宮城県図書館だより「ことばのうみ」第7号 2001年3月発行 テキスト版
おもな記事
- 表紙の写真
- 表紙エッセイ 「黙の豊饒」 作家 辺見庸
- 特集 図書館はビジネスにも役立つ
- 図書館 around the みやぎ シリーズ第3回 小牛田町図書館(近代文学館)
- 貴重書の世界 「仙台府学養賢堂図」(せんだいふがくようけんどうず)
- わたしのこの一冊 長田洋子ほか著「東北婆ばっぱ烈伝」
- 図書館Q&A
- 図書館からのお知らせ
表紙の写真。
今回は、宮城県図書館展示室の写真です。常設展のテーマは「本と人の文化史からアジア・日本を中心にから」です。
図書館アートシリーズ その4。
今回は宮城県図書館地形広場「ことばのうみ」中央にあるアトラクター(Attractor)です。
表紙エッセイ 「黙の豊饒」 作家 辺見庸さん。
「十の口に上らんよりは、あはれ一の胸に上らん。朗讀せられんよりは、黙讀せられん」と書いた齋藤緑雨の気持ちが、若いころ、腑に落ちなかった。書いたものは、たくさんの人が声にして読んでくれたほうがよっぽど嬉しかろうに、と思った。日々に読みかつ書く身になったいま、緑雨の心持ちがわかる気がする。詩や文のよき朗読は、それはそれ、耳に心地よいけれども、他者の声に想像が限定される。自分で音読すると、地声に心が萎える。唱和はさらに気味がわるい。言葉は、やはり、個々人が胸中に溜めた沈黙の闇にこそ、じつによく舞い、じつによく泳ぐのである。
では、十の口より一の胸に上らん、という願いはどうだろう。売れない物書きのつよがりだろうか。いや、万人の口に唱えられるより、無告の読者の、胸底の最暗部に達する言葉を紡ぐのが、書く側の真骨頂なのだ。そのような文は、たぶん、音読になじまない。言葉が沈黙を負うているからだ。黙こそ饒舌である。
著者のご紹介。
へんみ・よう。作家。1944年宮城県石巻市生まれ。早稲田大学文学部卒。共同通信社に入社、北京特派員、ハノイ支局長、外信部次長、編集委員等を経て1996年退社。1978年中国報道で日本新聞協会賞受賞。1991年『自動起床装置』で芥川賞受賞。1994年『もの食う人びと』は90万部を越すベストセラーとなり、講談社ノンフィクション賞、JTB紀行文学大賞等を受賞。他に『ハノイ挽歌』『不安の世紀から』『目の探索』等、著書多数。
特集 図書館はビジネスにも役立つ。
図書館はビジネスにとっても情報と知恵の宝庫-。企業経営を取り巻く環境が激しく変化するなかで、ビジネスに携わる人々は素早く情報を手にし、その価値を的確に判断したり、それを生かすことが求められています。図書館は利用のコツが分かれば、ビジネスのさまざまなシーンにおいても、強力な味方になるのです。今回は、ビジネスに役立つ図書館利用のヒントについて特集します。
ビジネスマン&ウーマンのための図書館利用術
新聞を閲覧したり検索する。
全国紙、地方紙、経済紙、専門紙など、合わせて約50紙が閲覧できるようになっています。地方紙は、北海道と東北6県を網羅しています。河北新報については、河北新報記事 データベースのオンライン記事検索を無料で利用できます。4月からは、朝日新聞もオンラインで調べられるようになります。CD-ROMで記事検索ができるのは、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日本経済新聞、日経産業・金 融・流通新聞です。これらについては縮刷版も収蔵しています。詳しくは3階 調査相談カウンターまたは新聞・雑誌室へどうぞ。
雑誌記事を調べる。
館内で閲覧できる雑誌類(紀要を含む)は約2600タイトルで、あらゆるジャンルに及んでいます。学術雑誌や大学の研究紀要などもあり、国立国会図書館で編集・発行の『雑誌記事索引CD-ROM版』が調査の手助けとなります。週刊誌等のポピュラーな雑誌であれば『大宅壮一文庫雑誌記事索引CD-ROM版』(同 文庫編著)がよく利用されています。また、本館では独自に主要雑誌の目次をファイリングしています。詳しくは3階新聞・雑誌室へどうぞ。
専門誌、学会誌、研究紀要を読む。
一般には販売されていない技術情報誌、学会誌、研究紀要なども数多く収蔵しています。技術情報誌は、企業の公開された技術情報などを掲載したもので、研究者や学生だけでなく企業の技術担当者、営業担当者にとっても、商品の知識や開発動向情報を得ることができるツールです。たとえば『トヨタ技術公開集』(同社)、『NEC技報』(同社)、『富士通ジャーナル』(同社)などがあります。詳しくは3階 新聞・雑誌室へどうぞ。
統計・行政資料を調べる。
政府統計では『国勢調査報告』(総務庁)、『農業センサス』(農林水産省)、『商業統計表』(通商産業省)など各省庁発行の資料を収集し、継続的に最新版に更新しています。『経済白書』(経済企画庁)、『環境白書』(環境庁)等もあり、行政資料は約1300タイトルを所蔵しています。民間統計では、『業種別業界情報』(経済情報出版社)、自治体のプロジェクト情報等も収録した『都市データパック』(東洋経済新報社)、『民力』(朝日新聞社)等の年報類も約500タイトルを開架しています。検索には『統計情報インデックス』(総務庁)が便利です。詳しくは3階 新聞・雑誌室へどうぞ。
宮城県関係の統計・行政資料なども充実。
『宮城県統計年鑑』などの県関係の統計・行政資料も約1800タイトルを収集。宮城県と仙台市の条例集、県や各市町村の長期総合計画、広報誌、県関係の入札公告等を掲載した『宮城県 公報』も閲覧できます。詳しくは3階 みやぎ資料室へどうぞ。
全国の企業情報を探す。
宮城県はもちろん、全国50万社の企業情報がCD-ROMで探せます。CD-ROMの『TSR企 業情報ファイルCD・Eyes』(東京商工リサーチ)は館内のパソコンで利用できます。図書資料では『帝国データバンク会社年鑑 東北版』(帝国データバンク)、『みやぎの10,000 社』(河北新報社)等もあります。詳しくは3階調査相談カウンター、新聞・雑誌室、みやぎ資料室へどうぞ。
ビジネス書・専門書を利用する。
ビジネスに携わる方々は、キャリアアップ、スキルアップをテーマにした、いわゆる「ビジネス書」の利用が多いようです。たとえば、企画書の書き方や決算書の見方、資格の取り方等の図書ですが、これらは3類の書架にあります。マーケティング関係は6類になります。工業技術関係の専門書もよく利用されますが、これらの図書は5類に並べてあります。また、社史も多数所蔵しています。各社の商品のあゆみを調べたり、経営のヒントを探ることができるかもしれません。本を探すときは、館内の検索用パソコンをご利用いただくか、カウンターにご相談ください。詳しくは3階 一般図書室へどうぞ。
法律、判例などを調べる。
『電子版現行法規』(第一法規出版)、『判例体系CD-ROM』(第一法規出版)はキーワード等での検索機能が充実していて便利です。このほか『模範六法』(三省堂)、雑誌では『ジュリスト』(有斐閣)、『判例時報』(判例時報社)なども取り揃えています。判例は代表的な判決内容で、法解釈の参考になります。また法律の公布、政令などは『官報』に掲載されており、慶応4年(1868)の『太政官 日誌』第1号からマイクロフィルムで収蔵しています。詳しくは3階 調査相談カウンターまたは新聞・雑誌室へどうぞ。
もっともっとビジネスに。
資料探しで困ったり、詳しく調べたいことがある場合には調査相談カウンター(レファレンス)にご相談ください。調査の内容によっては、それぞれの専門機関を紹介するなどして、ビジネス関係の利用者をサポートします。今後もビジネス関係資料の充実に努めます。お気軽にご相談ください。 詳しくは3階 調査相談カウンターへどうぞ。
本探しは分類番号を手掛かりに。
図書は「日本十進分類法」により、社会科学、技術、産業等の主題で分類し、各々3類、5類、6類など、0から9の分類番号を付けて番号順に書架にならべています。分類番号は、図書の背表紙に貼ってあるラベルの一段目に記入されています。
情報価値の発見になくてはならない「場」 経営デザイン研究所代表 川村志厚。
私は東北の田舎町に生まれ育ちました。そこには明治時代に建てられた洋館風の図書館がありました。その建物の瀟洒な外観と重厚な内部の雰囲気が大好きでした。30代になって、イギリスのハートフォードシャーに家族で暮らしました。
人口6千人ほどの村でしたが、充実した図書館があり、我々外国人も自由に利用できました。イギリスに限らず、ヨーロッパを訪れると、小さな町や村にも立派な図書館があり、コミュニティの重要な機能を担っていることに驚かされます。
現在、私はビジネスの最前線で働いているつもりです。仕事柄、ビジネス関係の方々と一緒に仕事をさせていただく機会がたくさんあります。情報過多ともいわれる時代、驚くほど物知りの方々がビジネスの世界でも随分増えてきています。
しかし、ビジネスの本質に迫る洞察力をもつ方々は逆に減っているのではないかという気がしてなりません。単に知識だけある人と、知恵も備えている人とでは、ビジネスの結果に大きな開きが生まれます。ビジネスに関わる情報自体(知識)に価値があるわけではなく、情報から新しい価値を発見すること(知恵)にビジネスの醍醐味があるからです。
図書館は、ビジネスの情報価値を発見し(企画のプロセス)、それら情報を体系的に解釈し(編集のプロセス)、解釈した情報を表現する(デザインのプロセス)、という一連の価値創出活動になくてはならない「場」なのです。その価値創出活動は、仮説構築-検証-仮説再構築の繰り返しによって妥当性が確認されていきます。
この知恵を獲得する王道は、哲学、歴史、地理、科学の基本的な文献を熟読することにあるというのが私の持論です。カレントなフロー情報も大切ですが、ストックとなり得る情報から知恵が育つのです。
図書館が、各種統計資料、年鑑、報道記事等、ビジネス情報の宝庫であることはもちろんです。ビジネスに携わる人々が、図書館をより多くの機会に活用されることを望みますが、図書館もこうしたビジネス関係のニーズに応える機能や資料を、ますます充実させて欲しいものです。
寄稿者のご紹介。
かわむら・しこう/経営デザイン研究所代表。1939年山形県生まれ。東北大学法学部卒。金融機関、外資系コンサルタント会社等に勤務し、ヨーロッパ等においてビジネスの第一線で活躍。1996年から現職。仙台市産業振興事業団の起業化支援アドバイザー、中小企業・ベンチャー支援センターのチーフアドバイザー等を務める。
利用者にインタビュー。
専門書や技術情報誌で最新情報をチェック 会社員佐藤 潤さん(仙台市)
ハイテク機器の包装材を作る会社で、営業を担当しています。図書館に足を運ぶのは、専門書で素材について調べたり、技術情報誌で技術開発の動向などを読みたいと思うときです。お客さまは皆、専門家の方ばかりですので、普段からの情報収集は欠かせません。
もちろん、営業ですので、企業情報にもよく目を通しますね。パソコンで検索できるので、とても便利です。
正確な知識がないとプロでは通用しないのです スタイリスト 浅利優子さん(仙台市)
広告や雑誌の写真撮影の仕事が多いのですが、その下調べに、図書館をよく利用します。たとえば、「端午の節句」が撮影のテーマであれば、その歴史や各地の祝い方の違いなどを調べるといった具合です。自分の思い込みや感覚でコーディネートするだけでは、プロとしては通用しないんですね。
図書館にはたくさんの資料があるので、私には頼れる味方です。
図書館 around the みやぎ シリーズ第3回 小牛田町図書館(近代文学館) 館長 安彦淑子。
小牛田町では1985年より、移動図書館「こばと号」が運行されており、それを引き継いで1990年に「小牛田町近代文学館」として開館しました。図書館・町民ギャラリー・千葉亀雄記念文学室注意:の複合施設です。
図書館は蔵書冊数約11万冊で規模は大きくはありませんが、町民に親しまれ、頼りにされる図書館を目指して活動してきました。きめこまかなサービスと親切な対応が看板です。週2回のおはなし会をボランティアの方々と共に開催したり、学校と連携して子どもたちの読書や学習の要求に応えるなど、児童サービスに力を入れてきました。また、障害のある方や高齢者の方へのサービスも大切に考えており、宅配サービスや福祉施設での出前貸出なども行ってきました。
情報の過疎地になりがちな地方の町だからこそ、インターネット上でのOPAC(Online Public Access Catalogの略、オンライン利用者用目録のこと)の開放、自由にインターネット接続できるパソコンの設置、CD-ROMの導入など情報化の時代に対応するように取り組んでいます。一人でも多くの町民に利用され、一人ひとりの要求に応えられるようカウンター等での会話を基本に、今後も親切な図書館を目指していきます。
千葉亀雄(ちば・かめお)/1878から1935年。明治から昭和初期にかけて活躍したジャーナリスト、文芸評論家。読売新聞編集局長等を歴任。著書に『明治時代の文学』『ペン縦横』など。山形県生まれ。宮城県小牛田町で幼少から青年期を過ごす。
小牛田町図書館(近代文学館)のご紹介。
- 開館時間:10時から18時。
- 休館日:毎週月曜日、祝日(月曜日が祝日の場合は 翌日振替休館)、年末年始 毎月第1木曜日 特別整理日。
- 交通案内:JR小牛田駅から徒歩10分。
- 図書館のデータ。
- 蔵書冊数:115,440冊(平成12年3月31日現在)。
- 貸出冊数:180,993冊(平成11年度実績)。
- 住所:郵便番号987-0005 遠田郡小牛田町北浦字待江98。
- 電話番号:0229-33-3030。ファクス番号:0229-33-3010。
時空をこえて 貴重書の世界 仙台府学養賢堂図(せんだいふがくようけんどうず)。
江戸時代に入り、世の中が平穏になってくると、諸藩は藩士の子弟に文武両道の教育を施す藩校(学校)を作るようになった。仙台藩の藩校は「養賢堂(ようけんどう)」と呼ばれる。五代藩主伊達吉村の時、元文元年(1736)に仙台城下北三番丁の一角にある武家屋敷をもとにして開いたのが起源という。その後、宝暦10年(1760)に北一番丁勾当台(こうとうだい)通り、すなわち現在県庁のある付近の地に移転となった。
さらに、文化14年(1817)頃には校舎の大拡張工事などが行われ、藩校養賢堂は大いに充実し、発展していった。
写真はその養賢堂の図である。2幅の「軸もの」から成り、彩色されている。平面図には、建物やその内部の名称などが記され、側面図には建物の様子などが絵画のように描かれている。
図を見つめていると、勉学や武芸にいそしんだ当時の諸生(生徒)の姿や声がこちらに迫ってくるような気にさせられる。
わたしのこの一冊 『東北婆ばっぱ烈伝』長田洋子ほか著 北燈社 2000年
心の光放つ「婆っぱ」の人生 仙台市 黒田 四郎。
今年は21世紀の最初の年。私たちはこれからの人生を有意義に過ごそうと考えたりするものだが、これにふさわしい本が、昨年、出版された。仙台の長田洋子さんと、郡山の三田公美子さん共著の『東北婆っぱ烈伝』である。
この本は新潟を加えた東北7県で、社会活動に情熱を傾け、会社経営に活躍した女性の方々の素晴らしい人生記録である。
「婆っぱ」とは、福島県や宮城県で「おばあさん」のことを言い、親しみと敬意を込めた言葉で、「烈伝」は本来「列伝」だが、その潔い生き方から烈伝としたと著者は書いている。
烈伝の方々には人生哲学がある。ある方は「一つの事がどうしてもできなくてもこつこつと頑張っていると、ある時、突然できるようになる」と。
また、心温まる感動的な話もある。ある旅館の女将が、増築を担当した老棟梁とその奥さんを2泊3日で招待した。その時、老棟梁は女将にこう申し出たという。「14歳で見習いとなり、57年間に1千万円貯まった。あなたならきっと生かせる。私の1千万を使ってくれないか」―。
私は、烈伝の方々が大変いい顔で、美しい心の光を放っておられるから、21世紀の初頭にふさわしい本だと思った。
図書館 Q&A。
展示室では、どのような企画展が計画されているのですか。
今年は本館開館120年にあたり、これを記念して6月から8月まで企画展『青柳文庫展』を開催する予定です。青柳文庫は江戸時代、青柳文蔵(あおやぎ・ぶんぞう/1761-1839年)が自分の蔵書と維持費を仙台藩に献じて、天保2年(1831)に開設された文庫です。庶民にも利用が認められ、藩が運営にあたったことから、公共図書館のさきがけともいわれています。その蔵書の一部は本館に引き継がれました。
なお、常設展として「本と人の文化史」を中心に、『坤輿万国全図(こんよばんこくぜんず)』(国指定重要文化財)など、学術的にも価値の高い本館所蔵の貴重資料等を公開しています。
図書館からのお知らせ。
- 「県庁文書」(明治・大正・昭和期の県関係の公文書)は、今年の4月21日開館予定の「宮城県公文書館」(仙台市宮城野区の旧県図書館跡)に移管されました。
- 「インターネットでの蔵書目録検索」は、準備中です。詳しくはホームページ等でお知らせします。
- 4月からレストラン「サルーサ」(1階)がオープンします。
この「ことばのうみ」テキスト版は、音声読み上げに配慮して、内容の一部を修正しています。
特に、句読点は音声読み上げのときの区切りになるため、通常は不要な文末等にも付与しています。
「ことばのうみ」は、宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第7号 2001年3月発行