宮城県図書館だより「ことばのうみ」第47号 2014年3月発行 テキスト版

おもな記事。

  1. 巻頭エッセイ 「縁ある、ところ」 作家 隼見果奈 さん。
  2. 特集新しく生まれ変わった図書館情報ネットワークシステム。
  3. 図書館 around the みやぎ。
  4. 図書館員から読書のすすめ。
  5. 図書館からのお知らせ。

巻頭エッセイ 「縁ある、ところ」 作家 隼見果奈。

 図書館とは、切っても切れない縁がある。

 苦手なところも、ある。図書館の本は万人の物であるから、他人の痕跡が著しく残っている物も少なくない。折り目やシワ程度ならまだしも、謎のシミや蛍光ペンの跡ともなると、とても切なくなる。

 が、素晴らしい点も勿論ある。高額、絶版、あるいは長編シリーズ作品などは、図書館を利用するに限る。最近では本だけでなく、DVDやブルーレイ、CDなども豊富に取り揃えている図書館もあるから、もはや総合文化遍満所とでも言おうか。

 自分のような常に自宅の本棚が満杯な人間ともなると、購入に至るのは厳選した書物だけとなる。書店で立ち読みするだけで決断するのは厳しい……となると、やはり頼りになるのは図書館である。ともすれば何度も借りて、それでも足りないと感じたとき購入すれば良いのだ。図書館は、脳味噌が欲張りな人間の救済所なのである。

 小学三年の頃に江戸川乱歩『夜光人間』を借りて以来、小説に限らず詩集や図鑑など実に多くの本に触れさせて貰った図書館。棚に拙著が並んでいるのを見つけたときは、不思議な気持ちになった。まさか、こうやって図書館に縁が出来るとは思わなかったからだ。

 今の自分にとって図書館は、資料調達の場であると同時に、自著を万人の目に届けてくれる欠かせない存在となっている。

余談だが、図書館との縁が深いと感じるのは、図書館司書として勤めている人間が、自分の夫である、ということも、ある。

著者のご紹介。

隼見果奈(はやみ・かな)略歴

作家。1985年宮城県生まれ。中学卒業まで涌谷町で過ごす。旧・古川女子高校卒。進学に伴い上京後、本格的に小説の執筆を開始。2008年に大病を患うも日常生活に支障が無い程度に回復。2012年『うつぶし』で第28回太宰治賞を受賞。東京都在住。受賞作と書き下ろし『海とも夜とも違う青』を収録した単行本が筑摩書房より発売中。

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特集 新しく生まれ変わった図書館情報ネットワークシステム。

宮城県図書館は平成26年2月18日(火)から2月28日(金)までの11日間にわたって臨時休館し,図書館情報ネットワークシステムを更新しました。(以下システムと記述)このシステムは図書館業務を円滑に進めていく上で欠かすことのできない大切なものです。今回の特集では,この新しくなったシステムの中でも,特に利用者の皆さんがよく利用するサービスについてご紹介します。

図書館情報ネットワークシステムとは?

図書館のさまざまな情報をネットワークで結んで,館内はもとより県内外の図書館などと情報を共有するシステムです。システムと一言で言っても,館内で利用者の皆さんが資料を検索するコンピュータから,県内公共図書館等を結ぶネットワークシステムまでさまざまなものを含みます。「お手元にあるパソコンや携帯電話から宮城県図書館のホームページを開き,借りたい資料が置いてあるかを検索する」といったことから,「職員が利用者の皆さんからのリクエストに応じて,他館の資料を探して取り寄せる」といったことも,このシステムがあるから容易にできることです。

OPAC(オンライン閲覧目録)

OPACとはOnline Public Access Catalogの略でパソコン,スマートフォンなどを利用してオンライン上で図書館資料を検索できる蔵書目録のことです。宮城県図書館においても,館内には資料を検索するための専用の端末(館内OPAC)があります。また,来館しなくても検索することができるよう,インターネット上でも公開しています(WebOPAC)。これらのOPACに関して,システムの更新に伴い利用者の皆さんがより検索しやすいように大きく変わった点,改良された点がいくつかあります。

(1)検索条件を細かく指定

フリーワードによる検索の他,タイトルや著者名,出版者だけに限らず,分類やISBN,資料番号など様々な条件を指定して検索することができるようになりました。

これにより,同じタイトルの資料で分類が異なるものなどの判別ができるようになりました。

(2)さまざまな資料の検索

図書資料や雑誌,視聴覚資料だけではなく,レファレンス事例やパスファインダー(調べ方マニュアル),古典籍なども検索対象となりました。

調べ物をしたいとき,どんな資料を探したらよいか,その資料はどこにあるかなどという調べ物のヒントが見つけやすくなりました。

(3)サジェスト機能(予測表示機能)の追加

入力したキーワードから自動的に関連した検索キーワード候補が表示されるようになりました。これにより,より探している資料の正確なタイトルに近いキーワードを入力することができるようになり,正確な資料名が分からない場合でも,探しやすくなりました。

(4)ファセット検索(絞り込み検索)

検索でヒットした結果からさらに項目にそって資料を絞り込んで検索することが出来るようになりました。たくさんある資料の中から,自分が求めている資料を,より早く確実に見つけられるようになりました。

ホームページのリニューアル。

大きく変わったものの一つにホームページがあります。以前のホームページと比較して改良したところとして,

(1)色弱者の方に配慮した色使い

色弱の方にとって見えにくいホームページにならないように,Webアクセシビリティに配慮した色の組み合わせにしました。

(2)目的のページへ容易にたどり着けるような階層構造 

目的のページへすぐに到達できるようにするため,最大でも5クリックで全ての情報にたどり着けるようにしました。

(3)図書館からのお知らせの細分化

以前のホームページでは図書館からのお知らせのページ内に「休館のお知らせ」や「ボランティア募集のお知らせ」,「展示会に関するお知らせ」などさまざまな情報を掲載していました。今回のリニューアルに伴いこの図書館からのお知らせのページを「休館日等に関するお知らせ」,「イベントに関するお知らせ」,「展示に関するお知らせ」,「募集に関するお知らせ」など項目を細分化し知りたい情報が探しやすくなりました。

 

などが挙げられます。「見た目が綺麗で美しい」といったような,デザインにこだわったホームページではなく,よりシンプルでわかりやすいページになるようにしました。

叡智の杜Webのリニューアル

宮城県図書館では「青柳文庫」や「伊達文庫」,「養賢堂文庫」など歴史的にも大変貴重な古典籍資料を多数所蔵しています。叡智の杜Webでは,これらの中でも国の重要文化財に指定されている「坤輿万国全図」や宮城県の有形文化財に指定されている「魚蟲譜」,「禽譜」など歴史的,美術的に価値のある資料を公開してきました。

今回のシステム更新では,この叡智の杜Webも大幅にリニューアルしました。上記で紹介したような古典籍資料の他にも,

  1. 宮城県図書館及び県内公共図書館が所蔵する資料に含まれる,郷土に関する記事・論文
  2. 県内地域紙に掲載された,図書館や関係機関,団体などに関する記事索引
  3. 県内地域紙に掲載された,地域資料や県内出版物に関する記事索引

などの検索もできるようになりました。また,古典籍類に関しても,以前の叡智の杜Webよりも多くの資料をご覧いただけるようになりました。

また,先にご紹介したOPACとの連動により,具体的な資料名や記事が分からなくても,フリーワードで検索したり,ジャンル等を指定したりすることで探していただけるよう検索条件を増やしました。このことにより検索しやすくなっています。

画像に関しても,以前は高画質のデータを見ていただくためには,専用のソフトが必要でしたが,これからは気軽にご覧いただけるようになりました。

マイページについて

マイページとは,インターネットに接続できるパソコン等の機器や,宮城県図書館内の資料検索端末(OPAC端末)から,ご自分の貸出状況や予約状況の確認などができるサービスをご提供するページのことです。今まではWeb予約サービスとして皆さんにご利用いただいていました。

マイページでできることは

 ・現在借りている本や資料のタイトル・点数・返却期限の確認

 ・現在予約している資料のタイトルおよび点数の確認

 ・現在予約している資料が準備できたかどうかの確認

 ・パスワードの登録および変更

 ・メールアドレスの登録および変更

です。

Web予約サービスの時には,パスワードの登録・変更は,当館までお出でいただく必要がありましたが,マイページでは「宮城県図書館利用カード」の登録がされていれば,ご自身の手で登録・変更ができるようになりました。

パスワードを忘れてしまった場合,新たに登録する場合は,宮城県図書館ホームページのパスワード登録画面(https://www.library.pref.miyagi.jp/wo/usr/atstusr/)から登録ください。

上記で紹介したこと以外にも,新しい自動貸出機の導入や各種端末の設置場所の変更など利用者の皆さんにとって,より利用しやすいシステムになりましたので,今まで以上のご利用をお待ちしております。

図書館 around the みやぎ シリーズ第40回 富谷町公民館図書室 富谷中央公民館長(全館) 小松巌。

富谷町は昨年、町制施行50周年を迎え、11月には人口51,000人に到達、豊かな自然と歴史を礎に、100万都市仙台に隣接する地の利と人の輪を生かしながら、2016年の市制移行を目指し、発展を続けています。

現在、富谷町には図書館は設置されていませんが、町内各中学校区毎に公民館があり、併せて図書室を設置しています。各公民館8,000~12,000冊を所蔵しており各地域住民に利用されています。

平成21年に公民館6館図書室に専任職員を配置、平成25年2月には町内6公民館をネットワークで結んだ図書情報システムの運用を開始し、各公民館OPACでの蔵書検索のみならず、公民館間の集配業務を実施するなど、町民における読書環境の充実を図ってきました。

また、読み聞かせボランティア、読書サークル等の協力を得ながら、子ども達が親しく図書に触れる機会を提供するなど、より地域町民の皆さんが本を借りやすい環境整備を図っています。

今後もより利用しやすい公民館図書室を目指し、更なる読書活動の推進を図っていきます。

富谷町公民館図書室の概要。

富谷中央公民館、富ケ丘公民館、東向陽台公民館

あけの平公民館、日吉台公民館、成田公民館

蔵書冊数 児童書:約29,000冊 一般書、その他:約30,000冊

開館時間 午前9時~午後5時(ただし、成田公民館は午後7時まで)

休室日 土・日・祝日 年末年始

住所 富谷中央公民館 981-3311富谷町富谷字西沢13

電話 022-358-2036

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図書館員からの読書のすすめ 『天の川幻想』  小泉八雲著 船木裕訳。

 「小泉八雲」― 明治23年(1890年)に来日し、日本に魅せられ、明治29年(1896年)には日本に帰化し、日本に骨を埋めた人です。『耳なし芳一』・『ろくろ首』・『雪女』などの作者といえば多くの方が肯いてくれるでしょう。

 1850年(嘉永3年)6月27日、ギリシアに生まれた彼は、日本に来るまで、不運の連続でした。いや、日本に来てからも、そう恵まれていたとは思えません。

それでも彼は、知人の勧めで訪れた日本で、当時の日本のあたりまえの暮らしぶりに触れ、日本に惹かれ、日本でその生涯を閉じることを選びました。彼の長くはなかった人生の4分の1に相当する期間でしたが、何かが彼の価値観と一致したのです。

 彼は、日本のどこにそんなに惹かれたのでしょう。「やさしさ」や「思いやり」、ことさら弱者への「いたわり」、人々が見せ合う「微笑」、そうしたものを非常に心地よく感じていたようです。それと同時に、西洋文明の流入に伴い、それらが失われつつあることを嘆いてもいました。

 彼のよく知られている作品の多くは怪談・奇談です。しかし、それ以上の数のエッセイ的な作品・スケッチ風の作品があります。そこに描かれているのは、当時の人々のごく普通の習わしであり、ごく普通のものの考え方、ごく普通の人とのつきあい方、ごく普通の信仰のあり方です。

 日本人にとっては、自分たちの日常であり、当然のことであるが故に、それが外国からの視点で見た時にどれほど驚くべき事か、気づかずにいたことばかりです。それを、彼は「文学」として、世界に送り出しました。

 小泉八雲は、確かに日本に帰化し、日本滞在14年のうち、9年を日本人として日本で暮らしました。それでも私は、彼はやはり「文筆家 ラフカディオ・ハーン」であったと感じます。このような見方が、彼の意に添うものかどうかはわかりませんが、自身でも意識していたと受け取れます。

 不遇であったが故に鋭く物事を見抜く感覚を持ち、物書きとしての腕を磨き、アメリカでジャーナリストとして生計を立て、日本人とは異なる価値観の中で生活してきました。だからこそ、文明開化の掛け声のもとに、捨て去ろうとしていた日本の「古い」美しさを見いだし、文章にして、世界にばかりでなく、日本人に対しても知らしめたことは確かです。

 明治37年(1904年)9月26日、彼が東京でなくなってから100年あまりが過ぎ、彼が「美しい」と思った日本は変わりました。それでも、失われてしまったわけではなく、いざという時には顔を出すもののように思います。

資料奉仕部 震災文庫整備チーム 佐藤 まどか

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図書館からのお知らせ。

第45回子どもの本展示会を開催します

 毎年4月23日から5月12日までは「こどもの読書週間」です。宮城県図書館では,この期間にあわせて,子どもの読書活動を推進するために「子どもの本展示会」を下記の日程で開催します。平成25年に出版された本の中から約2,000冊を選び,絵本や読み物,知識の本,児童書研究書などを展示します。

 この展示会は,昨年から1階エントランスを会場として開催しており,例年よりもたくさんの方にご覧いただきました。児童書を選ぶ時の参考として,また新しい本との出会いの場として沢山の方にご来場いただければと思います。図書館にお越しの際には,ぜひ立ち止まって手に取ってみてください!

 なお,本展示会終了後は子どもの本展示会として,希望する各市町村図書館や公民館,小学校等を巡回する予定です。

  • 期間 平成26年4月23日(水)から5月11日(日)
  • 場所 図書館 1階エントランス
  • 時間 開館日の午前9時から午後7時(日曜・祝日は午後5時まで)
  • お問い合わせ 子ども図書室(2階)TEL 022-377-8447

東日本大震災文庫展Ⅳ「小松左京が遺したもの-震災の記憶・未来へのことば-」開催中です

昨年10月に開催したプレ展示「小松左京の世界」に引き続き,阪神淡路大震災に対する詳細な調査・分析から,将来の震災への対策を提言してきた作家小松左京氏の足跡を紹介します。

SF作家ならではの幅広い視点での防災・減災を著作『小松左京の大震災’95』などから紐解くとともに,今後構築される宮城県震災アーカイブについても紹介します。

  • 期 間:平成26年3月1日(土)~平成26年6月27日(金)
  • 時 間:図書館開館日の午前9時から午後5時まで
  • 場 所:宮城県図書館 2階 展示室
  • お問い合わせ:企画協力班 TEL:022-377-8444 

平成26年3月28日(金)の閉館時間が変更になります。

 平成26年3月28日(金)は館内整理のため閉館時間が通常よりも早まります。利用者の皆様には,大変ご迷惑・ご不便をおかけしますが,ご理解とご協力をお願いします。

 変更前 午後7時閉館 → 変更後 午後1時閉館

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この「ことばのうみ」テキスト版は,音声読み上げに配慮して,内容の一部を修正しています。
特に,句読点は音声読み上げのときの区切りになるため,通常は不要な文末等にも付与しています。
「ことばのうみ」は,宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第47号 2014年3月発行。

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