宮城県図書館だより「ことばのうみ」第82号 2025年10月発行 テキスト版
おもな記事
巻頭エッセイ『私と本との出会い』 館長 大山 明美
私が、本と言えるものに出会ったのは小学校二年の頃、叔父から贈られた「そんごくう」だった。この痛快な冒険物語は私を夢中にさせ、何度も何度も読み返しながら、いつの間にか主人公に成りきっていた気がする。唯一の宝物であるこの本は、何十回、何百回と読まれて、ついには外函も含めてボロボロになってしまった。
そんな状況を見かねて、小学校四年の時に父が買ってくれたのは「学習百科事典全十巻」だった。歴史、地理から動植物、自然、芸術まで幅広い分野に、今まで見たことも聞いたこともない世界が広がっている。全ての巻をまるで物語でもあるかのように読み耽った。
テレビがない下宿部屋で一人過ごす高校時代の友は、「リーダーズダイジェスト日本語版」だった。娯楽から学術論文まで世界の主要な雑誌や単行本の要約の乱読によって、大きく世界が広がっていった記憶がある。大学に入ってから読んだ「光あるうち光の中を歩め」や「人生論」などからは、人間の根本的な問題を考えさせられ、自分の人生における主軸を学ぶことができたように思う。
この四月から図書館勤務となった。目の前には多くの本が並んでいる。読みたかった本、懐かしい本、そして初めての本。その都度感動を覚え、心が躍る。多くの皆様に図書館がそんな感動を味わっていただける場になればと考えている。
著者紹介
大山明美(おおやま・あけみ)
1961年 宮城県生まれ。
宮城県在職中、総務課など3回にわたり7年間教育庁で勤務。
2022年に宮城県を退職後、公益社団法人宮城県建設センター専務理事を経て、2025年4月から現職。
〈特集〉資料探しをサポートします!-レファレンスサービスのご案内-
宮城県図書館は、図書等約125万冊、新聞・雑誌等約2万5千余タイトルの資料*を所蔵しています。「その中から、知りたい情報が載っている資料をどのように探せばいいの?」という方のために、各カウンターでは資料探しのお手伝いをしています(レファレンス・サービスといいます)。 *数値は令和7年3月時点。
【1 宮城県に関することですか?】
・宮城県出身のマンガ家の著作を読んでみたい ・宮城県の地図はどんなものがあるの?
こんなときは❶みやぎ資料室のカウンターへ!
宮城県に関する資料を幅広く収集・保存しています。
- こんな資料があります……………………………………………
▶県出身、在住の人物・団体の著作物
▶県内の自治体の発行物 ▶県内の市町村史
▶県内の住宅地図 ▶旧仙台領(近世)に関する資料 等
【2 新聞や雑誌をご利用ですか?】
・3年前頃のを見たいです自分が生まれた日に起きた出来事を調べたいです ・野球の雑誌はありますか?
こんなときは❷新聞・雑誌・行政資料室のカウンターへ!
雑誌の特集記事や新聞記事を、日付やキーワードからデータベース等で検索できます。明治・大正・昭和の新聞記事は、マイクロフィルムで調べることもできます。
- こんな資料があります……………………………………………
▶新聞(全国紙、北日本の地方紙、専門誌等)
▶雑誌 ▶行政資料 ▶全国の電話帳(最新版のみ) 等
【3 子どもの本や子どもの読書に関することですか?】
・子どもの頃に読んだ本のタイトルが思い出せなくて… ・小学2年生の子供たちに読み聞かせをしたいけれど、どんな本がいいかしら
こんなときは❸子ども図書室のカウンターへ!
0歳から中学生までを対象とした絵本や紙芝居、児童文学や調べ学習のための資料等を収集・保存しています。
- こんな資料があります…………………………………………
▶児童書 ▶絵本 ▶児童向け新聞・雑誌 ▶紙芝居
▶中学生までの劇の脚本 ▶児童資料研究書 等
【4 CDやDVDをご利用ですか?】
・アイーダでカラヤン指揮のものはありますか? ・世界遺産をDVDで見たいのですが
こんなときは❹音と映像のフロアのカウンターへ!
CDやDVDなどを幅広く収集し、視聴覚資料の検索や音源、映像などに関する質問もお受けしています。
- こんな資料があります……………………………………………
▶クラシック音楽や朗読等のCD ▶昭和、平成映像記録DVD
▶子ども向けのCDやDVD 等
【5 ①~④以外のことや「とにかくわからない!」場合は…】
・①~④以外と思われるときや、どこのカウンターに行ったらいいのかわからないときは
❺調査相談コーナーのカウンターへ!
お話を伺ってご案内します。お探しの資料が見つからない場合は、お気軽におたずねください。どこにあるか、同じような内容の資料があるか等をお調べしてご案内します。
- こんな資料があります……………………………………………
▶各分野の辞典・事典類 ▶JISハンドブック
▶日本各地の地形図【国土地理院発行】
こんなときも…(その1)
【宮城県図書館に探している資料がない!】
・他の図書館の本も借りることができる -相互貸借サービス-
当館で所蔵していない資料は、県内の公共図書館から無料で取り寄せることができます。資料によっては県外の公共図書館から取り寄せることもできますが、その場合は送料を切手でご負担いただきます。
相互貸借サービスの申込は、左頁⑤の調査相談カウンターへ!
・デジタル化した資料を画面で見ることができる -国立国会図書館の「デジタル化資料送信サービス」-
国立国会図書館がデジタル化した資料のうち、絶版などの理由で入手が困難になった約232万点の資料(令和7年6月現在)を公共図書館で閲覧・複写ができるサービスです。
なお、著作権保護期間が満了した資料、著作権者の許諾を得た資料等については、インターネットを通じて本文の画像が公開されており、どなたでもご自身の端末で閲覧することができます。
当館でのご利用については、左頁の①~⑤のカウンターすべてで申込を受け付けています。
- ご利用には、当館の利用者カードが必要です。
- 著作権の規定に基づく範囲内で、プリントアウト(有料)が可能です(操作は当館職員が行います)。
- データのダウンロードや、端末の画面コピー及び写真撮影等はできません。
前述した“インターネット公開”資料については、どなたでもご自身の端末等から利用することができます。
こんなときも…(その2)
【自分で調べたり、探したりしたい!】
・資料検索端末(館内OPAC)
館内の資料を検索するための専用の端末です。検索して目的の資料を探したら印刷ボタンを押し、出てきた資料請求票で資料を探すことができます。
・調べ方案内(パスファインダー)
この「調べ方案内」は、各号一つのテーマをとりあげて調べ方のコツやヒントをお伝えしています。調べるときに便利な資料や、調べ方の一例をご紹介していますので、調べたいことと合致しているものがあったら、ぜひ活用してみてください。
現在No.70まで発行しており、3階一般図書コーナー書架No.38~41の側面に設置しています。
・図書館使い方講座(データベース講習会)
「データベースで何が調べられるの?」「使い方が分からなくて…」という方に、毎年度操作講習会を行っております。実際にパソコンを操作しながら行い、キーボード入力が苦手な方は、職員がサポートします。
詳しくは調査相談カウンターへお問い合わせください。
図書館使い方講座~データベース講習会~(R7実施分)
❶使ってみよう! 新聞記事データベース(実施日 : 7/5 ・ 10/4)
❷使ってみよう! ジャパンナレッジ(実施日 : 7/12 ・ 7/19)
❸使ってみよう! 国立国会図書館デジタルコレクション(実施日 : 9/6 ・ 10/11)
❹使ってみよう! D-1law.com(法情報総合データベース)(実施日 : 9/20 ・ 11/1)
図書館 around the みやぎ
シリーズ第73回 仙台市若林図書館 館長 村上 佳子( むらかみ よしこ)
若林図書館は1993年の開館から32年、また、2015年に(株)ヴィアックスが指定管理者として運営管理を担ってからは10年が過ぎました。多目的ホールや公民館施設を併設する若林区文化センターのなかにあって多くの皆さまにご利用いただいています。
2024年~2025年にかけては設備面を中心に施設全体の大規模改修が行われました。工事期間中はご不便をおかけしましたが、この改修を機に図書館では館内のレイアウトを一部変更し、2階にYAコーナーを新設いたしました。若い世代に向けた図書を中心に約2,000冊を配架、明るい照明のもとでゆったりと読書や学習に向き合える席も設けました。改修の前年から図書館で活動する中高生のボランティアの募集を行っており、新たなコーナーの展示や読書案内の編集にもかかわっていただきます。
文化センターの近隣は、区役所をはじめ小中高の学校、子育て支援機関、社会福祉協議会などの地域施設があり区内の交流拠点となるエリアです。幅広い世代の方々に暮らしのなかで図書館を活用していただけるように蔵書の整備を進めるとともに、施設間の連携による講座なども開催し、皆さまに親しまれ信頼される図書館運営に努めています。
蔵書数/264,585点(2025年3月末現在)
開館時間/火~金9:30~19:00
土日休9:30~18:00
- 休館日/月曜日、休日の翌日、1月~11月の第4木曜日、年末年始 特別整理期間
住所/〒984-0827 仙台市若林区南小泉1丁目-1-1
TEL:022-282-1175
図書館員から読書のすすめ
『日本国語大辞典〔第二版〕』 小学館国語辞典編集部【著】 小学館【出版】
文学部国文学専攻で、初めに教わったことは、「日本国語大辞典」を引くことでした。研究室では、学生たちが書棚から1巻ずつ下ろしては、必要な語を探し出し、語釈や用法などを書き写し、再び書棚に戻すのを繰り返します。私たちは、「あ」から「ん」までで20巻ある大型辞典を「にっこくさん」と呼び、時には奪い取り、時には譲り合って手元に置いたものでした。
社会人となって数年後の平成12年(2000年)、第二版の発売が発表されました。全13巻、項目数約50万語、用例数約100万、引用文献約3万点。私は、「日本語を愛するすべてへ」というコピーに誘われ、また、「にっこくさん」を独り占めしたいという邪な思いに駆られ、購入を決めました。1月ごとに1巻ずつ書店から届けられ、手にすると、当てもなくページをめくり、読み耽ったのを覚えています。
それぞれの項目は、用例の示すところに従って時代を追って語釈が記述されています。用例には、出典が記され、その成立年(刊行年)が付けられています。ここが、小型辞典や中型辞典と異なるところです。それぞれの項目を読み進めていくと、古代から現代に至るまでの意味や用法の変遷、連続や変化を捉えることができます。
最終巻が届くと、約30ページに及ぶ編集後記とあとがきを、一気に読み通しました。「編集後記(初版)」は、「『日本国語大辞典』は、編集顧問、編集委員を中心にして大勢の協力者の参画を得、その叡智と熱意によって完成された」から始まります。そして、用例の収集、検討、校正・校閲、装幀・レイアウトなど、何段階もの工程に、数十の機関、数千の個人が携わっていることが、機関名や個人名をもって明らかにされています。彼ら・彼女らの困難と克服、執念と努力、ロマンとドラマを思い浮かべずにはいられませんでした。
今回、「第二版あとがき」を読み直し、最終章の「辞典は完成と同時に次の仕事が始まる」に目が留まりました。完成の喜びに浸るのも束の間、次なる高みに向かおうとする気概が述べられ、仕事とはそういうものなのだと深く共感しました。他方で、変化の激しい時代に、国語辞典は更新し続けていくのがよいのか、国語辞典の完成とは何か、考えさせられました。
令和6年7月、発行元である小学館が30年ぶりの大改訂に着手し、2032年の刊行を目指すと発表しました。デジタル技術や情報ネットワークを活用し、専門家に加え読者の参画によって、第二版よりも古い用例を収集し、第二版にない新しい項目を補強していくとのことです。図書館に身を置く者として、何かしらの用例や語釈を投稿し、掲載されたら幸いと、日本語への感度を上げていこうと心を新たにしました。
(資料奉仕部長)
図書館からのお知らせ INFORMATION
■企画展「宮城県図書館における16ミリフィルムの整備と保存」
皆さんは「16ミリフィルム」を御存じでしょうか?
かつて16ミリフィルムを使った上映会はありふれた光景でしたが、今やフィルムもそれを映す機械もほとんど見ることがなくなりました。
近年の視聴覚機器の移り変わりは急速で、ビデオテープから_DVDへ、そして動画配信サービスなどへと大きく変化してきました。見たい映像をその場ですぐに高画質で見られる。そんな時代だからこそ、映写機で映し出される16ミリフィルムの映像からは、温もりや味わいを感じるものです。
一方で、昔のフィルムには当時の貴重な映像が記録されています。16ミリフィルムは昔の様子を知ることができる記録メディアの役割も果たしていると言えます。
本企画展では、当館で所蔵している約2,200本の16ミリフィルムの整備と保存について、実際のフィルムや映写機などを展示して紹介します。
本企画展をとおして、16ミリフィルムの魅力やおもしろさと同時に、貴重な映像を後世に受け継いでいく意義についても感じていただければ幸いです。
皆様の御来場を心よりお待ちしております。
●期間 令和7年9月6日(土)から
令和7年11月30日(日)まで
●場所 宮城県図書館2階 展示室
●お問合せ 音と映像のフロア(022-377-8446)
この「ことばのうみ」テキスト版は、音声読み上げに配慮して、内容の一部を修正しています。
「ことばのうみ」は、宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第82号 2025年10月発行。
