宮城県図書館だより「ことばのうみ」第12号 2002年11月発行 テキスト版

おもな記事

  1. 表紙の写真とことば
  2. 巻頭エッセイ 本の検索 作家 瀬名秀明さん
  3. 特集 新しくなりました 音と映像のフロア
  4. 図書館 around the みやぎ 名取市図書館
  5. 貴重書の世界 「街頭紙芝居の世界」
  6. わたしのこの一冊 中河与一著「天の夕顔」
  7. 図書館からのお知らせ 休館のお知らせ ほか

表紙の写真。

 宮城県図書館の建物の南側に広がる遊歩道の風景です。深まる秋の日の遊歩道「書見の道」、また、「カスミザクラ」の木立ちとベンチのたたずまいを写真でご紹介しています。

表紙のことば。

 西行の和歌より。 「さまざまのあはれをこめて梢ふく風に秋知るみ山辺の里」。
 紫山の樹木は、厳しい冬に備え装いを改めつつあります。これからの太陽の光は樹木の下に生きるすべてのものに限りない命の息吹を与えます。柔らかい冬の陽ざしを受けて紫山を散策するのもまた素晴しいものです。

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巻頭エッセイ 「本の検索」 作家 瀬名秀明さん。

 インターネットによる図書館の蔵書検索が簡単にできる時代になり、とても重宝している。おかげで見知らぬ本に出合う機会が格段に増えた。開架書架だけでなく、閉架に収められた本や雑誌も含めて、図書館全体が動いているのだと実感する。
 キーワードから探し出した本を閉架から取り出してもらうとき、私はいつもどきどきする。自分の希望に応えてくれる資料だろうか、それともまるで見当違いのものだろうか。カウンターでそれらの本と初めて対面するとき、私は驚き、心の中で快哉を叫び、ときにはおやっと不思議に思う。だが机に戻り、それらの表紙を眺め、ページを捲ってゆくうちに、目的としていなかった本にも愛着が湧いてくる。まったく自分の知らなかった古い叢書や版を、そうやって発見することもある。
 本との出会いに困ったとき、人が最後の拠り所とするのは図書館である。だが最初出会いを発見するのも、また図書館なのである。

著者のご紹介。

せな・ひであき。作家。1968年静岡県生まれ、仙台市在住。東北大学大学院薬学研究科(博士課程)在学中の1995年、「パラサイト・イヴ」で第2回日本ホラー小説大賞受賞。1998年には、「BRAIN VALLEY」で第19回日本SF大賞を受賞する。「八月の博物館」「ロボット21世紀」「あしたのロボット」など著書多数。2002年10月からは、河北新報で連載小説を開始した。

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特集 新しくなりました「音と映像のフロア」。

 現在の宮城県図書館は、収蔵能力の拡大、新しい機能の追求、県民誰もが楽しみながら学べる生涯学習の拠点施設として次のコンセプトに基づき、平成10年3月にオープンしました。
 ・多様なプレゼンテーション機能を持つ文化センターとしての図書館。
 ・すべての人々を楽しく迎えいれる公園としての図書館。
 ・明るい未来を象徴する図書館。
 「音と映像のフロア」もこれらのコンセプトの具現化を目指して運営されています。今回は、平成14年3月に、新しくDVD資料のプレゼンテーション機能を追加した館内視聴サービスを中心に「音と映像のフロア」について特集します。

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DVDの館内視聴サービスをスタート!。

 DVDカートの導入は、図書館では、全国で初めてです!。

DVDってなぁに?。

 「Digital Video Disc」の略とも「Digital Versatile(多才な)Disc」の略とも言われる大容量記憶メディアのひとつです。その映像・音楽は、従来のビデオやCDをはるかにしのぐ性能を誇っています。また、DVDメニューによるマルチ機能も特徴です。
 現在、公共図書館でサービス可能な映像資料(著作権処理済資料)は、ビデオやレーザーディスクからDVDへと急激に転換しています。宮城県図書館でもこの変化に対応するためにDVD資料の収集を始めました。

DVDカートってなぁに?。

 受付で予約番号を入力するとカート内の8つのセンサーをもったロボットが該当のDVDを探し、つかみ、決められたプレーヤーに装てんする装置です。宮城県図書館のDVDカートには、DVDディスクが3225枚収納でき、28台のプレーヤーに自動装てんします。装填時間は数秒間で、スピーディで正確なサービスを提供しています。

どんなDVD資料があるの?。

 保存の必要性の高い資料を中心に収集しています。デジタル化された素材なので劣化の心配はなく、また、カートに収納しているので、破損や傷なども防げます。代表的な収集資料は次のとおりです。

  • 世界の美術館。
     ヨーロッパ18美術館の絵画。
  • ナショナル・ジオグラフィック。
     地球上で起こる様々な出来事のドキュメント、エミー賞受賞作品。
  • オペラ全集。
     世界3大レーベル提供の不滅のオペラ集。
  • 日本の記録。
     日本の20世紀、激動の100年の歴史。
  • 映像の世紀。
     激動の20世紀を映像で追体験。(NHK制作)。
  • プロジェクトX。
     「無名の日本人」の飽くなき挑戦を描く。(NHK制作)。
  • 大自然の驚異。
     IMAXシアター70mmフィルム映像。
  • 宇宙デジタル図鑑。
     最先端の技術による貴重な映像。(NHK制作)。
  • 日本百名山。
     作家・深田久弥が、厳選した山々を映像でたどる。
  • 生命。
     14億年はるかな旅。(NHK制作)。
  • 映画。
     著名な映画賞受賞作品を中心に収集。

ブースの使い方は?。

 「予約」、「受付」、「視聴操作」の3つの手順が必要です。今回は、問い合わせの多い「予約」の仕方を説明します。

  1. 利用カードと視聴を希望する資料(ビデオ、DVD、レーザーディスク、CDなど)を準備します。
     ※県外の方や利用カードの必要のない方は、カウンターにて仮カードをお貸しします。
  2. 「予約端末タッチパネル」で利用申し込みボタンを押します。
  3. 利用カードのバーコードを読み込ませます。
     ※注意! 「決定」ボタンを押さないでください!
  4. 資料番号のバーコードを読み込ませます。
     ※注意! 宮城県図書館のバーコードです。ビデオの場合は、本体に貼ってあります。
  5. 待ち時間を確認し、ブースの種類を選択します。
  6. 確認画面を確かめながら「予約ボタン」を押します。
  7. 印刷された予約券、利用カード、資料を持ちカウンターで手続きをします。

マルチ機能で語学学習に活用してみませんか?。

 DVDメニューを使うと、日本語を聞きながら英語の字幕で視聴するとか、英語を聞きながら日本語の字幕で視聴するとか、英語を聞きながら英語の字幕で視聴するなど簡単に選択できます。楽しみながら語学力を・・・、外国の方の日本語学習に・・・、こんな活用はいかがでしょうか。

DVD資料の館外貸出はしないのですか?。

 現状では、著作権の問題で「館内視聴」のみ許諾された資料が多く館外貸出は難しい状況です。しかし、近年「館外貸出」の許諾を受けた資料が増えており、将来的には、館外貸出も視野に入れています。そのためには、盗難防止システムの確立や資料の破損への対応等解決しなければならない課題が残されています。

その他に新しくなったところは?。

  1. 資料番号等をバーコードで入力できるようになり、予約の操作が簡単になりました。
  2. 予約券に利用開始予定時間が印刷され、待ち時間を有効に活用してもらえるようになりました。
  3. 小ブースの画面が大きくなりました。ヘッドホン端子も増えたので、より多くの方々に快適に利用していただけるようになりました。
  4. ビデオやレーザーディスクの二カ国語録音資料は、日本語と外国語に切り替える機能が追加されました。
  5. DVD−ROMを利用できるようになりました。マルチメディアブース(パソコンブース)で視聴できます。おすすめ資料は、DVD理科データベース「ACCESS(生物の神秘と科学技術)」全20巻です。今後は、語学学習用DVD−ROMを収集する予定です。

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「音と映像のフロア」から ちょっとお知らせ!。

郷土資料のデジタル化に取り組んでいます!。

 郷土に関する貴重な映像をデジタル化し保存する(デジタル・アーカイブ)作業に取り組んでいます。現在は、宮城県が製作した昭和30年代からの16ミリフィルム映像(「宮城県政ニュース」等218タイトル)のDVD化に取り組んでいます。

クラシックのCDが大幅に増えました!。

 大阪府在住の益子様より寄贈いただきましたCD3948タイトルの整理が終了しました。クラシック音楽のCDが中心です。海外で購入されたものや輸入盤が多く、貴重な音源も数多く含まれています。書誌データには日本語訳のデータも入っており、曲の検索もしやすいように整理しました。

録音カセットテープを活用してみませんか?。

 現在、1610タイトルの録音カセットテープを所蔵しています。開架していませんが、他の資料と同様、館外貸出、館内視聴が可能です。目録や検索機で選び、カウンターにお申し込み願います。

字幕・手話付ビデオを活用してみませんか?。

 耳の不自由な方へ字幕や手話の入ったビデオの館外貸出、館内視聴サービスを行っています。テレビ番組が中心です。「字幕・手話付ビデオ一覧表」から選択し、カウンターにお申し込み願います。来館できない方には、無料で郵送もいたします。(※著作権の制限があるため、宮城県内にお住まいで、障害者手帳をお持ちの方に限られております。)

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図書館 around the みやぎ シリーズ第7回 名取市図書館 熊谷貞男館長。

 昭和35年6月に名取市図書館の前身となる図書室が市民会館の一室に開設されました。その後、市庁舎の新築移転に伴い旧庁舎を転用し、昭和51年4月に視聴覚センターを併設した名取市図書館が開館しました。
 以降、各地区公民館に図書室を開設、自動車図書館の運行を開始し、平成7年に視聴覚センターの移転により図書館が単独施設となるのを機に大改修を行い現在に至っております。
 本市ではすべての小・中学校に市職員である司書(補)を配置し、公共図書館との綿密な連携により学校図書館づくりを支援しております。
 また、本年度から始まる尚絅短大図書館開放に伴い、大学図書館との連携を積極的に行っていく予定です。
 さらに、行政資料並びに郷土資料などの収集・整備にも力を入れ、常に新鮮で適切な図書館資料の充実を図り、生涯にわたる学習活動を積極的に援助し、また、インターネットのホームページなどを通して広範な情報の提供を行い、自主的な学習を支援する開かれた生涯学習施設を目指し市民サービスに努めています。

名取市図書館のご紹介。

  • 開館時間。
    火曜日から土曜日までと第1・第3日曜日 午前9時から午後5時まで。
  • 休館日。
    第2・第4・第5日曜日、月曜日、祝日、月末の日、年末年始、特別整理期間。
  • 交通案内。
    JR名取駅から徒歩17分。
    宮城交通バス、名取郵便局停留所から徒歩10分。
  • 図書館のデータ。
    蔵書冊数 13万9399冊(平成14年3月31日現在)。
    貸出冊数 18万7266冊(平成13年度実績)。
  • 住所 〒981−1224 名取市増田一丁目7−37。
  • 電話 022−382−5437。 FAX 022−382−5706。

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時空をこえて 貴重書の世界 「街頭紙芝居の世界」。

 本誌中では、写真で「赤胴赤鬼金之助」や「鞍馬天狗」などの街頭紙芝居の作品をご紹介しています。
 この写真、ある程度の年齢の方ならご存知かもしれませんね。一昔前まで日本のあちこちで上演されていた「街頭紙芝居」です。
 紙芝居の前身は、江戸時代の糸繰り人形劇「立ち絵」にあります。この頃から見料として飴などが売られていたようです。現在見られるような、一枚の場面ごとに解説を語る様式は、昭和3年頃から盛んになりました。この絵物語形式の紙芝居は、画家が画用紙に描いた絵を厚紙に張り、ラッカーやワニスでコーティングしたもので、大きさは縦26センチ、横36センチくらいに作られます。
 昭和5年には名作「黄金バット」が誕生し、子どもたちに絶大な人気を呼びました。街頭紙芝居は全国に普及し、昭和10年前後には最盛期を迎えました。戦後、街頭紙芝居は急激な復興をとげ昭和23年には戦前と並ぶ3万人もの紙芝居屋が数えられ、第二の全盛期となりました。
 本館には、仙台最後の紙芝居屋さん・井上藤吉氏よりの寄贈で、約4万枚(203タイトル5317巻) の街頭紙芝居を所蔵しています。その一枚一枚が手描きで、東日本最大のコレクションです。

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わたしのこの一冊 「天の夕顔」決定版 中河与一著 明治書院 1986年。

「言葉」で描かれた水彩画 中河与一の世界。

 魅力的な小説にも二通りあると思う。まず強い衝撃を受けて、人間や自然、宇宙などに深く思いを致すもの。もう一つは、筋書きのおもしろさや、文章と描写の美しさゆえに、酔うように引かれてゆくもの。『天の夕顔』(昭和十三年)は後者かも知れない。
 京都に学ぶ大学生の「わたくし」は、一人の既婚女性と出会う。憧れと尊敬から、熱烈な恋へ・・・。相手の幸福を願う理性と思慕の情のはざまで、己に克つべく、雪の山中にこもってもみる。しかし、断ち切ることもできずに二十余年。ただ一人の女性を思うことに費した人生。「一生を棒にふった愚かな男」と自嘲する。二十三年めにしてようやく恋が成就しようとしたその日、女性は病で天に召されてしまう。「わたくし」は、この世で遂げられなかった積年の思いを托して花火を打ち上げる。夕顔のような大輪の花びらが、暗い夏空に消えてゆくその瞬間、天にいるあのひとが「わたくしの思いを摘み取った(受け容れた)」と考えて自分の人生を肯う。
 今の時代は、愛のあり方も多様を極め、とどまる処を知らない。そのような時代にこの小説を読むと、痛々しいまでに禁欲的な恋愛も、その悲愴感を越えて、甘美な新鮮ささえ覚えてくる。
 作家達が上梓した本を送ってくると、手に取ることなく古本屋に売り飛ばした永井荷風も、唯一、完読して激賞したのが、この『天の夕顔』だったという。

今回のこのコラムは小牛田町在住の青木郁子さんにご寄稿いただきました。

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図書館からのお知らせ。

休館のお知らせ。

 年末年始および資料の特別整理期間のため、下記の期間は休館します。ご不便をおかけしますが、ご理解とご協力をお願いします。

  • 年末年始の休館日。
    平成14年12月29日(日曜日)から平成15年1月4日(土曜日)まで休館します。
  • 特別整理期間のための休館日。
    平成15年1月28日(火曜日)から平成15年2月9日(日曜日)まで休館します。
    (その他の休館日は、月曜日・館内整理日です。)
     

宮城県図書館所蔵自筆原稿特別展 みやぎをめぐる文人たち その筆跡と足跡。

 日本近代文学史を代表する文人たちやみやぎゆかりの文人たちの自筆原稿等を展示しています。
 期間は、平成15年3月28日(金曜日)までです。ただし休館日は除きます。
 時間は、午前9時30分から午後5時までです。
 場所は、図書館2階の展示室です。

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この「ことばのうみ」テキスト版は、音声読み上げに配慮して、内容の一部を修正しています。
特に、句読点は音声読み上げのときの区切りになるため、通常は不要な文末等にも付与しています。

「ことばのうみ」は、宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第12号 2002年11月発行

宮城県図書館

〒981-3205

宮城県仙台市泉区紫山1-1-1

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