3項目をご審議いただくことになりますが、本日は「顔のある図書館としての資料及び情報の整理、保存及び提供の在り方について」ご審議を賜りたいと思います。
  1. 議長選出
    齋藤会長を選出。
  1. 会議録署名委員の氏名
    太田委員を指名。
  1. 傍聴について
    議長が、本日の協議会の傍聴希望者が1名おり、傍聴要領に基づき傍聴を許可して宜しいか、議場に諮ったところ満場一致で承認された。
  1. 協議議題
    ○議長
    協議会への諮問について、全体的なこと、今日の議論の中心になる部分を事務局から説明願います。
    ○事務局(遠藤資料奉仕部長)
    資料により説明。

    ○議長
    第26期の協議会に課題が与えられました。蔵書の在り方、その3つの切り口から検討していただきたいということですが、答申という形でまとめることになりますか。
    ○伊達館長
    第26期の最後に答申という形でまとめていただきたい。

    ○議長
    今日は「顔のある図書館としての資料及び情報の整理、保存及び提供の在り方について」議論を始めたいと思いますが、今の説明について質問や説明不足等がありましたら、ご意見を頂戴する前に出していただきたい。
    ○梶委員
    現在の保存状況ということで、7種31点マイクロフィルム化されているという話ですが、それ以外の保存は進んでいないのですか、現在はどこまで古文書等の保存が進んでいますか。
    ○遠藤部長
    ほとんど原資料ということで、保存の方は進んでいない状況です。
    ○小野寺委員
    現在の図書館では、文化財指定は1件もないという認識でいいんですか。
    ○遠藤部長
    文化財指定は国指定の重要文化財は坤輿(こんよ)万国全図で、中国で刊行されたもの、日本国内で写されたものの2点が重要文化財に指定されています。
    ○小野寺委員
    それ以外は、県の文化財等にも指定されてないという認識ですね。
    ○遠藤部長
    仙台開府四百年がらみで、平成12年4月に仙台市の指定有形文化財として絵図面等11鋪2冊が指定されています。

    ○太田委員
    先ほどの遠藤部長からの説明の中で酸性紙等で劣化が著しいということでしたが、貴重本の紙質について教えていただきたい。2点目は県図書館には、大変貴重な資料がたくさんあるということを教えていたが、例えば宮城県内の個人はともかくとして、指定されるような貴重本等の一覧表は県図書館以外のものはあるのか、例えば高校にもそれぞれの高校の歴史で貴重本もあるが、そういったものの調査などはしているのか。
    ○早坂次長
    1点目の保存状況については、酸性紙を使っているのは日本の古典籍にはなく、近代以降の日本や外国の本がほとんどです。例えば、蘭書は1600年代、1700年代、1800年代とまたがってあり、そういったものの劣化が非常に激しい。特に革装は日本の風土に合わない面があり、革がボロボロになってきている。例えば大槻玄沢が翻訳した原書や博物図鑑といったものなど大変すばらしいもので、国内にほとんど残っていないものも多数あるが、非常にいたんできている。和書に関しては、もともと和紙を使って墨でそれに文字を書いた場合は非常に丈夫で、千年、二千年という長い保存に耐えうるものです。ただし、和紙はチャタテムシ等の害虫が好物で、虫に食われた状態で図書館に移管されたものが多くて、そういったものの補修がまったく手がついておらず、ただ見守っているような状況です。新館にきてようやく薬品などでの処理をしましたし、防虫香を使ったりして、今以上の劣化をやっと防いでいる状況で、根本的な修復手当てにはなかなか及んでないのが現状です。
    第2点の県内の貴重書については、各公立高等学校図書館に眠っている古典籍についての調査は、十数年前から手が付けられ、県図書館の指導のもとにそれぞれ各校で次々と目録が刊行され、その集大成というものも編集が終わっており、こちらですべて把握しており、保存や整理の方法も指導をいたしております。宮城県図書館にあるものについても、当然目録も刊行しており、県内の大学で発行している目録についても収集し把握してます。
    ○議長
    個人所有については。
    ○伊達館長
    個人所有については、県の文化財保護課が中心となって、市町村教育委員会をとおしてそれなりのものをリストアップしているものと承知しています。

    ○小野寺委員
    文化財に指定されるとなにかメリットがあるのかないのかお聞かせ願いたい。例えば現状でいくと、宮城県でこういう立派なものがあるが、予算措置がなかなか取れないが、文化財になると国からの助成金であるとか、県関係でまとまった予算的措置とられるのか。そういうのも含めて指定されるとどうなるか教えていただきたい。
    ○伊達館長
    国の文化財になれば国から相応の助成が得られるものと思う。また、文化財に指定されれば予算要求の根拠になると考えている。
    ○小野寺委員
    指定されると助成的なものが考えられてくるということですね。
    ○伊達館長
    坤輿(こんよ)万国全図の場合は全て国費で修復されました。
    ○議長
    現物の利用は制限されますか。
    ○伊達館長
    レプリカで対応することが多くなると思う。指定されるとガードが堅くなる。
    ○梶委員
    国の文化財として指定されるとどこまで保存してくれる訳ですか。
    ○伊達館長
    管理は所有者です。
    ○梶委員
    マイクロフィルムに収めるとか、修正のための費用は。
    ○伊達館長
    マイクロフィルム等は全部県でやらなければならないが、国の事業の中にも取り込んでもらうものがあれば活用したい。
    ○梶委員
    文化財に指定された時、保存に関わることはどこまでやっていただけるか。
    ○早坂次長
    文化財保護法によりますと、国指定の文化財が破損や劣化が想定される時は、修復費についてこちらで申請し、こういう状態なので修復して欲しいということになれば、国が指定した一流の修復師に頼んで研究成果として修復してもらえる。
    ○梶委員
    保存のためのマイクロフィルム化等はやってくれない。あくまでも修復ですね。
    ○早坂次長
    そうです。
    ○議長
    マイクロフィルムは、ほとんどが研究資料ということでした。
    ○早坂次長
    マイクロ資料はいくつかありますが、事業としてそれを製作したのではなく、あくまでも新聞のマイクロ化で余った切れ端の部分で作っている。郷土資料室の小さなフィルムケースの中に何千とあるが、全て切れ端のフィルムで撮影して、ただし、便利に使っていて大きなリール状のフィルムですと全部巻いてみなければならないが、たった一冊見たい場合でも全部巻いてみなければならないが、それだとこの一冊という形ですぐ本を読むような形の単位で見ることが出来て便利です。それから、国文学研究資料館で和歌に関するすべての文献を全部マイクロ化し、複製物を宮城県図書館に寄贈されており、それを利用しています。

    ○議長
    ほとんど原資料ということで、利用状況はどうなっていますか。
    ○遠藤部長
    数的なものについて、資料で説明。
    ○早坂次長
    特別利用の中で、特別貸出というのは全国の美術館・博物館に貸出した資料数で、撮影というのは複製できないのでカメラで撮影した冊数、出版は出版物として使った、掲載は本の中の一部分に資料を載せた、翻刻というのは昔のくずし字で書いたものを活字体に直して出版した、ビデオ収録というのはビデオ製品として作られたもの、放送というのは一般テレビ放送、装飾というのは例えば坤輿(こんよ)万国全図の地図を仙台空港のエレベーターの壁にデザインとして使われたための撮影、以上のような形でただ図書館にきて閲覧が増えているというだけでなく、様々に活用されている事例が非常に増えているということです。それがデジタル化したり、マイクロ化したりしてあれば心配する必要はないんですが、利用の範囲が非常に広がっている場合には、現物からの撮影であったり、掲載であったり、装飾に使ったりということで、かなり劣化が心配されるということです。
    ○議長
    それは一般の利用規則の中で誰でも使えるのか、特別な制限がなしで。
    ○早坂次長
    利用目的では、文化的あるいは学術的というようなことで、営業利益のためということで販売するためにするということでは制限はします。一般的に特に利用者に制限するということはない。
    ○梶委員
    ここで利用冊数と書いてあるが先ほど点数で約29,000点、これは冊数と思ってよろしいんですか。
    ○伊達館長
    冊数です。
    ○梶委員
    この中で、例えば非常によく参照されるものとか、ほとんど参照されないものとかいうランク付けは可能ですか。
    ○伊達館長
    可能です。
    ○梶委員
    Aランク、Bランク、Cランク位に、一か月での算出は可能ですね。
    ○伊達館長
    可能です。
    ○小野寺委員
    特別利用の貸出の時には、金額は発生しないんですね。ただ貸出して、原資料になにかあった場合は、現況においてどういう対応をされるんでしょうか。
    ○早坂次長
    特別貸出の場合はほとんど美術館・博物館で、条件としては美術専門の車を使っていただくとか、保険を掛けていただくとか、あるいは学芸員を必ず便乗していただくとかという条件を付けさせていただいていますが、世界に一つしかないものを交通事故などで損なわれ、お金がいくらあるからといっても復元はできない訳です。たしかに、ご心配のとおり今のところ制限としては、まったく貸出さないということはできないので、そういう条件の中で配慮してきました。
    ○小野寺委員
    これが文化財になると、ちょっと違った形になるのかなと思います。文化財になると、少しガードが堅くなったり、マイクロフィルムにしたらマイクロフィルムの方を貸出すというふうになる。図書館のための付加価値のもので非常に大事なものと思うので、今後の部分でやっていかなければならない。例えば、先ほどマイクロフィルムの話があった時に全部写真で撮ると、どれくらい予算的がかかるのでしょうか。
    ○伊達館長
    全体のマイクロフィルム化とか、修復も含めてどの位かかるかということで試算をしています。それができた時点で方向付けを検討したいと考えています。
    ○議長
    それは6万点についてですか。
    ○伊達館長
    特に貴重な3万点について、1点1点業者を呼んで見積もらせています。
    ○議長
    それはマイクロフィルムの方向で。
    ○伊達館長
    マイクロフィルムも含め、後は例えば絵図面であれば全部の裏打ちし直し、洋書であればそれをきちっとする。
    ○議長
    デジタル化じゃないという方向ということですね。
    ○伊達館長
    マイクロ化が熟成されている技術と思うので、それにしておけば後はデジタル化にできる。そういうものが整理された段階で、後はインターネットに載せて宮城県のイメージアップを図るということです。

    ○議長
    それでは本日用意した貴重資料をご覧いただきたいと思います。
    ○早坂次長
    貴重資料の説明。

    ○議長
    ご覧いただいた禽譜(きんぷ)、絵図面は傷んでいるわけですね。 
    ○伊達館長
    絵図面は傷んでいます。それは、幕府と藩の公式命令で作っている絵図面ですから、かなり詳細を極めた正確なものです。仙台藩全域をカバーしていますし、さらに常陸の国とか近江領、政宗が造った江戸屋敷等、その絵図面の研究だけでもいろんなことが判るような資料です。
    ○議長
    これは保存の面から見て、非常によく保存されている。
    ○伊達館長
    これは比較的よく、ただ保存の悪い部分もある。
    ○議長
    絵図面は畳んでますか。
    ○伊達館長
    絵図面は畳んでます。
    ○議長
    破けますよね。
    ○伊達館長
    絵図面に対して、最近4・5回断っておりますが、折り畳むとき知らない人は別な折りかたをしてしまう、そして一番大切な字が霞んでしまう。私は保存の目途がつくまで極力貸出閲覧を制限したいと考えています。
    ○議長
    では絵図面等をどうするか、見せない方向で行くか。
    ○伊達館長
    傷みがここ4・5年で始まったのが多くて、後4・5年で絵図面でも字が見えない状態になってしまう。
    ○二瓶委員
    そういう貴重なもののマイクロフィルム化とか、保存していく順番をつけているのか。
    ○伊達館長
    優先順位つけて保存措置を講じていきたいと考えています。
    ○議長
    現時点では、見せるなといってもなぜ見せないのかという文句もでますよね。
    ○伊達館長
    今の規定からいっても、基本的には見せないようにかなり厳しい規定なんですが、運用のほうでだいぶ弾力的にやっている、基本にたちかえりきちっとやれば、かなりガードは堅くなります。
    ○議長
    レプリカやマイクロフィルムができるまでは、そういう制約は百年・二百年のことを考えれば、必要ですね。
    ○伊達館長
    はい。

    ○議長
    それではどうするかということについて、何かございましたらどうぞ。
    ○太田委員
    どうするかというところまではいかないんですが、非常に重要なことでもう少し確認させていただければと思います。
    緊急性ということで出てきた訳ですが、先ほどの貸出の状況などを見ますとここ2・3年のところに急激に貸出の件数が増えているということですし、毀損とか亡失の恐れというのがあるわけですが、今回の協議会が26期ということですが、このような保存についての話し合いがなされるのは、初めてなのかどうか。それから2点目は、このマイクロフィルムなり、デジタルなり、先ほどの資料にございましたけれども、他の公立図書館の状況などについての実績といった状況も教えていただければありがたい。3点目は、マイクロの方は解像力が優れているということですが、カラーの色の面などについてどうなのか教えていただきたい。
    ○伊達館長
    審議会でご審議いただく、こういう形でご意見を伺うのは初めてです。他の公立図書館ということになりますが、こういうものをこのように持っているのは、大阪と東京と宮城だけです。大阪と東京については、かなり色々なマイクロフィルム化とかデジタル化が進んでいるということです。そういう面では、三館中宮城県は遅れていると思います。カラーについては、今の段階ではマイクロフィルムが熟成された技術だろうと思います。
    ○早坂次長
    宮城県図書館は東京都と大阪府に次ぐ古典籍の持ち主ではあるが、東北では秋田県立、北陸の方では石川県立が、量は数千と多くはないが持っており、積極的に文部省の補助金などを使いながらデジタル化を進めています。カラーフィルムのことについてですが、こちらのマイクロ化というのは、通常の図書について考えておりまして、色刷りの絵の画像のコンテンツの豊富なものにつきましては、やはり大きなカラーフィルムで撮影しましてから,DVD-ROMとか、そういったデジタル化を考えて、実際にお客様がいらした時にパソコン等で拡大したり、絵図などの村の名前、小さな地名が読めないとどうしようもない訳で、結局は現物を出せということになるので、高性能の、いくらでも拡大できるもので対応しなければならないと考えています。
    ○議長
    秋田、石川県はデジタル化といいましたが、マイクロフィルムではないんですね。
    ○早坂次長
    フィルムスキャナでもってデジタル化しています。
    ○議長
    太田委員よろしいでしょうか。
    ○太田委員
    はい。
    ○議長
    東京・大阪あたりでは、費用的には億単位ですか。
    ○遠藤部長
    金額については、まだ十分判っていませんが電話を入れたところ、東京中央図書館では加賀文庫という文庫があるんですが、この4万点を14年かけてマイクロ化したという話をされていました。そしてマイクロ化の順位というには、利用の多いもの、傷みの激しいものからマイクロ化したということでした。それによって、原資料がずいぶん救われているという話をしていました。それから、大阪府立中之島図書館ですが、ここもマイクロ化をしております。指定している貴重書は約9千冊あるんですが、その中の利用の多い2・3千点をマイクロ化してすでに終了している。緊急雇用対策事業を使ってマイクロ化を進めたのと、毎月少しずつマイクロ化を進めているという話でした。

    ○議長
    資料4ページ目に一般的な対策例を揚げていただいていますが。この点について特に利用者サイドからみてご意見はありますか。前に、現在の規則を厳密に守っていけば問題はないという館長の発言がありましたが。
    ○梶委員
    まず、利用者に、公共の閲覧に供するというのは県立図書館の役目です。公共性の立場から最終的に考えていかないといけないことだろうと気がします。貴重なものであるから、傷むからという理由でもって閲覧を避けて通るというのは、これからの時代なかなかできないだろうし、むしろ閲覧できる方法を何とか模索して、閲覧できるように努めるのが、本来の県立図書館の使命なのではないかなと思います。それで、技術的なことも含めて先ほどからこんなイメージなのかなあと考えていたのが、まず、保存するという意味でマイクロフィルム化するというには、ひとつの方法ですね。マイクロフィルム化しておけば、イメージは保存できるとは思いますが、問題が幾つかございまして、1つはデジタル化されてませんからマイクロフィルムのビュアーでないと見れない、パソコンでは見れない。それから、ここに来ないと見れない、大阪の人は見たくてもリモートから見れない。マイクロフィルムにすれば、全て事足りるということではない、ベースとしてはマイクロフィルム化するということは必要だと思います。次にやらなければいけないのは、パソコン等の技術が発展してまいりましたから、もうあと5年もしますと非常に鮮明なビュアーといいますかディスプレイが商品化されてまいります。おそらくカラー印刷したのと同じくらいの精度でもってディスプレイで見れるようになりますから、当然パソコンで見るということが必要になってくる。そうしますと利用頻度の高いもの、あるいは非常に貴重なものについてはパソコンで見れる形での保存を同時に進めていかないといけないだろうと思います。ですから、デジタル化してパソコンあるいはリモートでもそれが検索、見れるということも併せてやっていかなければならない。それから3番目の方法として、何も文書だとか和文書みたいなものは、イメージで見なくともいいわけですね。内容を知りたいというユーザーが多いと思うんです。内容が閲覧できればよい。その内容を公開するということも必要じゃないかと思う。どういう文書類が該当するのかというのは、検討が必要かと思うんですけど。内容が参照できれば、現物そのものを見なくても、イメージを見なくても、利用者としては事足りる閲覧の内容があるんじゃないかという気がします。イメージ化をしていますと、例えば先ほどみせていただきました禽譜(きんぷ)も名前がわかっていればそのものを検索できますけど、検索するという時に「赤い色をした鶏」のこんなものがあったはずだというイメージ検索ができますと、デジタル化するとできるのですが、そういうところまで利用者が利用できるような形で、保存できたら理想的だろと思います。ですからまず、ベースのマイクロフィルム化したもうちょっと先のデジタル化まで視野にいれて、予算獲得をするなり、予算見積りをされることを提案したいと思います。
    ○伊達館長
    図書館は基本的には公開ということで、我々も悩むところですが、こういうものを持っている図書館は例外なんです。本来は博物館で持っているようなものを持っている。それで全国の人達が、宮城県図書館に殺到してきている。そこで、傷みがどんどん激しくなっているというのが実態で、5年、10年位対応できたとしても、10年、20年経つと資料としての価値が損なわれてしまうということで、ここ数年ガードを堅くして、整理したものから積極的に公開していきたいというのが、我々の考えです。
    ○梶委員
    それをすることにしても、マイクロフィルム化するなり、他の形で提供できれば現物を見せなくても済むわけですね。
    ○伊達館長
    基本的にはそういうことです。
    ○梶委員
    先ほどの外部利用状況をみさせていただいても、本当に現物を貸出さないといけないケースと、それから内容が判ればいいケースとあるみたいな気がするんですが。
    ○伊達館長
    傷んでいるといってもここは図書館だから、どうしても見せろということを言われ、担当者は大変悩んでいる。
    ○小野寺委員
    マイクロフィルム化をまず進めるということが大事なことだと思いますし、梶委員のおっしゃったようにユーザーのことを考えるとデジタル化も同時併行でいかなければならないし、お金が付かないとマイクロフィルム化もなかなかできないし、保存も厳しいよ、見せるのも難しいよというのも判るんですけど、では、県立図書館ですから県民が知りたいよと思う時、サービスで借さなければならない。特別利用を見ますと、撮影しているものがありますよね、例えば写真を撮った人がいるのでそれの版を回収して見せるだけでも違ってくるのではないかと思うんですが、結論が出るまでに活用させていただいてやっていくという方法は考えられないのかな。それで我慢してもらい、10年、15年掛るかもしれないが県民の財産を守っていくために必要事業なのでという理解をいただいて、代替作を見せることで違ってくると思う。実際かなり貸出して撮っていると思うので、かなり出回っているのでそれを回収するだけでも違ってくるかと思う。
    ○早坂次長
    撮影の場合は、必ずネガは頂戴することにしています。ネガで済むものについてはフィルムの貸出でお願いをして、出版とか、掲載の場合は、現物でなくてフィルムでお願いしますという形で行っております。なにせ6万冊のうちの1600位ですから重なることはないんです。同じものは繰り返し利用してもらう。坤輿万国全図はしょっちゅうで、今度外務省のホームページにも使われましたけれども、そのように繰り返し使われるものとそうでないものとあります。頂戴したフィルムを使っても一部にはなるんですが決め手とはなりません。
    ○小野寺委員
    この1年、2年を限定するとか。後はちょっとずつ出しますよという形にできませんか。先ほど拝見させていただいて非常にいいものなので、これがなくなるということは県民にとっては財産的には損なので、逆にこれを県民に見せてあげたいと思いますが、見せる手段もなかなか難しい。ここ10年で保存も大事だけれども見せてあげたいと複雑な思いです。見せられるものは見せたい、写真でネガがあるものは写真展でもかまわないから、図書館の部分、入口にパネルで展示していただいて、顔の見える図書館ということで、実物を見るという県民は少ないと思うが、写真だけでも満足して帰られる人もいるのと思うので、できるところから県民サービスをして、その間にプロジェクトを進めて行くという形がいいのではないかと思います。
    ○伊達館長
    立派な展示室もございますので、そういう機会を提供したいと思っています。
    ○小野寺委員
    写真だけでもいいが、ぜひ工夫して欲しい。
    ○二瓶委員
    是非、特別展などもしていただきたい。
    ○伊達館長
    県民の皆さんに見ていただけるような機会を設けたいと考えています。
    ○小野寺委員
    それで問題は無くなると思うんですが、県民に1年に1回公開する。後は非公開にし、宮城の文化財のための作業を進めて行くと言ってしまえば、たぶん納得いただけることではと思うし、逆にフィルム化しているので、見せられませんと言っても、1年に1回だけは公開しますからという話になれば、難しいことではなくなるのではと思います。
    ○伊達館長
    国の事業にかかわって、調査に入っている先生方も沢山いますので、調査中ということにもなるんです。国の大きな事業の中でも宮城県はその中で大きな比重を占めています。それでその事業にうまく乗りながら、文化財指定のためのレポートを併せ出してもらう条件で積極的に見て評価してもらうように考えています。
    ○議長
    その事業は、具体的にどういう事業ですか。
    ○伊達館長
    今の日本は経済的に落ち込んでいますが、国においてはそもそも日本が発展した背景には江戸時代の様々な学問の集積があったということで、何十億という金を付けて、ものづくりとか今の日本を作り上げてきた。江戸時代の基本的な自然科学、地理などについての調査事業がスタートしています。そうすると、数学とか、天文学というとやっぱりネットは仙台、自然科学の何かというと仙台。オランダ語の和書を持っているのは仙台と数箇所しかない。そういうことで、宮城県図書館に殺到している。先生方は不思議だということですが、詳しいことは早坂次長から。
    ○早坂次長
    このプロジェクトが始まりまして、古典科学の黎明期の調査で「江戸のものづくり」というタイトルのもとに、南は九州大学から京都大学、同志社大学、東京大学あらゆる大学の先生が、この夏休みに次から次へと長期滞在しまして毎日のようにと来ている。大学の中では研究テーマに困ったら、宮城県に行けというのが合言葉になっているようで、皆さんは、ジャンルはそれぞれ手分けして、数学であったり、天文学であったり、物理学であったり、蘭学であったりするんですが、なぜか一級の江戸時代の成果品の集積が宮城県図書館にそろっているんです。先生方もなぜか宮城県にあるんですということで、私達もこの夏大変な思いを続けているんですが、せっかくお認めいただけるような貴重なものを持っているんですから、私達も心引き締めて、次の世代に、あるいは300年、400年伝えていきたいということで、お諮りしたということです。

    ○議長
    総合的に検討するということで館長の立場から奥山委員どうですか。
    ○奥山委員
    貴重な資料の管理には、心くばられているかと存じます。仙台市博物館で今、仙台市史の編纂というのをかれこれ十数年やっています。これも足掛け20年位の長期事業な訳ですが、たぶんそれ以上の大規模プロジェクトになるんではないかと思います。市史なんかもそうなんですが、役所の場合、マイクロフィルム代とか、デジタル化費用とかが、付くことも大事なんですが、やはり図書館のなかにこれに専念して、十数年間立ち上げて、完成まで見守っていくための職員の数の確保というか、今の時代仙台市もそうですが県図書館も人員の査定はとても厳しいのだと拝察する訳です。ただ、専任の職員がこういうことをやりませんと、やはり先ほどの専門の先生が常に相談しながら、優先順位を決めるなり、資料の方法もご相談しなければならないと思うのでそういう委員会を持たないといけないということになると、専門の職員でないと表題1つ読めないのでは、なかなかできないということになりますので、そのへんのスタッフを長期間十数年以上、場合によっては20年に亘って確保していただけるような、県の特段の知事のご理解を協議会でもお願いしなければならないと思っておりました。図書館協議会より、むしろ文化的なご専門の委員会も別に立ち上げられる必要もあるのかなと思います。将来的には、今伊達館長さんの方からお話のございました博物館との住み分けというのもなかなか仙台市の場合も分掌的には時々お話しなければならない案件が出てまいります。保存とか、貸出の場合、特に国のような重要な文化財になりますと移動に学芸員が付いていくことが、必須にされております。そうしますと図書館の方に学芸員を採用されるのか、多賀城の博物館の方に資料を保管転換されるのかといったような行政の縦割りの中での位置づけの問題などもきっと館長はお心を痛めていられるのだと思うんですが、そういった幅広い事業を成功させるための枠組み作りについて私としては心配しております。是非その点に関して、協議会としても前向きのご提言ができれば、またご理解をいただければいいかなと思っております。
    ○議長
    館長、何かいまのことについてコメントを。
    ○伊達館長
    個人的に親しい6、7人の専門家に協力をもらってますが、図書館に学芸員がいて、これをきちっと運営管理しなくてはならない。めんどうだから博物館に移せという考えもあるかと思うが、図書館に学芸員がいてもおかしくないと思う。図書館に立派な展示室もありますから、グレードの高い展示ができると思う。学芸員の確保についても考えなくてはならない。当然そうしないと、この話は進まない。
    ○奥山委員
    特に国宝級のものは、この資料にもございますように大変扱いが難しいと思う。展示についてのご指導をいただくことになりますので、そのへんを扱う人の確保というにのとても大変なことだと思います。
    ○議長
    指定された時の取り扱いの環境の問題は、温度何度とかというのがありましたが、それはまったく問題ないんですね。
    ○伊達館長
    一応条件はクリアーされているが、さらに完璧を期するため重要なものは桐の箱に入れる検討も必要だと思います。

    ○議長
    永野委員何かあればどうぞ。
    ○永野委員
    財政が逼迫してきますと、どこの県でもそうなんですが一番最初に切られるのは文化なんです。そういう意味で今回調査して、どれだけのお金と時間がかかるかわかりませんが、かなり膨大な費用が掛かるというのは明らかな訳ですから県の財政上予算化する上での、例えば今の段階で早急に基金を作るとかしていかないと、ある段階でこれだけ必要だと言っても、なかなかそれに対応しきれないことがでてくると思います。協議会としても今回の非常に貴重な資料を県民にとっても、まして世界的にも大きな遺産だということをはっきり打ち出して、人的なものも含む予算化を早急にして欲しい。

    ○議長
    館長、今までの議論を踏まえて何か。
    ○伊達館長
    これは将来残していかなければならないものだと思いますし、またたくさんの皆様に利用してもらわなければならないものだと思います。それで今図書館で、事務ベースで総額どれくらいお金が掛かるのかということを、50年後、100年後の図書館のイメージと重ね合わせ、そのためにはこれだけのお金が掛かりますということで、判断を仰いでいきたいと思います。
    ○永野委員
    県民に公開する方法なんですけれども、とかく奥山委員がおしゃっておられましたが、県の場合縦割り行政の弊害といいますか、もちろん図書館で公開するのもよろしいんですけれども、美術館とか博物館とかいろんな公開の仕方がある。ところが今の状況をみてますと博物館で提供するという仕方になるんですかね。ただ学芸員の考え方によっては、例えば岩手県立美術館のシーボルトの植物を県立美術館で公開してきたということがあるものですから、従来の公開の各機関の枠にとらわれないで、どういうふうにすれば一人でも多くの県民に見てもらえるかということも念頭にいれて、やっていただきたいと思っています。
    ○議長
    場合によっては、美術館・博物館に移管する。
    ○永野委員
    移管というのは別問題として、こちらの場合はスペシャリストが居られる訳ですからそれはそれでいいんですが、公開をするという段階において、例えば今の県の美術館のやり方ですと公開するものの範疇を非常に狭めて考えているように窺える。県民にとっては保存状況さえよければいいわけでして、美術館だろうが、博物館だろうが、そこの枠は関係ない訳です。その辺を考慮していただきたい。
    ○伊達館長
    この図書館は、かなりの展示スペースがございます。また年間60万人の来館者があります。ここで企画展をやっても十分お客さんが入りますし、図書館の顔というものを理解していただけるのだと思っております。
    ○板橋部長
    図書館は無料で展示している。博物館や美術館については有料で展示しているものもございますし、その辺も十分検討しながらやっていかなければならないと思っております。
    ○伊達館長
    今、仙台市博物館や県の博物館ではテーマ毎にやられていますので、必要に応じてこちらも随分貸出ししています。
    ○梶委員
    図書館も有料にしてもよろしいのですよね。
    ○早坂次長
    図書館法はすべて無料でとなっています。
    ○議長
    サービス面での有料化というのは検討されているのでしょうか。
    ○奥山委員
    特定の何かデジタル資料をその人に版権みたいな形で何かに使うのに提供するのは課金してもよいとか、ちょっと極端な例ですが、課金する場合もありうる。例えばインターネットで有料データベースにアクセスしたら1回につきいくらという課金はしてもいいと言われてますが、現実にはそれも含めてほとんど課金しているという例は、せいぜいコピーで1枚10円だといってるくらいで、それ以外の歳入はほとんどない。
    ○二瓶委員
    今見せていただいてとてもデザイン的にすばらしいので、全部図書館は無料なんですけれども、基金のためにも積極的にデザインを売るとか、営業的に出版してもらえれば子供達にも見てもらえる。そういう積極的活用を図っていけたらいいのかなと思いました。
    ○伊達館長
    10月末か11月に来年度のカレンダーにこれを作って図書館のアピールをしたいと思っております。
    ○議長
    県のカレンダーですか。
    ○伊達館長
    図書館の機械で印刷、試作してみる手作りカレンダーです。
    ○関口委員
    宮城県はすごい財産を持っているのだと驚きがありました。それを結局は、どう財産として県民に認識してもらうか。ようするに見せ方だと思うんです。とても大事なものは非公開でいいと私は思っています。しかし、その非公開にするためには、いっせいに公開しなければ、こんなに大事なものなんだから特別今回は公開するけれども、後はもう別な見せ方になるかもしれないというようなもって行き方は、当然だと思います。その時に永野委員がおっしゃっていましたけれども、いっせいに宮城県の保存のよい、なおかつ展示がちゃんとできるような施設をリストアップする。そこに例えば1点とか、2点とかものすごい宝なので、それしか貸せないというふうにする。県74市町村ありますがそれによって、その地域の保存能力の見直しがされる。それによって県の中がグルグル動いて人が移動する訳ですよね。県の美術館とか、市の博物館とか、県の博物館とかというレベルでなく、もうちょっと渦を起こすきっかけになると私は思います。それをどのように産業化するかというのは賢い県民がたくさん居る訳ですから。それを産業化することによって、基金にお金がどれくらい入るかはまた次の段階と思っています。まずはとりあえずとてもすごい誇りうるものがあるんだということを、もうちょっと知らせないといけないのかな。そのためにもうちょっと話を吟味する必要があると思います。
    ○太田委員
    私も委員の皆様のおっしゃっていることと同じ意見でございますし、本当に大事な事だと思います。そしてマイクロ化か、デジタル化かというにはその機能に応じて、あるいは予算に応じて、期間に応じてとかその形を今後強力に推進していただきたいと思う。できるだけできるところから、可能な部分からとにかく実施していくということになればいいのかなと個人的には考えています。それから公開、非公開についても、現在は情報公開の時代ですけれども貴重本についての取り扱いについての、県図書館条例というのは何かございますか。そういった観点から何かひとつの形を作っていくのもひとつの方策なのかなと思いました。是非保存修復をしていくことに賛成します。
    ○伊達館長
    はい、心がけたいと思っております。

    ○議長
    館長、何かまとめて何かございませんか。
    ○伊達館長
    是非折に触れて、県には貴重な資料があるということを、PRしていただければ幸いです。
    ○議長
    そろそろ閉めたいと思いますが、なにか意見ございませんか。図書活動のもっとも根源的な問題だと思います。後の残りの資料収集、あるいは県内の市町村図書館との関係については、次回以降話合うことになりますが、とりあえず今日は県立図書館の持っている資料の保存利用について議題としました。これで議事を終えたいと思います。
  1. その他
    ○議長
    その他事務局から何か。

    (事務局から次回の日程について提案があり、12月5日(木)午後1時30分から行うことで了承された。
  1. 閉会
    挨拶

    ○永野副会長
    まず、今日貴重な資料を見せていただきましたけれども、まさか県に6万点にも及ぶ貴重な資料が、この県図書館に秘蔵されているということに私も含めて多くの県民が、まだわかっていないと思っております。しかし、現状では原資料のまま保存され、マイクロ化が進んでいない。しかも、中には傷みが進んでいるものもあるということがあって、これはやはり、早急に対応していかなければならないと言うことで各委員とも認識は一致していると思います。今後、予算とかそういうものが伴うものですから、これについては、先ほど館長の方からお話があったように協議会としても、機会ある毎にアピールして、これは県民の財産であるとともに、まさに世界遺産であると思いますので、さらに進めていきたいと思っております。

    (司会者 櫻田重敏副参事が閉会を宣言した。)

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