宮城県図書館だより「ことばのうみ」第50号 2015年3月発行 テキスト版

おもな記事。

  1. 巻頭エッセイ 『仙台のベーブ・ルース』 吉岡徹也
  2. 震災の記録の継承と新たな提供の試み
  3. 【県図トピックス】 平成26年,秋の読書関係各賞――宮城県からの受賞者紹介
  4. 図書館 around the みやぎ。
  5. 図書館員から読書のすすめ。
  6. 図書館からのお知らせ

巻頭エッセイ 『仙台のベーブ・ルース』吉岡徹也

 仙台市八木山動物公園に入りますと、程なく「ベーブ・ルースの銅像」を目にします。かってヤンキースに在籍、「野球王」と呼ばれたベーブ・ルースの像です。ご存じのように、ヤンキースには現在、元楽天イーグルスの田中将大投手が在籍しています。
 ルースは、日本に一度だけやって来たことがあります。一九三四年(昭和九年)の秋、全米選抜チームの一員として来日しました。日本で東京六大学のOB選手を主体とした全日本チームと十八試合行ない、全勝して帰国しました。
 この時ルースが日本での待望の初ホームランを放ったのが、第四戦の十一月九日、今の動物公園にあった八木山球場だったのです。
 その記念日、二〇〇二年(平成十四年)十一月九日、ホームランの落下地点で像の除幕式を行ないました。私も、像建立の発起人の一人でした。
 第二次大戦中、日本の野球は一時中断され、多くの選手が戦場で亡くなりました。このベーブ・ルースの像には、野球が出来る「平和のシンボル」としての意味合いも籠められています。
 今年の十二月六日、仙台市地下鉄の東西線開業が見込まれ、「八木山動物園駅」が終着駅となります。この時期に、ベーブ・ルース像建立の経緯を詳しく紹介する本を完成させようと思っています。お子さんにも分かり易く表現する積もりです。本のタイトルは『仙台のベーブ・ルース』。その節は、ご一読頂けましたら幸いです。

著者のご紹介。

吉岡徹也(よしおか・てつや)略歴
1959年 東北放送へアナウンサーとして入社。
1973年 東北以北での初ナイター「ロッテ-近鉄戦」をラジオ中継。
1996年 東北放送を定年退職。
2000年~2002年 「ベーブ・ルース像」建立に尽力。
現在は、コミュニティーFMで川柳番組「川柳575便」を担当中。
TBCアナウンス学院講師。
座右の銘・・・「言葉は人なり」

▲ページの先頭へ戻る。

震災の記録の継承と新たな提供の試み

東日本大震災文庫と「東日本大震災アーカイブ宮城」(仮称)

 東日本大震災から4年が経過します。宮城県図書館では、震災に関するさまざまな記録を収集・整理し、利用者の皆さまにご利用いただけるようにしております。震災による被害の記録や体験記はもちろん、復旧・復興への確かな歩み、震災を契機に始まった防災・減災への取り組み、再び立ち上がった、あるいは新たに生まれたコミュニティで提供される情報も、震災に関わる記録であり、故郷の大事な記憶です。
 本号では、これまで収集した記録の一部をご紹介しながら、あらためて東日本大震災からこれまでを振り返り、宮城県図書館における資料収集・整理状況をお知らせします。
 また、県図書館の主導により、県と県内市町村とが連携して、それぞれがこれまで収集または作成した震災関連記録を、デジタル化してインターネットにより広く発信するためのアーカイブシステムを構築してきました。本年3月上旬の稼働に向けて作業を続けているアーカイブシステムについてもご紹介します。

震災関連資料の現在の収集・整理状況

 宮城県図書館ではこれまで、震災関連資料として図書3,117冊、雑誌1,091冊、新聞27点、視聴覚資料47点を収集しました(平成27年1月末現在)。特に図書や雑誌は、図書館3階東側の新聞・雑誌室の一画に「東日本大震災文庫」として書架3本に配架し、どなたでも手に取ってご覧いただけるようにしております。また、資料は複数収集することにより、貸出用資料を別に配架し、あわせてご利用いただけるようにしております。
 チラシやポスターといった、1枚で情報が完結する資料は、4,500点収集しました。これらの一部はファイルに収めてご覧いただけるようにしておりますが、未整理のものもあるため、順次整理をすすめて早期にご覧いただけるようにしていきます。

収集時期により変化してゆく資料の内容

 震災直後から1年の間に収集した資料の内容を俯瞰すると、震災による被害、被災の体験、避難所での運営といった記録が主となっています。記録集の多くは、震災の状況を写真とともに伝えることで、悲しみのなかから立ちあがる人々を取り上げています。また、被災した人々がそれぞれの体験を文字にし、多くの人々の共感を呼びました。さまざまな分野の専門家による地震・津波への解説が出され、あらためて東日本大震災の全容が明らかにされていきました。震災から2年目以降になると、震災を契機に防災・減災への新たな考え方、取り組み、方法が論じられるようになっていきます。このことは特に、今後同規模の被害が想定される地震や津波だけではなく、火山噴火などの他の自然災害に対しても高く意識されるようになっていきます。

今後の取り組み-アーカイブシステムの構築

 宮城県図書館では平成25年度から、総務省による補助事業として、県内33市町村と連携して、これまでに収集または作成した震災関連の30万点を超える資料を選定し、資料の権利者(著作権者等)の許諾を得てデジタル化し、インターネットで公開するアーカイブシステム構築に着手しました。このシステムを使って、デジタル化された資料をインターネットにより広く発信し、利用者にいつでもどのような場所でも情報を提供できるようにするため、県庁各部局、公立学校、公立病院、県内社会福祉協議会にも広く呼びかけて資料を収集しました。また連携する市町村にも、各役場等で作成・撮影した資料を提供していただきました。
 日本全国に東日本大震災に関するデジタルアーカイブが多数存在しますが、自治体が広範囲に連携してアーカイブを構築するという事例は初めてのものとなります。また、国立国会図書館が運営する東日本大震災デジタルアーカイブ「ひなぎく」と連携することにより、一元的に震災関連資料を見ることが可能となります。
 宮城県図書館では、これまで試験稼働を行うなど、本年3月上旬の稼働に向けて作業を進めています。このアーカイブを多くの方々にご覧いただき、あらためて東日本大震災の被災状況、県内各地の復旧・復興の足跡を知っていただこうと考えています。このことは、今後の防災・減災のための新たな創造と計画に資することを目的としており、宮城県内だけではなく広く全国に発信して利用していただきたいと考えています。また「見る」アーカイブから、「使える」アーカイブとして、復興計画、防災計画、これからの災害に強いコミュニティづくり、まちづくりに活かしていただきたいとも考えています。


 『宮城の記憶アーカイブ』(仮称)3月上旬稼動に向けて

 前のページでもお伝えしましたとおり、県内33市町村と連携して、震災関連資料をインターネットから見ることのできる『東日本大震災アーカイブ宮城』(仮称)を平成27年3月上旬の稼働に向けて作業を続けています。
 本アーカイブでは、宮城県及び県内33市町村で収集・保存している震災関連の文書・写真資料などを高精細画像で保存し、検索・閲覧することが可能です。
 また、ここに掲載された資料を、地域や学校における防災教育等に活用することも可能です。
 なお、具体的な公開日は、本館ホームページにて、決まり次第お知らせします。
 アクセスURLは、
https://kioku.library.pref.miyagi.jp/
となります。
 震災記録の伝承にぜひご活用ください。

▲ページの先頭へ戻る。

平成26年,秋の読書関係各賞――宮城県からの受賞者紹介

 毎年,秋の「文字・活字文化の日(10月27日)」や「読書週間(10月27日~11月9日)」にちなんで,関係団体が主催し,読書活動の推進や図書館活動の発展に貢献された方々を表彰している各賞について,平成26年の受賞者の皆様をご紹介します。

○第8回「朝の読書大賞」は,柴田町立船岡中学校が受賞されました。

 この賞は,公益財団法人高橋松之助記念顕彰財団が平成19年に創設し,文字・活字文化振興法の理念に則り,読書推進と文字活字文化振興に貢献し,顕著な業績をあげた学校及び地方公共団体,団体,個人を顕彰しているもので,10月27日の表彰式では,全国から小学校,中学校,高校が各1校ずつ表彰されました。
 柴田町立船岡中学校は,10年程前から朝読書に取組み,落ち着いた雰囲気のなかで学習に向かう姿勢を育ててきました。平成25年からは,柴田町図書館から司書が派遣され連携した取組により,学校図書館の利用者数が増加するなど,地域の模範となる活動を行っています。
 ※出典:「公益財団法人高橋松之助記念顕彰財団」ホームページ掲載「受賞者決定のお知らせ」(http://www.takahashi-award.jp/award/08/index01.html)(リンク切れ)

〇第44回野間読書推進賞は,成田和子さん(多賀城市)が受賞されました。

 この賞は,公益社団法人読書推進運動協議会が秋の「読書週間」の一環として昭和46年に創設し,永年読書の普及に貢献してきた団体,個人を顕彰しているもので,11月7日の表彰式では,全国から3団体,個人4名が表彰されました。
成田和子さんは,読み聞かせ活動の一方,平成15年に多賀城市立図書館ボランティア連絡会を結成し,読書活動の推進と市立図書館の支援活動を行ってきました。東日本大震災ではご自身も罹災されましたが,避難所で絵本の読み聞かせ活動を続け,市立図書館で「青空おはなし会」を開くなど,子どもたちのために献身的にボランティア活動を続けてきました。
※出典:『読書推進運動No.565』(読書推進運動協議会,平成26年12月15日発行)

〇第100回全国図書館大会記念「図書館を支援する個人・団体等への感謝状」が,白石市図書館ボランティア,仙台朗読奉仕会の会,鵜飼信好さん(仙台市)に贈呈されました。

 10月31日には,第100回全国図書館大会(東京大会)を記念して,公益社団法人日本図書館協会から,図書館の活動を支援し,図書館文化の普及に牽引力となっているとして,全国103団体(個人を含む)に対して感謝状が贈られました。
本県では,白石市図書館ボランティア,宮城県図書館読み聞かせボランティア指導員・鵜飼信好さん,仙台朗読奉仕の会が表彰されました。 
また,東日本大震災で被災した図書館の支援活動を行った団体では,saveMLAKと公益社団法人シャンティボランティア会,外国団体では「どんぐり・アンみんなの図書室」(名取市図書館)の支援活動によりカナダ連邦政府ほか3団体,「コアラ館」(南三陸町図書館)の支援活動によりオーストラリア・ニュージーランド銀行,ほかにアメリカ図書館協会など計8団体が感謝状を受けました。
※出典:「第100回全国図書館大会感謝状贈呈者一覧」(大会配布資料)

 
※注1)文字・活字文化の日/「文字・活字文化振興法」(平成17年施行)で,広く文字・活字文化についての関心と理解を深めるために設けられ,10月27日と定められている。(第11条)。
※注2)読書週間/公益社団法人読書推進運動協議会が主催。毎年10月27日から11月9日までの2週間を読書週間とし,読書活動の普及・推進を趣旨とした関連事業を実施している。第1回は,昭和22年。

 

図書館 around the みやぎ シリーズ第43回 色麻町公民館長 小川 勝敏

 色麻町では、平成26年4月に小中一貫校「色麻学園」が開校し、学校図書館が地域のみなさんに開放されています。学校図書館の中には公民館図書のコーナーも併設されており、子どもも一般利用者もそれぞれの本を自由に読むことができ、町民と児童生徒の交流や地域の読書活動の活性化につながると考えています。
 学校図書館には、一般利用者専用の出入り口とトイレを設けています。畳敷のスペースもあって、子ども連れにも好評です。これまで常駐していなかった嘱託司書も勤務しています。蔵書は少ないながらも、新聞5紙と雑誌12種類も並べ始めました。季節ごとにミニ企画展を実施したり、今話題の本を展示し紹介しています。また、学校と連携して子ども司書の養成にも取り組んでいます。 
 多くの町民のみなさんが気軽に訪れることができて、本に親しみ心穏やかにくつろげる憩いの空間として、あたたかく愛着の持てる図書室を目指しています。
 このほか、町では3,000冊の本を積んだ移動図書館車「なかよし号」を導入して、幼稚園、保育所、子育て支援センター、各地区集会所を毎月1回巡回しています。幼稚園や保育所の巡回時には、読書ボランティアによる小さなおはなし会も実施しています。
 読書はきっと心を豊かにしてくれるはずです。町民と本をつなぎ読書のすばらしさ、大切さを多くの町民に伝えていきたいと考えています。

色麻町公民館の概要。
  蔵書冊数/10,506冊
 開館時間/午前の部 午前10時30分~正午
            午後の部 午後1時30分~午後6時
  閉館日/ 日曜日、祝日、年末年始など
  住 所/  981-4122
            加美郡色麻町四竈字狐塚37番地1
            色麻学園学校図書館内
            電話  色麻学園 0229-65-2409
                   公民館  0229-65-3110 

▲ページの先頭へ戻る。

図書館員からの読書のすすめ 『インフルエンザ21世紀』 瀬名秀明 (監修 鈴木康夫)

 インフルエンザは,例年 1月から3月頃にかけて流行します。今シーズン(2014-2015)は例年より数週間早く,年末から患者発生数が増え始めました。インフルエンザを,通常の風邪と同じ感覚で捉える方もいるかもしれませんが,全身の関節痛や突然の高熱,小さな子どもにはインフルエンザ脳症などの合併症も引き起こすウイルス性の感染症です。世界的大流行(パンデミック)をおこしたインフルエンザである,スペインかぜ(1918-1919)では,全世界で4000万人以上が命を落としたと言われています。これは,同時期の第一次世界大戦における戦死者1000万人を大きく上回ります。
 感染症に国境はありません。人や物の行き来が,より自由になった現代に,再びパンデミックが現れたらどうなるのでしょう。実際2009年に,新型インフルエンザが大流行し,多くの混乱がありました。その舞台裏を,関係者へのインタビューを通して描いたのが本書です。著者の実父で生化学者の鈴木康夫氏を初め,様々な地域・多様な分野で活躍する専門家との対話を通して,作家らしい緊迫した描写を交えながら,公衆衛生について社会心理学等も含めた分野横断的な考え方が必要であることが描かれます。
 インフルエンザ・パンデミックの予防と対策は,実は,地味で簡単な行為の積み重ねです。手洗い・マスク・ワクチン接種等は,万能でなくとも,それぞれ少しずつ感染拡大のリスクを抑えます。本書で触れられている,1994年に副作用が懸念されて学童ワクチン集団接種が中止された後,高齢者も含めた死亡率が上がったという事例は,公衆衛生の考え方を学ぶ良い材料です。どのような対策も,個々の効用と副作用のバランスを考えながら,社会全体のリスクを抑えることを目標にする必要があります。
 本書では,様々な感染症対策の取り組みも紹介されており,中でも興味深かったのが,感染症に地理情報システム(GIS)を適用した研究です。人の流れと街の混雑度から,今,自分が街に出かけた時の感染する確率を予報できるようになるかもしれないと示唆しています。天気予報や道路の渋滞状況をチェックするように,インフルエンザの感染確率を,携帯電話でチェックする時代が,いずれ来るかも知れません。

企画管理部 企画協力班 眞籠 聖

 

▲ページの先頭へ戻る。

図書館からのお知らせ

第46回子どもの本展示会を開催します

 毎年4月23日から5月12日までは「こどもの読書週間」です。宮城県図書館では,この期間にあわせて,子どもの読書活動を推進するために「子どもの本展示会」を下記の日程で開催します。平成26年に出版された本の中から約2,000冊を選び,絵本や読み物,知識の本,児童書研究書などを展示します。
 この展示会は,昨年から1階エントランスを会場として開催しており,例年よりもたくさんの方にご覧いただきました。児童書を選ぶ時の参考として,また新しい本との出会いの場として沢山の方にご来場いただければと思います。図書館にお越しの際には,ぜひ立ち止まって手に取ってみてください!
 なお,本展示会終了後は子どもの本展示会として,希望する各市町村図書館や公民館,小学校等を巡回する予定です。

  • 期間 平成27年4月23日(木)から5月12日(火)
  • 場所 図書館 1階エントランス
  • 時間 開館日の午前9時から午後7時(日曜・祝日は午後5時まで)
  • お問い合わせ 子ども図書室(2階)TEL 022-377-8447


東日本大震災文庫展Ⅴ「後世に残す記憶 振り返るあの時」を開催します。

 東日本大震災から4年を経て,これまで県図書館が収集・整理した震災や復興の記録を紹介します。
 県内の様々なところから集めた記録は,ふるさと宮城の貴重な歴史的資料であり,後世に残していかなければいけない財産でもあります。これらの記録を紹介しながら,近く公開する「(仮称)宮城県震災アーカイブ」についても紹介します。

  • 期 間:平成26年3月11日(水)~平成27年6月26日(金)
  • 時 間:図書館開館日の午前9時から午後5時まで
  • 場 所:宮城県図書館 2階 展示室
  • お問い合わせ:企画協力班 TEL:022-377-8444 


平成27年3月27日(金)の閉館時間が変更になります。

 平成27年3月27日(金)は館内整理のため閉館時間が通常よりも早まります。利用者の皆様には,大変ご迷惑・ご不便をおかけしますが,ご理解とご協力をお願いします。

 変更前 午後7時閉館 → 変更後 午後1時閉館

  

▲ページの先頭へ戻る。

この「ことばのうみ」テキスト版は,音声読み上げに配慮して,内容の一部を修正しています。
特に,句読点は音声読み上げのときの区切りになるため,通常は不要な文末等にも付与しています。
「ことばのうみ」は,宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第48号 2014年7月発行。

宮城県図書館

〒981-3205

宮城県仙台市泉区紫山1-1-1

TEL:022-377-8441(代表) 

FAX:022-377-8484

kikaku(at)library.pref.miyagi.jp ※(at)は半角記号の@に置き換えてください。