宮城県図書館だより「ことばのうみ」第19号 2005年7月発行 テキスト版

おもな記事。

  1. 表紙の写真。
  2. 巻頭エッセイ「図書館少年」たちへ 写真評論家 飯沢耕太郎さん。
  3. 特集「図書館から始まる 叡智の杜づくり」。
  4. 図書館 around the みやぎ 利府町図書館。
  5. 時空をこえて 貴重書の世界 「大日本の児童の歌 Golden Chopsticks and Other Japanese Children's Songs」。
  6. わたしのこの一冊『読むクラシック −音楽と私の風景−』。
  7. 図書館からのお知らせ。

表紙の写真。

  今回の写真は、平成17年7月9日(土曜日)に開催した、みやぎ県民大学「きらめく叡智の杜を訪ねて −仙台藩貴重書の世界−」です。図書館2階研修室で、11名の参加者が、図書館職員の指し示す旧仙台藩領の地図「御領分絵図」に熱心に見入っている様子をご紹介しています。

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巻頭エッセイ「図書館少年」たちへ 写真評論家 飯沢耕太郎さん。

  図書館という言葉の響きには、どこか甘酸っぱい懐かしさがある。小学校から中学校にかけて、僕は典型的な「図書館少年」だった。暇さえあれば学校の図書室に入り浸り、本を借り出しては休み時間も授業中も読んでいる——そんな子供だったのだ。二宮金次郎ではないが、登下校時も歩きながら読んでいて親や先生に呆れられるほどだった。
 要するに、今考えると気が弱い割には自意識過剰で、本の世界に逃避していたのだろう。ギリシア神話、江戸川乱歩の『少年探偵団』やコナン・ドイルの『シャーロック・ホームズ』もの、少し大きくなったら吉川英治の『宮本武蔵』や『三国志』、『水滸伝』……。まったく脈絡はないが、そこには現実より千倍も魅力的な物語の世界が広がっていたのだ。
 図書館はそんな魔法の世界への、魅力的な入り口だった。今でもかつての僕のような「図書館少年」たちが、「どこでもドア」の前にワクワクしながら立っているはずだ。

著者のご紹介

いいざわ・こうたろう 写真評論家。1954年宮城県生まれ。筑波大学大学院芸術学研究科博士課程修了。専攻は写真史・写真論。1990年、写真を見る人のための初めての専門誌『deja-vu』を創刊し、1994年まで編集長を務める。1996年、『写真美術館へようこそ』(講談社)でサントリー学芸賞を受賞。近著に『写真評論家』(窓社 2003年)、『写真について話そう』(角川学芸出版 2004年)、『デジグラフィ』(中央公論新社 2004年)などがある。

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特集 「図書館から始まる、叡智の杜づくり プロジェクト22」

 宮城県図書館では、平成16年度から「22世紀を牽引する叡智(えいち)の杜づくり事業」を本格的にスタートさせました。その一環として、「プロジェクト22」を立ち上げ、図書館の新しい可能性にチャレンジしています。今年度も「記念日探検隊」「ちょっとだけ図書館員」など、多彩な催しを企画しています。県民の皆さまのご参加をお待ちしています。

図書館をもっと身近に、もっと楽しく。

宮城県図書館は、国の重要文化財「坤輿万国全図」や2000点に上る県指定有形文化財をはじめとして、多くの資料を所蔵しています。それらの資料を利用していただくための多様な機能の充実にも努めてきました。「資料を借りる」「勉強する」だけではない、図書館の多面的な魅力をもっと多くの方々に知ってほしい。そして県図書館をもっと楽しくしたい。職員のそんな思いから、日々の業務の中で得た知識や研究成果を活かした「プロジェクト22」が始動しました。新規にスタートした事業でしたが、幸いにも参加者の方々からは好意的な反応が多く寄せられました。
 「プロジェクト22」も2年目を迎え、前年度の事業をさらに深化させた内容や、まったく新しい事業内容などさまざまな方向性を模索しながら準備が進んでいます。以下にご紹介するのはすでに開催されたものですが、もっと楽しい県図書館を目指して「プロジェクト22」は今後も進んでいきます。

みやぎを担う、次世代のために。 宮城県図書館 館長 伊達 宗弘

 「叡智の杜づくり」は、次代を担う人たちが自信と誇りをもって語れる日本や故郷の歴史・文化をしっかりと伝え、日本人の心の再生にも大きな役割を果たそうとする県図書館の戦略事業です。
 その実現のためには(1)所蔵資料の有効活用と(2)企画力・実行力のある職員の養成が課題です。そして昨年徹底的な話し合いのなかで誕生したのが、「プロジェクト22」でした。この試みは所属や職種を越えて行われたため、従来では考えられなかった発想の事業が次々と誕生していきました。事業の終わったあとの職員の顔の輝きは「やったー」という喜びと自信にあふれていました。
 県図書館で働く職員の一人一人が切磋琢磨し、研ぎ澄まされた鋭い感性を駆使して新しい時代のニーズに応えていくものと期待しています。

図書館探検ツアー −施設と資料のご案内−

 昨年度開催された図書館探検ツアーと館内検索機講習会を、好評につき今年度はそれぞれ5回、通年で行っています。
 今年度の「図書館探検ツアー」第1回目は6月24日に実施され、14名の方が参加しました。皆さんが利用している図書館南側ゾーンの反対、広い書庫と職員のワークルームがある北側のゾーンを中心にご案内しました。ずらりと電動書架が並んだ4階の閉架書庫や3200枚が収納できるDVDカートなど、県図書館の知られざる部分にみなさん驚いていた様子です。あなたも、いつもとは違う県図書館を発見してみませんか?

OPAC(館内検索機)で図書館を10倍楽しもう −館内検索機講習会−

 タイトルがはっきりとわからない本や記号を含んだタイトルの本でも大丈夫。館内に設置されている検索機を上手に使って、目指す資料にたどり着く方法をお教えします。第1回目の講習会は6月24日に実施され、10名の方が参加しました。たまたま通った利用者の方が足を止めて講師の話に聞き入り、そのまま飛び入り参加する場面も見受けられました。

やってみよう絵本ってこんなにおもしろい −読書へのアニマシオン−

 7月2日、今年度第1回のプロジェクト22がスタートしました。スペイン生まれの読書教育手法である「読書へのアニマシオン」を基に、子どもたちの読書への興味を深めてもらう企画です。参加したのは小学校1、2、3年生18人。まず絵本『にんげんごっこ』の読み聞かせが行われたあと、登場した動物の役割を当てるゲームで遊びました。「どんな動物が出てきたかな?」と職員が問いかけると、「キリン!」「カバ!」と元気な声で答える子どもたち。知らず知らずのうちに絵本の世界に入り込めたようです。同時進行の指導者講座・参観には15名の大人の方が参加しました。

これからの催しの予定です。あなたはどれに参加しますか?

 プロジェクト22の日程は、決定次第お知らせいたします。その他の催しについても、改めて館内掲示・ホームページ等でお知らせいたしますのでご確認ください。 問い合わせ 企画協力班 電話:022−377−8445。

プロジェクト22
「記念日探検隊」8月18日(木曜日) 「ちょっとだけ図書館員」9月9日(金曜日) これ以降は、11月・12月・平成18年1月に開催を予定しています。
図書館探検ツアー (各回定員15名)
8月6日(土曜日)*親子15組が対象です。 10月15日(土曜日),12月7日(水曜日),平成18年2月15日(水曜日)。
OPACで図書館を10倍楽しもう! (館内検索機講習会、各回定員10名)
9月16日(金曜日),11月18日(金曜日),平成18年1月20日(金曜日)。

プロジェクト22アルバム 2004年版

これまでも、さまざまな企画を実施してきました。
平成16年8月7日(土曜日) 本を読んで楽しく遊ぼう −読書が楽しくなる4つのゲームをとおして−
 小学3年生から中学生までを対象に、「読書へのアニマシオン」を行いました。23名の子どもたちと10名の保護者の方々が参加。読み聞かせの間違いを指摘する「ダウトを探せ!」など4つのゲームが行われました。保護者や見学者の方には家庭での実践についてお話しました。
平成16年9月10日(金曜日)・11日(土曜日) 館内検索機で図書館を10倍楽しもう
 さまざまな検索のコツを伝授するこの講習会は、2回合わせて24名の方が受講されました。検索方法の説明だけではなく、棚にある本の探し方や書庫にある本の請求手順の実演なども行い図書館資料の効果的な探し方について知っていただきました。
平成16年11月18日(木曜日) ご案内します! あなたの図書館 わたしの図書館 −宮城県図書館の舞台裏をいっしょに探検しましょう−
 普段はお見せすることのない閉架書庫を中心に館内をご案内するツアーです。当日は14名の方が参加。街頭紙芝居や雑誌の創刊号を閲覧いただいたほか、図書館の仕事も紹介しました。ツアーの最後には参加者のみなさんと伊達館長との意見交換も行われました。
平成16年12月11日(土曜日) 本と書評の考現学 −書評でたどる昭和・平成の時代−
 井上ひさし『吉里吉里人』など13冊の本とその書評から、対象となった本が出版された時代の空気を読み解く試みです。当日は57名の方が参加。また仙台白百合学園高等学校の放送部のお二人による名文の朗読に続いて、参加者全員で漢詩を朗読してみました。
平成17年 1月27日(木曜日) 「総合的な学習」と公共図書館の役割
 先生方、社会教育・児童文化団体関係者など105人が参加したこの催しでは、「総合的な学習の時間」の中で公共図書館を有効に活用する方法を職員が提案しました。続いて行われたワークショップ「こんなふうに県図書館を使ってみたい!」では多様な意見が出されました。
平成17年 2月5日(土曜日) 暮らしの課題解決法 −新聞・雑誌フロアを活用しよう−
 「病院やお医者さんを調べたい」といった生活の中の課題を、新聞・雑誌フロアの資料を使って解決してみようという企画です。記事を検索するための各種データベースの有効な使い方やマイクロフィルム資料の利用などについて、14名の参加者の方々に解説しました。

参加者にインタビュー

  • 「やってみよう絵本ってこんなにおもしろい」に参加しました! とても楽しかったです。もっといっぱい本を読んで、もっと ゲームで遊んでみたい!
  • 子どもになって実際に絵本の世界で遊んでみたいと参観しながら 思いました。多くの子どもたちにどんどん広めてほしい。私も機会 があればアニマシオンをやってみたいです。
  • 図書館探検ツアーに参加しました! 県図書館の書庫をはじめて見て、すみずみまで整理が行き届いているなぁと感心しました。これなら資料が必要なときにはすぐに取り出してもらえるという安心感がありますね。県図書館のことがもっと知りたくなりました。

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図書館 around the みやぎ シリーズ第14回 利府町図書館 館長  田中 伸哉。

 平成16年11月6日に産声を上げた利府町図書館は、今後予定されている新図書館建設を検討する経過の中で、新図書館が完成するまでの間、その活動や社会的意義を広く町民の皆様に知っていただくという意味で十符の里プラザに設置されている公民館の図書室を拡充し、「繋ぎの図書館」として活動を開始しました。
 延べ床面積は約206平方メートル、3万2千冊の本、27タイトルの雑誌、新聞は4タイトルと小粒ですが、午前中は小さいお子さん連れのお母さんお父さん、午後は学校帰りの子どもたち、土曜・日曜は家族連れなど、利用される方は様々で、公民館の講座などに来館される方にも多く利用いただいております。常連の方がご家族やご近所・お友達と一緒に来館される微笑ましい姿も良く見られます。
 DVDやビデオ、CDの貸出も好評です。また、新着本コーナー設置や本の帯ディスプレイなど、新鮮な本のPRや、季節の絵本展示など、本の見せ方にも工夫を凝らし、予約・リクエストによる便利な図書館機能につなげるように努力しています。
 おはなし会を定期的に開催したり、これまでご要望に応える事ができなかった複写サービスや、多くの図書館との間で連携協力が出来るよう になったりと、図書館ならではのソフト面の充実により、小さいながらも町に図書館があることの意義をたくさんの町民の皆様にご理解いただければと、職員一同がんばっています。

利府町図書館のご紹介。

  • 開館時間 火曜日・木曜日〜土曜日 午前10時〜午後6時。水曜日 午前10時〜午後7時。日曜日 午前10時〜午後4時。
  • 休館日 月曜日、祝日(月曜日に当たるときはその翌日)、館内整理日、年末年始(12月28日〜1月4日)、特別整理期間 。
  • 交通案内 JR東北本線利府駅より徒歩5分。
  • 図書館のデータ。
  •  蔵書冊数 31,986冊(平成16年末現在)。
  •  貸出冊数 87,684冊(平成16年度実績) 。
  • 住所 〒981−0104 宮城郡利府町中央2丁目11−2。
  • 電話 022−356−2130。 FAX 022−349−1677 。

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時空をこえて 貴重書の世界 「大日本の児童の歌 Golden Chopsticks and Other Japanese Children's Songs」。

『大日本の児童の歌』は1904(明治37)年仙台で出版されたわらべ歌・唱歌集です。英・和文の歌詞とともに、多色刷りの美しい絵と楽譜が挿入されています。著者のモード・W・マデン(Maude Whitmore Madden 1867〜1948)は仙台基督教会(現在の仙台川平教会)を設立したミルトン・B・マデンの夫人。本書の序文には、日本の遊び友達に歌を教わった自分の子どもが、「ママ、この歌は英語で何て言うの?」とたずねたことが日本の子どもの歌に興味を持つきっかけになったと記されており、あたたかな印象を与える挿絵と相まって子どもへの愛情を感じさせる絵本といえるでしょう。
ここに、2枚の写真があります。1枚目は、モード・W・マデン『大日本の児童の歌』(武田万治郎刊、1904年)見開きページの左は「子守歌」、右は「雀」と題する歌です。2枚目は、晩年のマデン夫妻です。(写真提供:仙台川平教会)

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わたしのこの一冊『読むクラシック −音楽と私の風景−』佐伯一麦著 集英社 2001年。

美しき存在
 たとえば、街の喫茶店で、あるいは地下鉄のホームで、またはテレビ番組の中で、ふと耳にした音楽の、題名は思い出せないけれど、その音楽にまつわる過去の情景が鮮やかに蘇えってくる、という経験は誰にでもあるのではないだろうか。大抵の場合その過去の思い出は懐かしく美しい。歳を重ねるにつれ記憶力が弱くなり、昨日の出来事さえ思い出すのは覚束ない私だが、音楽の力により遠い日の思い出に浸れるのは有り難い。
 この本の作者は、まだ若くもちろん記憶力も充分で、しかもクラシック音楽に対する深い造詣をもとに、四十八曲を選びそれらの曲にまつわる思い出を、四十八篇の随筆にしあげている。
 日本篇と北欧篇に分けられ、それぞれに面白いが特に北欧篇は、珍しい動物や植物が描かれて興味ふかく、まだ見ぬ異国の風景を想像しながら読み進めるのは楽しい。また、さりげなく登場する言わば端役のような人物にも、作者は思いをこめている。たとえば、路面電車の中で「日本人ですね」と声をかけて来た見知らぬ女性が「ここで結婚したんだけれど、もう離婚します」と打ち明けた話。『交響曲イタリア』のCDを買ったレコード店の主人が「イタリアはいいよ、女房が死ぬまえに一緒に旅したのが一番の思い出だよ」と言った話。行き付けの喫茶店の、男女の店員が婚約しているものと勘違いして、ばつの悪い思いをした話など。作家としての目が行き届いている。
 音楽と文学、この全く違う分野の芸術が見事に融合し、美しい一冊に仕上がっている。
今回のこのコラムは仙台市の岩本瑞子さんにご寄稿いただきました。

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図書館からのお知らせ。

館長講座「みちのくの歴史と文化を訪ねて」

 平成17年度宮城県図書館館長講座「みちのくの歴史と文化を訪ねて」が9月からはじまります。第1回は「みちのくの歴史と文化の源流を訪ねて」。以下全6回にわたって伊達宗弘館長が講義します。第1回講座のお申込みは8月18日(木曜日)から承ります。問い合わせ 企画協力班 電話:022−377−8445。

図書館員による「私の1冊」コーナーを新設

 3階一般図書室の新着図書コーナー脇に「私の1冊」のコーナーを設けました。ここでは、図書館員がすすめる「この1冊」を展示するとともに関連資料を集め、借りていただくことができます。ぜひ一度ご覧ください。

「叡智の杜Web」をホームページに開設

「貴重書の修復・活用プロジェクト」の成果として、『坤輿万国全図』(国指定重要文化財)、『禽譜』、『御領分絵図』『仙台城下絵図』などの古絵地図類のデジタルデータをインターネット上で公開する「叡智の杜Web」を開設しました。超高精細画像でよみがえった先人の叡智の結晶をご覧ください。 図書館ホームページ の「叡智の杜Web」のリンクからお入りください。

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この「ことばのうみ」テキスト版は、音声読み上げに配慮して、内容の一部を修正しています。
特に、句読点は音声読み上げのときの区切りになるため、通常は不要な文末等にも付与しています。

「ことばのうみ」は、宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第19号 2005年7月発行

宮城県図書館

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